基礎情報:アメリカ(2003年)
3. 報酬制度

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

報酬は大きく分けると、内的報酬(Intrinsic rewards)(自分には価値があると感じること、社会契約、仕事を楽しむ)と外的報酬(extrinsic rewards)に分けられる。外的報酬はさらに、非金銭的報酬(non-financial)(オフィスは個室で窓付き、肩書き、コンピューター)と金銭的報酬(finanical)に分けられる。さらに金銭的報酬は休暇や医療保険といった間接的報酬と基本給とかボーナスといった直接的報酬に分類できる。また直接的報酬も、主に管理職、専門職(ホワイトカラー)に適用される年俸制と、それ以外の労働者(ブルーカラー)に適用される時給制とに大きく分けられる。

ブルーカラーに適用される時給制は、基本的に職務給である。職務を細分化し、当該職務賃金が設定される。労働者に支払われる賃金は、当該職務賃金の範囲内で当該労働者の業務実績や能力に応じて決まる。この時給制が適用される労働者には、週40時間を超えて働いた場合には、時間外労働手当が支払われる(労働時間の項参照)。
ホワイトカラーに適用される年俸制も、職務給を基本としている。ブルーカラーと同様に職務ごとの年俸額の範囲が設定されている。一般には、上司と相談して年間の目標を決め、目標の達成度合いに応じて評価が行われ、この評価をもとに翌年の昇給が行われる。年俸制が適用されている労働者には労働時間管理が行われず、時間外労働手当は基本的に支払われない。

報酬制度には職場内と職場外の公正さを保たなければならず、職場内の公正さは職務分析に基づく職務内容説明書の作成による仕事の同一性を示し、また労働市場調査や他企業の職務調査などにより職場外との公正さが測られる。報酬制度は優秀な成績の社員やグループには功労手当てやインセンティブを提供する。また報酬制度はFair Labor Standard Act(労働基準法)、Equal Pay Act(平等賃金法)、Age Discrimination in Employment Act(年齢差別禁止法)、Title VII(公民権法第7章)、Americans with Disability Act(心身障害者雇用差別禁止法)などにより制約される。

3-1. 最低賃金

最低賃金はFair Labor Standard Actにより、全国一律の最低賃金が1時間当たり5.15ドルと定められている。また、いくつかの州では、全国一律レベルよりも高い最低賃金(カリフォルニア州6.75ドル、ワシントン州7.17ドル、オレゴン州7.05ドル、マサチューセッツ州6.75ドル、など)を設定しており、その場合、使用者は州による最低賃金に従うことになる。また、学生、20歳以下の若者、および障害者などは、使用者が労働長官の承認を得た場合、最低賃金よりも低い額で雇用することができる。さらに毎月30ドル以上のチップを受け取ることができる労働者に対しては、最低賃金が2.13ドルと定められている。

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3-2. 残業割り増し率

残業の割り増し率は少なくとも通常の賃金の1.5倍で、workweek(連続する7日間、168時間)に雇用上決められた労働時間を越えた時間ごとに支払われる。

例えば、40時間のworkweekの場合:

  1. 時間給で賃金が支払われている時給8ドルの社員が44時間workweekを働いた場合、この社員は40時間を越えた時間に対して少なくとも12ドル(8×1.5)を、40時間を越えた時間ごとに支払われる。この週の賃金は40時間についての320ドルと4時間の割り増し賃金48ドルの合計315ドルが支払われる。
  2. 出来高給で週315ドルの社員が45時間働いた場合、この社員は通常の賃金315ドルを45で割り、または時給7ドルと通常の時給の半分(3.5ドル)を、40時間を超えた時間ごとに支払われるので5時間分の残業割り増し賃金17.5ドル(5x3.5)を受け取ることができ、賃金の合計は332.50ドルとなる。

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3-3. 一般的賃金制度

金銭的報酬は賃金と手当てに分けられるが、これをどのようにするかは企業によりことなる。

これらのベネフィットはいくつかの法律により影響を受ける。Employee Retirement Income Security Act(ERISA) of 1974の目的は社員の年金の保護にあり、ベネフィットの優遇税制を受けるためには会社は情報公開や基金の設定などERISAの基準を満たさなければならない。また、Cosolidated Omnibus Reconciliation Act of 1985(COBRA)により、社員個人が仕事を失っても医療保険を維持することができるようになった。

しかし、COBRAによる保険の補填は期限があり、18カ月から36カ月で、20人以上の社員がいる会社はCOBRAに従わなければならない。Family and Medical Leave Act of 1993(FMLA)は社員が50人以上の企業に適用され、社員の家族問題や医療理由のために必要に応じ1年に12週間までの無報酬の休暇を与えなければならない。Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996(HIPAA)は医療保険を失った個人または医療保険に加入が難しい個人に適用される。HIPAAにより保険に加入する前からの健康状態により保険加入を制限することはできなくなり、保険の再契約も保障されることになる。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:アメリカ」