基礎情報:アメリカ(2003年)
2. 雇用管理

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

雇用管理に関して最も頻繁に参照される法律はEEO雇用平等に関する差別禁止令、雇用平等を促進するプログラムとしてaffirmative action programがある。採用、雇用形態、解雇、定年、就業規則、労働条件等のすべての局面にこれらの法律やポリシーが影響するので、以下ではそれらを中心に述べたい。上記の法律遵守に関する実施援助は、以上の実施方法によって行った上で、以下のようにモニターが行われる。

2-1. 遵守実施の調査と評価(レビュー)

アファーマティブアクションプログラム(AAP)の遵守の調査と評価には個別企業に対し以下のプロセスが含まれる。

  1. アファーマティブアクションプログラム全体像の分析
  2. 人事記録、給与等支払い記録、他の雇用記録の詳細分析
  3. 社員、組織責任者への面談
  4. 当該企業に関する雇用のすべての面に関する調査

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2-2. 苦情調査

苦情調査

差別に関する苦情は個人またはその個人の代理組織でも申し立てることができる。差別が認められた場合から180日以内の申し出が認められているが、申し出期間の延長は理由により認められる。一個人に対する差別であり、大統領令11,246にかかる申し出の場合はEEOCの管轄とされ、集団もしくはパターン化された差別であると認められた場合はOFCCPの調査と解決の管轄となる。差別に関する苦情は合衆国内のどの地域のOFCCPに提出することも認められる。

以上の調査から問題が認められた場合は、「調停」過程に入る。多くは「過去に遡った支払い」「他の職務の斡旋」「年功に加算すること(申し出た人にとって利益となるポイントを与えること)」「昇進または他の救済措置」が挙げられる。会社に対しては「新たな研修機会の導入」、「特別な人材募集努力」、また他のアファーマティブアクションの方法が採用される。

調停が成功裏に終わらなかった場合は、行政措置としてOffice of the Solicitor (法務次官)の管轄に委ねられる。EEOとアファーマティブアクションの義務を怠ったと申し出を受けた契約会社は判事による正式な聴取を受ける。合議に達しない場合でも懲罰の執行が行われることがある。例えば、連邦政府との契約や下請け契約は禁じられる(正式には、将来に渡る政府との商取引契約に対しての資格を失ったという宣言を行う-文書提出-形となる)。なお、OFCCPは企業に対して、雇用平等促進の援助措置として、以下の賞を与えている。

  1. The Secretary of Labor's Opportunity Award
  2. The Exemplary Voluntary Efforts Award (EVE)
  3. The Exemplary Public Interest Contribution Awards (EPIC)

以上の受賞者からどのような組織行動プロセスがベストであるかの研究報告も行っている。

  1. CEO執行部が雇用平等やアファーマティブアクションプログラムに対する高いコミットメントを示す。
  2. 適切な分析と自己モニター制度により、連邦政府との商務契約のある職場においての差別の可能性を指摘し、連邦雇用平等法への遵守を確実にする。
  3. 指摘されたバリアを、誠心誠意持って取り除き、広い雇用機会を広げる。その方法としては、(1)斬新な方法でのアウトリーチや拡大募集、(2)社員の開発・発展・成長、および研修プログラム、(3)管理・監督職の開発・発展・成長プログラム、次期の監督者への継承プログラムと動機づけ、(4)社員への支援そしてメンター(個別指導者)プログラムおよびリーダーシップの養成
  4. アカウンタビリティー(意図された組織目的達成のための組織行動の遂行責任)として、誠心誠意の努力の成果から、測量可能な結果がでること

また、給与等に関しての支払い差別撤廃に関してのベストプラクティスも広範な一般企業に対しての指導として模範を示すことが効率的であると考えられている。それゆえ、以下のステップを提唱している。

  1. 公平な支払いを実行しているかどうか知ることの最初のステップは、企業が自らの監査を行うことである。
  2. 自己監査から発見された問題分野を訂正する。
  3. 将来における支払いに関する決定が仕事に関する基準で行われ、企業活動の必要と合致しているかどうか、またそれぞれの支払いにくまなく均一にまた確実に適用される手順と実行方法を設定する。

この支払いの公平性を確実にするためには、職務評価のアンケートを部署内のそれぞれの職務についておこない、地域での労働市場で特定の職に支払われている額を知り、ベンチマークとなるポジションを選ぶ。

少数民族および女性の割合の指針について、雇用平等を確実にするためには、目標となる職務に必要な有資格の少数民族や女性の割合の数値が必要である。「有資格者で候補者となる少数民族および女性の人材の割合」は当該の職種における全有資格者に比しての数値である。人口に比しての少数民族および女性の割合構成が、ある企業の特定の職に就いている人の構成と差異が認められる場合は、雇用平等に対してバリア(障害)が生じていると判断される。職グループとは、職内容、賃金報酬(給与)、機会が同等のものをいう。職内容の同等性とは、義務および責任が同じものであり、機会の同等とは、同じ職グループの中での、研修、配置転換(transfer)、昇進、賃金報酬、異動(mobility)、および他のキャリア上昇機会をいう。

これら少数民族および女性の目標値は「最新のデータ」に基づかないといけないという規制がある。例として使用を認可されているものは、センサス、地域の職業斡旋所が提供するデータ、および大学や高等教育機関や他の研修機関が提供するデータ等である。契約企業は一般的にセンサスデータを使い、OFCCPもセンサスデータを以って契約企業の有資格者値の判定が「常識内(reasonable)」であるかどうかをみる。

2003年12月29日には2000年に採取されたセンサスからEEO用の特別ファイルを作成したものが公表された。これは、EEOC・連邦司法省、人事管理部局が連合体となり、連邦政府コンソーシアムを設立し、センサス局の協力を得たものである。この特別EEOファイルは472の職業に関してのデータが収集されている。

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2-3. 社員保護法

社員保護法

ほとんどの労働法、公共安全法、および環境法ではwhisleblower(ホィッスルブロア「警笛を鳴らす者」)保護が義務付けられている。上記法規遵守に対する嫌がらせ等を防ぐ意図がある。ホィッスルブロアとは、企業や組織の違法行為を指摘する社員であり、このような行為に対しての嫌がらせ等が起きた場合の解決策は「職務への復帰」「過去に遡る賃金払い」などが行われる。Occupational Safety and Health Administrationがこの法律の遵守を監督する。

このホィッスルブロアに関する苦情処理手順の規則は2003年5月28日にFederal Registerに暫時的に発表された。この規則はSarbanes-Oxley Actという呼称で知られているCorporate and Criminal Fraud Accountability Act of 2002に基づいて制定された。一般公聴の機会が法施行から60日間設けられた。

この法自体は2002年7月30日に制定され、公的企業の社員がSecurities and Exchange Commission ruleおよび株主の不正手段に係る他の連邦法の侵害と見られる行為についての情報提供に対して受ける報復措置から保護しようという目的である。企業責任、情報の公開、財務報告や監査の透明性や質を高めようという意図である、と労働省長官のElaine L. Chaoはいう。企業暴力や不正に声をあげさせることが企業の倫理を育むと考えられている。

2003年度の苦情処理手順規則は社員またはその人を代表する人からの差別に関する苦情の迅速な対処を決めたものである。これは、苦情申請、調査、発現事項の公表、暫時的命令から成り立つ。中心事項は訴訟方法と発現事項に関しての反論方法、そして聴取の要求方法である。訴えの取り下げ方法や調停、過去の判決と措置についても取り扱いがある。

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2-4. 採用慣行

採用慣行

合衆国政府が提供している一般企業の社員募集方法で最も大規模のものはOne-Stop-Career Centerと呼ばれるインターネット主体の情報提供、検索、データベース登録のプログラムである。予算は2003年会計年度で1億1300万ドルが計上された。これはWagner Peyser Act後にWorkforce Investment Actとして改定された制定法により1933年に設立され、全国的な規模での雇用交換システムとして発足し、(1)セルフサービス、(2)担当者のヘルプ、(3)特別なニーズに応えるサービスの三種類を提供している。(1)セルフサービスはインターネットによる利用であり、企業は社員候補者集団にアクセスが可能になっている。これは労働市場の情報、法規制、実際に労働力のニーズを管理するためのさまざまな情報が提供される。

  1. 企業の空きポストの募集案内を掲示する
  2. データベース登録者の履歴書を検索する
  3. 給与や報酬、また雇用の傾向の情報を得る
  4. 個別のニーズに合わせた職務内容(ジョブディスクリプション)を作成する
  5. 特定の職業に必要な免許等の案内をする
  6. 地域の就職斡旋サービスの情報を得る
  7. 同種または他の産業の雇用者を探す
  8. 雇用者としての権利と義務の情報を得る
  9. 連邦政府の給与等の規制に関する情報を得る

その他詳細に渡る法規定および地域情報、応募者の選考に必要な知識、採用後に至るヘルプまで(研修機会を与え雇用継続を促すための方法等)が詳細に手軽にインターネット上から手に入れることができる。同じサイトの別ページには、求職者の登録データベースがある。2002年におけるインターネットおよび各地の施設利用者数は75万8015社、40万9971人(PY2002 WIA Annual Report)が報告されている。この利用により、75.1パーセントの人が就職を果たし、6か月後の収入はそれ以前に比べ3030ドル多くなっている。このプログラムで決定した職の継続も6か月後で(一般成人の場合)82.7パーセント、12カ月後でも72.4パーセントが報告されている。なお、求職者のデータベースも大規模であり、一日の新規ポスティング(2004年3月5日)は3万464件、計107万1778件が登録され、求職者の履歴書も65万5707人分のものが同日のトータルでアクセス可能となっている。同日の新規の履歴書登録は1835人分である。

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2-5. 個別企業における採用慣行

一般に、企業は必ずジョブディスクリプションという職務内容を記述した文書を準備することが求められる。内容はその職で何がなされ、それがどう遂行されるかを明らかにしたものである。例えば、「会計データをスプレッドシートのソフトウェアで分析する。」といった具体的な行動の記述である。この文書には、この仕事の遂行に必要であると考えられる教育、経験、技術のレベル等が明らかにされ、監督責任の範囲、使用機器、平均的に必要とされる身体と精神の強靭さ、そして就労条件(勤務時間、場所等)が明確に記載されている。

企業が社員の募集をする際に採る方法には以下のようなものがある(インターネットのホームページ・地方紙の求人欄・テレビ・ラジオ・一般職業斡旋業社・管理職のみの斡旋業者・高等教育機関就職課・社員からの紹介・州政府職業紹介所・直接応募・募集時期に関わらず届く履歴書などである。募集の職種によってどの募集方法が最も効果的であるかということは良く知られている。例えば、インターネットでの求人は事務職またブルーカラー労働者やサービス業の求人にはあまり効果的ではなく、これらに効果的な方法は地方紙やテレビ・ラジオのマスコミを通じて、または現在すでに在職している社員からの紹介であったり、州政府の職業紹介所、また直接応募で送られてくる履歴書であると考えられている。専門職や管理職になると、インターネットでの募集方法も地方新聞、また社員の紹介の方法と同様に効果的であると考えられている。企業は大量採用の場合は特に唯一の募集方法に頼らず、いくつかを同時に平行させて採用するのが一般的である。コンピューターの広範な利用から、面接を企業側の用意したキオスクにてオンラインで行う形が大型小売店などで導入され始めている。応募の際の第一スクリーニングに使い、職歴や就業態度から心理テストまで行うことで、最も適した就業能力と適正を備えた候補者を必要なポストに補充することが可能であると考えている。まもなくこの形態は、企業側のキオスクではなく応募者の自宅で行うことが可能になるだろうと予測されている。バーチュアル状況をコンピューターで準備できるようになるということは、企業側としては様々な職場環境や状況をコンピューター上のビデオで準備し、応募者の対応をテストすることが可能になるので、採用の際に最も適した人材の発掘が可能になるとみている。募集に際しての広告はEEO(雇用機会均等法)/AAP(アファーマティブアクションポリシー)の保障を明示することが望まれている。企業側の応募申請書は法的文書として扱われるため、EEOに添わない表現は違法とされる。

EEOでは、個人は、人種、肌の色、性別、出身国、または他の不合法な雇用行為の要因によって、どのような参加、昇進、または福利厚生からも排除されることから保障される。雇用システムには、意図的及び非意図的な差別というものは存在しないと考えられる。AAPの目的はこの雇用均等化を実現するためにある。これに加え、年齢差別禁止法(1967年制定)、連邦心身障害者雇用差別禁止法(1990年制定)等により関連した差別表現が禁止される。応募書類は一年間の保存が義務付けられ、連邦政府との商務契約のある企業は監査時に応募者記録の提出が義務付けられている。面接に際しての質問事項及び質問の仕方は微細に渡りEEO/AAPの規制を受けることになる。

例えば、ミシガン州においての面接時の質問の違法性に関しては次のようである。申請者の出生地は一切聞くことは禁じられている。その上、求職者の両親、配偶者、親類の出生地を聞くことも禁じられており、出生証明書の提出や国籍取得証明、洗礼記録の提出を求めることも禁止されている。年齢に関しては「あなたは18歳以上ですか。」と聞く事は合法であるが求職者の年齢が合法的かどうかを確かめるときにのみ聞くことができ、「あなたは何歳ですか。」「あなたの誕生日はいつですか。」と聞く事は違法である。応募書類に写真の添付を求めることは違法である。配偶者が同じ企業で働いているかどうか聞く事は合法だが、婚姻、子供、配偶者が仕事をしているかどうか、配偶者の氏名に関しての質問はすべて違法である。性別、出産能力、身体、精神状態に関する質問も違法である。市民権、出身地に関しては質問事項としては合法でありながら、質問の仕方が違法となる場合がある。アメリカの市民権を持っているかどうかは聞く事は合法だが、どこの国の国籍を持っているかを聞く事は違法である。言葉を流暢に話したり書いたりすることができるかを聞く事は合法だが、母国語が何語であるかを聞くことやどのようにして外国語を習得したかを聞く事は違法である。

面接後、推薦者の調査が行われ、問題がない場合は採用決定となる。採用通知に年額の給与が記載されている場合は、一年間の労働契約の保証があるとみなされている。採用決定後には、ハンドブックが渡され、オリエンテーションが行われたことと当該企業の保険・保障制度の説明を受けたことの確認署名を求められる。

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2-6. 解雇

解雇

企業が解雇をする場合に合衆国連邦政府ではRapid Responseという無料サービスプログラムを50人以上の社員のいる企業に提供している。主なサービスは、人事の必要事項、失職保険のコスト、移行時期の労働者への補償、そして、労働者には再就職を可能にし、生活レベルを維持できるようなヘルプをすることが含まれる。

州政府レベルではState Dislocated Worker Unitが直接担当する。これはOne-Stop-Career Centerに位置することが多い。商務の決定に関しては非公開でのコンサルタントで、政府法規制の説明、レイオフの数を減少させたり可避する方法、将来のレイオフを避ける方法など、現在の決定の緩和を他の方法で可能であるかどうかの相談に応ずる。順序正しく閉鎖ができるよう指導する。個々の社員の移行期間をスムーズにするため、解雇前のサービスをする。人事、失業中の補償の取り扱いのヘルプをする。移行期間でも社員のモラールや生産性の維持ができるようなサポートをする。新たな就職に準備できるようアシストする。地域のWorkforce Investment Board やOne-Stop-Career Centerと連携する。希望によっては私企業のアウトプレースメントサービスと連携する。

The Worker Adjustment and Retraining Notification (WARN) Actにより、大量解雇や企業閉鎖の際には社員に60日前の通告をすることが要求されている。The State Dislocate Worker Unitには直ちに報告の義務があり、州により、組織閉鎖に際しての法規が存在する。

なお、職によって自らの職が海外からの企業の進出もしくは職自体が海外に流出したことが理由で失職したと考えられる場合は、Trade Adjustment Assistance Reform Act of 2002により、適当な再就職が可能であるようなヘルプがなされる。このプログラムには嘆願書の申請が必要であり、調査と判断が下される。

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2-7. 企業内での解雇過程

合衆国では長い間、企業は公民権法や連邦労使関係法に触れない限り、"Employment at Will(企業側の自由意思による雇用)"により社員を任意に採用し、解雇することができると考えられていた。今日ではこの限りではなく、原則的に"Just Cause(正当な理由)"がない限り、使用者の自由意思での解雇は許されない。

まず、懲戒の前段階として、企業側と社員との間に、手順とポリシーに関して充分なコミュニケーションのある事が求められる。また全体を通して、調査の公平さが求められる。懲戒処分の決定には、以下の四点が不可欠である。

  1. 問題の行為者は問題の行為について伝えられること。まず口頭で、次には書面での警告がされる。
  2. 企業側は、既存の規則が当然のものであり通常の状態に適用されることを、問題の行為者に示すこと。規則の違反の程度が罰則の程度と、段階を追って適当であること。
  3. 他の社員の同様な規則違反にも同様な罰則が適用されること。
  4. タイムリーな処置であること。

口頭から書面の警告の期間は30日から90日がガイドラインであり、警告自体には具体的改善提案が含まれる。次には面談で、改善への進行状況や残っている問題が話し合われる。企業により、評価の時間(「執行猶予」とも呼ばれる)を与える。なお、ここで使われる「警告」は決して「脅し」ではなく、懲罰を与え恐怖心を煽ることが目的ではなく、就労行為の向上を目指すものである。

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2-8. 雇用形態(パートタイマー、一時的労働者、契約社員)

企業の雇用のタイプには以下のようなものが知られている(Houseman and Polivika, 1998)。

  • エージェンシー一時労働者
  • オンコール労働者
  • 直接雇用の一時的労働者
  • 契約企業労働者
  • 独立契約者
  • (独立契約者ではない)レギュラーの個別雇用者

以上のカテゴリーにはパートタイム労働者とフルタイム労働者の両者が混在している。エージェンシー一時労働者は他のエージェンシーから賃金給与が支払われている場合であり、オンコール労働者とは必要に応じて労働の提供がされる場合、直接雇用は企業に直接雇用されている場合(その場合の理由は、職務の短期完結終了という性格、他の労働者の短期的欠員補充、時間限定的採用、季節的な労働等)、契約企業労働者とは顧客のサイトで仕事を行う者、独立契約者はコンサルタントであったりフリーランス労働者であったりする。すなわち、上記のそれぞれを区分けする要素は賃金の出所、採用組織などである。

雇用契約に明示的にも暗示的にも雇用が永続することの約束が示されていない労働者はコンティンジェント労働者と呼ばれている(US DoL).

パートタイマーとは(Current Population Survey)週に1時間から34時間を同一の企業組織で働く者をいう。35時間以上の労働はフルタイムとして取り扱われるのが一般的であるが、40時間がフルタイムとして換算する最低必要労働時間であると規定されている場合もある(National Compensation survey)。

これらの様々な雇用形態に対する昇進に関する法律は雇用機会均等法(上記・下記参照)である。

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2-9. 定年(定年制の採用状況、定年法制、年金支給開始年齢との関係)

雇用における年齢差別禁止法(Age Discrimination in Employment Act: ADEA)により、合衆国では雇用のすべての局面(採用募集広告、見習い研修プログラム、給付金等)に関して、年齢を理由とする雇用者の差別行為が禁止されている。差別行為とは、bona fide職業資格が必要な職を除いて、一般の職に関してある年齢を優遇したり、限定したりする行為も含まれる。退職時における給付金(年金等)を約束しているところでは、普通および早期の退職年齢を設定することが可能であったり、雇用期間の条件が設定されたり、給付金総額限度が示されたり、年金交付に対応する認定雇用期間が設定されたりすることは、年齢に関係がないという限りにおいて認められている。早期退職に関しては、任意である限りにおいて、以下の形が認められている。
雇用者は

  1. 早期定年退職希望の出せる最若年齢および雇用期間を、実際にその資格を持つものがいる場合に設定、
  2. ある限定期間のみの設定、
  3. ある事業所、身分、役職、部局のみに適用を設定。

なお、任意であるかどうかの調査もまた詳細に義務付けられていることは付加事項としてあげたい。公的年金(Social Security)の支給は62歳で減額が可能であり、65歳から満額支給が可能である。2000年からは1938年以降に生まれたものは2022年までにこの年齢が67歳に進むことになった。なお、受給資格はクレジットと呼ばれる「単位」が労働し、納税済みのものに与えられ、公的年金受給資格は一般労働者では40単位とされる。2004年には、年間900ドル単位の収入で一単位と認められている。一年間に獲得できる最大単位数は4単位である。単位過剰によっては受給に関してはなんら影響を受けない。

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2-10. 就業規則(制定方法、必須掲載内容)

就業規則に関しては、任意に個別企業の裁量においてハンドブック・マニュアル等の掲載が決められる。「個別企業」の範囲に関しても明確なガイドラインは示されていない。

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2-11. 労働条件の変更(労働条件切り下げの場合の組合等との手続き)

紛争解決(dispute resolution)の種類として組合との交渉において、Federal Mediation Copnciliation Serviceでは二種類の解決方法を示している。

1. Interest-Based Bargaining

一般にwin-win bargainingまたはmutual gains, principled or interest-based negotiation, interest-based problem solving, best practice or integrative gargaining等とも呼ばれているものである。

2. Alternative Dispute Resolution(ADR)

これは、司法制度によらない紛争解決である。

ADR方法は下記のとおり。

  • (1) mediation:訓練を受けた仲介者が、非公式に両者が合意達成できる交渉をして解決する
  • (2) arbitration:中立の第三者が、両者の言い分を聞いたうえで、証拠を吟味検討して可決する
  • (3) conciliation:中立の第三者が両者の間を密接に往来し、コミュニケーションを図り、緊張を緩和し、問題点を抽出しながら可能な解決を示す
  • (4) ombudsman:オンブズマンは苦情を調査し、どちらか一方が紛争を終止し、苦情を申し出ているものの必要に対応すべく組織のシステム(雇用者、政府、企業等)の変更を提案する

(1)のmediationEqual Employment Opportunity Commisionが1997年以来プログラムを作成し、mediation専門家を揃えている。mediationプロセスは以下の方法から成り立つ。

  • (1) ニーズアセスメント、診断、現場訪問
  • (2) 現在の手続き方法の監査(現在どのように問題等が扱われ解決されているか)
  • (3) 改善の余地のオプション
  • (4) 詳細な導入計画
  • (5) 導入後の維持継続
  • (6) 新方法が導入された後の評価。

労働のケースにおいて最も利用される解決方法はarbitrationである。両者がこの方法を採用することに合意しない限りは成り立たない。署名なしの労働契約であっても紛争が起こる場合は処理対象となる。両者にルールが示された後、大まかな聞き取りをしたのち、両者のケースを提出する。直接、交互検討がなされる。Arbitratorはすべての証拠を受け、任意選択し価値を置き、bench decision(基本決定)が理由を伴わずに提出される。この基本決定を両者が望まない場合は、理由付の決定を示す。arbitratorの選考は両者が行う。

The National Labor Relations Boardでは unfair labor practice(「不当労働行為」ではあるが、個人が労働組合から受ける行為も含まれる)に関する苦情を受け付けている。このNLRBはNational Labor Relations Actにより設立された独立した連邦組織である。労働者の組織(雇用者および労働組合等)に対する苦情は以下の手順を経る。

  • (1) NLRBのInformation Officerに電話、郵送、面接にてコンタクトをする。ここで、まず苦情の申請の判断に助言を受ける。
  • (2) 苦情の申し出をするための申請書作成また解決は、違法と考えられる行為が起きてから6カ月以内に行う。
  • (3) 申し出の正式受理がされてから、署名入りの証拠を提出する。
  • (4) 担当者が充分な証拠から調査の継続が必要とされると認めたら、他の証人等に連絡をする。(この時点で充分な証拠に欠けると判断された場合は、申し出の解消を行う。)
  • (5) 証拠の検討が行われ、NLRA規定違反と見られた場合は、違法行為の訂正を雇用者に求める。
  • (6) 雇用者側が応じない場合は、Administrative Law Judgeによる司法聴取に移行する。
  • (7) Administrative Law JudgeとNLRB の調査結果またはU.S.Courtsの調査結果により、申し出による判決が提示される。

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