基礎情報:アメリカ(2003年)
5. 労使関係

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

合衆国連邦法であるNational Labor Relations Act(NLRA)は労使関係法の基幹をなし、労働組合の結成、団体交渉などについて規定している。

5-1. 労働者の権利

NLRA第7条により、労働者の「団結する権利、労働団体を結成・加入・支援する権利、自ら選んだ代表者を通じて団体交渉を行う権利、および団体交渉またはその他の相互扶助ないし相互保護のために、その他の団体行動を行う権利」を認めている。この労働者の権利に対する雇用主の侵害行為は、「不当労働行為」として禁止されている。

5-2. 労働組合の組織化

全国労働関係法は労働組合を組織する場合は、交渉団体組織の労働者の30パーセント以上の賛成署名を集めるとともに、選挙において労働組合は過半数の支持を得なければならない。交渉代表に選出された多数組合は、その組合を支持しない労働者も含めて、当該組織内の全雇用主のために団体交渉を行う権限を有する。組合と雇用主間で締結された労働協約は、当該組織内の全労働者に適用される。なお、雇用主がこの労働組合からの交渉要求を拒否することは、「不当労働行為」と判断される。しかし、このような労働組合がない場合は、雇用主は団体交渉義務を負わない。

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5-3. 労働組合

労働組合の形態:

合衆国の労働組合は、産業、職種ごとに組織されている。このような組合は本部を持ち、幾つかの州を管轄下に置く地方本部、各地方支部(ローカル)から形成されている。組合員は地方支部に所属する形となる。

ナショナルセンター:

合衆国総同盟・産別会議(AFL-CIO)が、合衆国労働組合の唯一のナショナルセンターである。AFL-CIOは1955年に職業別組織であったAFLと、産業別組織であったCIOが合併して作られた。そのため、ほとんどの産業・職業別組合がAFL-CIOに参加し、2004年3月の時点では、64組織、および国際組織が加盟し、組合員総数は約1300万人である。現在のAFL-CIOの会長はJohn J. Sweeneyである。

主要組合の組合員数の変化は以下のとおりである。

表:主要組合の組合員数
主要組合 2001年 2002年 2003年
チームスター(Teamstars) 150万人 140万人 140万人
全米州都市労組(AFSCME) 130万人 130万人 140万人
国際サービス労組(SEIU) 140万人 150万人 160万人
国際食品・商業労組(UFCW) 140万人 140万人 140万人
全米自動車労組(UAW) 125万人 ※71万人 ※71万人
国際電気工友愛労組(IBEW) 77.5万人 78万人 78万人
全米教員連盟(AFT) 100万人 100万人 100万人
全米通信労組(CWA) 74万人 70万人 70万人
国際機械工労組(IAM) 73.5万人 73万人 73万人
国際建設労組(LIUNA) 80万人 80万人 80万人

出所:海外労働時報、NO.322、p.162、2002年12月、2004年2月の各労組HP
※ 合衆国、カナダ、プエルトリコの活動中(アクティブ)のメンバーのみ

組織率:

合衆国の労働組合組織率は、長期にわたり低落傾向にある。はじめて比較可能データ収集を行った1983年の20.1パーセントが最高率の記録になり、2000年には13.5パーセントまで低落し、2001年はかろうじて同率を保つこととなった。州別に組織率を見ると、2001年度時点で、組織率が20パーセントを上回っている州は、ニューヨーク、ハワイ、アラスカ、そしてミシガンの4州である。反対に5パーセントを下回っている州は、ノースカロライナおよびサウスカロライナである。男女別では、男性15.1パーセントに対し、女性11.7パーセントであり、男性の組織率が上回る。しかしながら、1983年には男性24.7パーセントに対し、女性14.6パーセントであったことを考えると、組織率における男女差は確実に減少している。人種別では黒人が17.1パーセントと、白人の13.1パーセント、ヒスパニックの11.3パーセントと比べて、最も組織率が高い。雇用形態別では、フルタイム労働者の組織率が14.9パーセントにくらべ、パートタイム労働者は6.9パーセントとなっている。

産業別に見ると、公共部門の37.4パーセントに対し、民間部門はわずか9.0パーセントにしか過ぎない。公共部門の内訳を見ると、連邦31.6パーセント、州30.5パーセント、地方自治体43.1パーセントと、地方自治体労働者の組織率が最も高い。民間部門では、輸送・公益事業(電気、ガス、水道など)が23.5パーセントと最も高く、続いて、建設業18.4パーセント、製造業14.6パーセントとなっている。低い産業は金融・保険・不動産業で2.1パーセントであり、最も低いのが農業で1.6パーセントである。

職業別に見ると、警備職(警察官、消防士など)が38.0パーセントと最も高く、次に交通・運搬職の23.3パーセント、技能職の21.5パーセントが続いている。反対に、最も組織率が低い職業は、販売職で3.5パーセントである。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:アメリカ」