基礎情報:アメリカ(2003年)
4. 労働時間・休暇・福利厚生

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

4-1. 労働時間・休日・休暇

労働基本法Fair Labor Standards Act(FLSA)では、雇用されている者は「最低賃金をうけ勤務時間外手当てが勤務手当ての最低1.5倍以上支給されない場合は週に40時間以上は勤務してはならないとしている。勤務した時間が基本になった計算で給与計算となる。「雇用」にはさまざまな行為が含まれる:「残業」「待機」「呼び出し待ち」「休憩(一般に20分間の勤務として扱われてはいるが、FLSAは義務として扱わない。)」(「睡眠―24時間継続労働の場合、睡眠8時間までは報酬対象の勤務から除外することを申し出ることは可能」「講義、会議、研修(通常の勤務時間内ではない、任意に参加し、職務内容に関連しない、そして他の任務が同時に行われない、という4条件に合う場合は勤務としては扱わない)」「旅行の移動時間(旅行目的により勤務扱いとされる)」「他の土地での一日限りのアサインメント(移動時間は勤務時間と考えられる。)」「旅行先にてほとんどの職務をおこなうこと」「日常の勤務地から離れた宿泊を伴う旅行(休日に交信作業をする場合も勤務として扱う。)(飛行機、電車船舶、バスまたは他の自動車内での宿泊は勤務とは扱わない。)」以下は勤務には含まれない。「食事(一般に30分)」「通勤時間」。

FLSAは、休日、休暇、病欠などに関しては、社員に強制していない。それらが有給であるか無報酬であるかにも全く関わらない。しかし各州法がこれらに関して規定している場合がある。Family and Medical Leave Act(FMLA)では、無給で(毎年)12週間まで職務復帰を約束された休暇をとることが認められている。認められる理由は「社員の新生児の誕生および育児」「養子の受け入れ」「親族(配偶者、子、両親)の重病看護」「重病のために勤務が不可能になり医療欠勤をするため」などである。これらを受けることのできる資格は12カ月の勤務をし、最低1250時間の勤務を12カ月継続間に行い、勤務の会社社員数が50名(75マイル範囲内)を超える場合、である。

1993年に制定されたFamily and Medical Leave Actに基づくポリシーは2000年には、全企業69.2パーセントが病気による有給休暇制度をもち、母親による育児出産休暇は68パーセントの企業、両親による養育休暇は54.5パーセント、養子などのための休暇は48.1パーセント、子、配偶者、または両親の病気看護のための休暇は60.6パーセントが採用している。すべての理由による休暇を採用している企業割合は39.1パーセントである。

また2003年度には、有給休日に関しては製造業では90パーセント、サービス産業では76パーセント、それぞれ私企業でその制度採用がある。また有給休暇に関してはそれぞれ87パーセント、77パーセントであり、陪審員任務のための有給欠勤はそれぞれ76パーセント、68パーセントであり、軍隊等のための有給欠勤は56パーセント、48パーセントの制度採用がある。企業の大きさの比較では有給休日、有給休暇は社員数1-99人の企業の採用率はそれぞれ74パーセントと73パーセントであり、100人以上の社員数の企業では86パーセントと87パーセントの採用がある。また、陪審員任務による有給欠勤制度は、99人までの社員数の企業では57パーセント、100人以上の企業では84パーセントの採用があり、軍隊等のための有給欠勤制度は99人までの企業では38パーセント、100人以上の企業では64パーセントの採用がある。地域的には、どの有給の休日・休暇・欠勤の制度でも大都市のほうが採用率は少々高い。

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4-2. 厚生

Family and Medical Leave Act (家族医療休暇法):

社員本人の病気、および育児・出産、家族の介護のための休暇を、12か月の期間中に最長12週間まで、企業は付与することが義務づけられている。対象となる私企業は社員を50人以上雇用しているところ(公企業の社員は社員数に関係なく適用される)で、休暇を取得できる社員は、その企業に12か月以上雇用されており、休暇を取得する直近の12か月に1250時間以上勤務した者とされる。休暇は連続したものに限られず、断続的または時間短縮による形態も可能である。休暇は無給でよいが、企業が有給の休暇制度を採用している場合には、その取得分を12週間内に数えることが認められる。休暇終了時には企業は社員を以前の職か同等の職に復帰させなければならない。

派遣会社より派遣されている短期雇用の社員は一般的に派遣会社が休暇を付与し、派遣先への通知、復職、健康保険維持の義務を負う。この法律は企業に社員への健康保険の継続を義務付けており、また新しいベネフィットなどが提供された場合も休職中の社員はそれを受けとることができる。

この法律により前出のとおり、12週間までの休暇をとることができる。

  • (1) 出産と新生児の世話
  • (2) 養子や里子ができた場合やその世話
  • (3) 家族やその両親などが重い病気にかかった場合
  • (4) 社員本人の重大な健康問題

またFMLAの限定や例外は以下のとおり。

  • (あ) 配偶者が同じ企業に勤めている場合、上記の(1)、(2)、(3)に関しては夫婦で12週間しか適用されない。
  • (い) CEOなど重要な地位にいた者の職場復帰は制限されている。(重要な地位にある社員はサラリー階級の社員で、企業内で上位10パーセントの給料を得ている者を指す。)

退職関連ベネフィット:

社員の退職後の収入源は一般的に3つある:

  • 1) Social Security(社会保障制度)
  • 2) 企業の退職プラン
  • 3) 個人の貯金や投資

企業の退職プランもベネフィットの一つであり、企業や社員の組織(組合など)または両方により維持されている。企業が提供する退職プランは退職者の寿命が延びたこと、ベビーブーム世代の社員が大量に退職することなどにより変化している。

企業は魅力的な退職プランを提供することにより優秀な人材の確保や維持をはかるため、コストやリスクを考慮しながら最も効率的なプランを提供している。企業が提供する二つの主要な退職ベネフィットプランはdefined benefit plandefined contribution planである。Defined benefit planは公式を用いて実際に受け取る退職ベネフィットを決定するもので、この公式には社員の給料、年齢または仕事をしていた期間などが使われる。Defined contribution planは社員個人の口座を設け、その口座に雇用者や社員本人が定期的に基金を寄与するもので、株価の変動などの経済状況により基金は変化しdefined benefit planのように一定のベネフィットを受け取ることは保障されない。Defined contribution planにはsaving plan, 401(k) plan, profit-sharing plan, money purchase plan, employee stock ownership planなどいろいろの種類がある。Defined benefit planのほとんど全ては退職者の死亡後も配偶者が終身年金を受け取ることになっており、このようなプランの加入者の約4分の3はいろいろの選択ができるようになっており、例えば50パーセント、70パーセント、または100パーセントの退職者へのベネフィットが配偶者に提供されることになる。今まではdefined benefit planのベネフィットは終身年金の形で退職者やその配偶者に提供されていたが、最近は退職金として一時払いで受け取ることも増えている。Bureau of Labor Statisticsの調査によれば、defined benefit planの44パーセントは退職金のように一時払いで受け取っている。Defined contribution planはいろいろの種類があるが、退職時の支払い方法の選択は同じようなものである。一時支払いがもっとも一般的で、401(k) plan加入者の88パーセントが選択し、一定期間の分割払いは55パーセントで、38パーセントは終身年金を選択している。

その他一般的な企業のフリンジ・ベネフィット

  • Paid Time Off(有給の休暇):有給休暇、バケーション休暇、病気欠勤、それに個人的な理由による欠勤。
  • Educational Assistant(教育補助)またはTuition Reimbursement Program(授業料返済プログラム):企業が社員自身の教育に対し提供する補助金で、授業料、教育に関連する手数料、それに教科書代が含まれる。企業はこの教育補助に対し税控除を受けることができる。
  • Adoption Benefit(養子縁組ベネフィット):養子縁組にかかる費用の払い戻しをするもので、最近このベネフィットを提供する企業は増加している。
  • Child and Elder Care Assistance(子供と老人の世話への補助):補助金、介護人および施設の選択補助、病気や緊急時の世話、や企業内保育施設などがある。
  • Convenience Benefit(コンビニエンスベネフィット):ドライクリーニング、車の修理、銀行業務などを企業内の施設で行うサービス。
  • Employee Assistance Program(社員補助プログラム):薬物依存、家族問題、金銭問題などを解決するための施設や照会を行う。
  • Flexibility(柔軟性):在宅勤務などの通勤時間が少ない仕事場への配置、始業時間と終業時間の調整、仕事の時間や日数を削減するなど、仕事に柔軟性を持たせる。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:アメリカ」