JILPTリサーチアイ 第76回
持続的な賃金の引き上げに向けて─2023年春闘の動向と5社の調査事例から─

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※5社の調査事例については、賃金引き上げに関する最新の動向や調査事例等で詳しく紹介しています。

JILPTリサーチフェロー
荻野 登

2023年3月23日(木曜)掲載

相次ぐ「早期解決」「満額回答」とその背景

2023年の春季労使交渉(以下「2023年春闘」)は、2月中旬以降に本格化する労使交渉の前から、大手企業のトップによる賃金引き上げに前向きな発言が相次いだ。岸田首相も物価上昇を超える賃上げを要請するなど、政労使とも賃上げに積極的な姿勢を示すなか展開した。

以下にみるように大手企業からは、昨年を大幅に上回るだけでなく組合の要求に対して、満額回答で答える企業が続出し、組合要求以上の回答も散見された。また、回答指定日前に解決するケースも相次いだ。今季交渉の特徴は、このように交渉の「早期解決」と続出した「満額回答」を指摘することができる。

こうした高水準の回答の背景には、生活を直撃している物価上昇への対応に企業が配慮した側面が大きい。中長期的には、ポストコロナのニューノーマル(新常態)を迎え、経済が再起動する中、その基盤とすべき「人への投資」に関する労使間のベクトル合わせが進んだことがベースとなっている。また、産業を問わず、人手不足感が強まっており、人材の確保・定着に向けた賃金水準の改善や人事制度の見直し(ジョブ型雇用)が経営戦略上も不可欠になってきている。国際的な人材獲得競争がし烈化する中、先進国から見劣りしている賃金水準の見直しは、初任給水準の大幅引き上げという形で顕在化してきた。

しかし、2023年春闘のこうした傾向を一過性とせず、幅広く継続的な賃上げに結び付けるためには、価格転嫁を通じた中小企業の賃上げ促進、非正規雇用の継続的な処遇改善などの環境の整備が必要になる[注1]

本稿では、2023年春闘の動向に加え、景気低迷の中でも、継続的に処遇改善を実施してきた5社の事例から、持続的な賃上げの実現に向けて求められる取り組みを考える。

転換点となるか──大手は30年ぶりの高水準、課題は中小への波及と賃上げの継続性

2023年春闘は3月15日に大手企業の集中回答日を迎え、最大のヤマ場を越えた。自動車、電機、鉄鋼・造船重機などの金属関係の産業別組織で構成し、相場形成役として注目される金属労協(200万人)では、複数の大手企業が回答指定日を待たずに組合要求に満額で応える回答を示しただけでなく、同日中に回答した8割超の企業も満額回答を示すなど、「異例の展開」(金子晃浩議長)となった。

また、最大産別のUAゼンセン(185万人)が16日時点で集約した妥結状況(117組合)によると、正社員の定期昇給相当分とベースアップをあわせた賃上げは加重平均で1万3,830円(4.56%)、同組織の約6割を占めるパートなどの短時間組合員の時給引き上げは61.8円(5.90%)となり、いずれも2012年の結成以来最も高い水準となった。流通サービス業が主体の同産別が賃上げ相場のメルクマールとなっている点が注目される。

こうした動向を受け、労働中央団体(ナショナルセンター)の連合(700万人)が17日時点で発表した第一回回答集計によると、平均方式で回答を引き出した805組合の加重平均は1万1,844円(3.80%)。このうち定昇相当分を除くベースアップなどが明確にわかる612組合では、賃上げ分の回答は前年比5,265円(1.83ポイント)増の6,907円(2.33%)となっている。連合によると3%台後半の賃上げは、1993年(最終集計で3.90%)以来、ほぼ30年ぶりの高い水準になっている。

この結果について芳野友子会長は16日に「物価高による組合員家計への影響はもちろんのこと、賃金水準の停滞が企業経営や産業の存続、ひいては日本の経済成長に及ぼす影響について、労使が中長期的視点を持って粘り強くかつ真摯に交渉した結果」とするコメントを発表。GDP・賃金・物価が安定的に上昇する経済への「ターニングポイントとなりうる回答」と評価したうえで、こうした先行組合の流れを今後交渉が本格化する中小組合や組合のない職場へ波及させなければならないと強調する。

一方、経団連の十倉雅和会長は15日にコメントを発表し、「約30年振りといえる大幅なベースアップや、満額回答を含む高い水準の賞与・一時金など、物価上昇を十分に考慮した積極的な対応を表明されたことは、賃金引き上げのモメンタムにこれまで以上の力強さを与えるものであり、率直に歓迎したい」と前向きに評価した。こうした大手の動向を踏まえて、「中小企業など、これから労使交渉の佳境を迎える多くの企業における前向きな検討への追い風となり、賃金引き上げのモメンタムのさらなる強化につながっていくと確信している」と期待感を表明する。

さらに最も重要なこととして、連合と同じく「今年を起点の年として賃金引き上げの前向きな取組みを来年以降も継続し、構造的な賃金引き上げを実現すること」をあげる。

今季の労使交渉では、企業の中長期的な成長に欠かせないデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や息の長い取り組みとなる脱炭素化に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の方向性を確認した労使も多い。

こうしたなか、ウクライナ情勢に加え、欧米で進む金融不安など先行き不透明がぬぐえない中、どのように継続的な賃上げを実現していくかについては、先進的な取り組み事例のなかから、そのヒントを得ることは極めて重要になる。

このサイトで紹介しているのは、今年1月にヒアリング調査を実施した5社の事例である。各社とも景気低迷の中にあっても、着実に従業員の処遇改善に向けて注力してきている。その取り組み内容をみるといくつかの共通項が浮かび上がる。

5社の事例から見る継続的な賃上げに向けた取り組み

5社の事例について、継続的な賃上げの取り組みの特徴点を概観する。

「ニトリホールディングス」は、2023年春闘でUAゼンセン傘下の組合と交渉した結果、正社員に平均で、ベースアップを含めて5.0%(1万8,186円)、パート・アルバイトについても時給を平均で53.6円(5.01%)引き上げることで妥結した。この結果、正社員は20年連続、パート・アルバイトも10年連続でのベアを実現したことになる。

同社では30年という長期的な経営目標を掲げ、粗利益を年間平均従業員数で割った労働生産性を指標にして、着実に労働生産性を向上させてきたことが、ベア継続を可能にした。しかし、これまで生産性を向上させるために取り組んできた現場における業務の標準化・効率化といった従来手法の延長だけでは限界にきているため、DXの活用やセルフレジ等による省力化、機械化の推進で、労働生産性の更なる向上を目指している。

「ワークマン」も今年4月からの全社員平均5%の賃上げを発表している。2014年に「中期業態変革ビジョン」を打ち出し、事業ドメインをスポーツウェア、アウトドアウェアに拡大し、「WORKMAN Plus+」「#ワークマン女子」といった新業態の店舗を展開してきた。その結果、2022年の全店売上高は、2014年対比で2.2倍以上、営業総収入は2.4倍以上、経常利益は2.8倍以上伸び、この間、社員の平均年収は100万円アップした。これとあわせて、従業員のデータリテラシーを高める取り組みを推進し、「データ経営」の考え方を組織に浸透させてきた。今後の目標としては、国内2,000店舗を掲げ、「声のする方に、進化する」ことを目指す。

「リンガーハット」は、外食業界トップクラスの賃上げに向けて、現場でのDX推進に注力している。デフレ経済下で赤字経営に苦しみながらも、安全・安心な食材を用いた高付加価値化・値上げ戦略への転換(2009年)で、業績をV字回復させた。過去3年は、コロナ禍の影響で店舗の縮小を余儀なくされたものの、昨年の2022年春闘では労使交渉(組合はUAゼンセン傘下)の結果、定期昇給3,901円(1.27%)に加えてベースアップ3,019円(0.99%)を実現。現場の業務改善に向けては、売上実績や食材の使用量(推定在庫)をもとにAIで売上予測するWeb発注システムを導入したほか、シフト管理や人事関連のDXを推進し、現場の負担・ストレスを軽減させている。

ジンズ(JINS)では、全国464店舗の準社員とパート従業員全員の時給を、昨年9月から東京都内の最低時給である1,120円に引き上げ、賃金水準の地域間格差をなくした。また、正社員だけでなくすべての従業員に対して、スキルアップ支援策を実施し、昨年3月、社内教育機関「JINS Academy」を設置した。正社員登用にも積極的で毎年登用数を増加させている。

「ディップ(dip)」は、有期雇用労働者の待遇向上プロジェクトを推進し、採用時給の引き上げという形で、社会的な賃上げ機運を醸成してきた。同社は、2021年12月に、有期雇用労働者の待遇向上を目指す「ディップ・インセンティブ・プロジェクト」の開始を宣言し、42万件以上の時給アップ案件を獲得、一年間で平均時給が9.1%上昇の1,222円と過去最高を更新した。一方、労働生産性が向上しない限り、時給は上げられないため、求人企業に対して、応募者との採用面接スケジュールを自動調整(チャットボットで自動応対)する「面接コボット」、自社での採用ページ作成を不要にした「採用ページコボット」、入社・労務管理をペーパーレスで完結させる「人事労務コボット」等を通じて、求人企業に対するDX導入サービスも展開している。

この5社の事例に共通した継続的な賃上げを生み出す要素として、①中長期的な企業の成長を展望する経営戦略、②現場レベルにおけるコミュニケーションを重視した参加型による生産性向上の取り組み、③DX推進を中心とした省力化・効率化に向けた設備投資と人への投資──を指摘することができる。

つまり、トップダウンだけではなく、生産性の向上のため、現場力を活用したボトムアップ型の参加によるDX推進に積極的な姿勢をとる。業務の効率化・省力化に向けた、こうした取り組みによって高い顧客満足を得ている。

非製造業における低い生産性からの脱却が求められる中、5社の取り組み事例は、生産性向上につながる要因(企業の成長期待、人と設備への投資、イノベーション、教育訓練等)がそれぞれの企業に適合的な形で取り入れられている点で共通項がある。

求められる労使コミュニケーションの再構築

2023年春闘でのもう一つの特徴的な動きは、政労使が同席した意見交換の場が設けられたことだろう。大手の高水準の回答を受けた3月15日夕刻、首相官邸で「政労使の意見交換」(政労使会議)が開催された。中小企業や労働組合のない企業、有期・パート・派遣契約などへの賃上げの波及に向けた社会的機運を醸成することを目的とし、2月に岸田首相と芳野連合会長があった際、連合側からの提起を受けて、実現した。

安倍政権の時に設けられて以降、8年ぶりに開かれた「政労使会議」には、連合の芳野会長のほか岸田首相と関係閣僚、経済界からは経団連の十倉会長らが出席。大手企業の積極的な賃上げ動向を踏まえて、中小企業や非正規雇用の処遇改善に不可欠な価格転嫁の推進に向けた取り組みを強める必要があるとの認識で一致した。

岸田首相は中小・小規模企業の賃上げ実現に向けて、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠であることについて、「基本的に合意があった」と述べ、「政府としても、政策を総動員して、環境整備に取り組む」と強調した。具体的には、公正取引委員会の協力の下、労務費の転嫁状況について業界ごとに実態調査を行ったうえで、労務費の転嫁の在り方について指針をまとめると表明した。

また、非正規労働者の賃金の底上げにつながる最低賃金について、「今年は全国加重平均1,000円を達成することを含めて、最低賃金審議会で、しっかりと議論いただきたい」と具体的なターゲットを示しつつ、労使に要望した。

こうしたナショナルレベルでの政府を交えた労使コミュニケーションの深化による政策の合意形成は、岸田政権が標榜する「構造的な賃上げ」には不可欠となるだろう。

今回の大手企業で見られた高水準の賃上げと波及は、過去を振り返ると賃上げ決定の考慮要素として、「世間相場」が大きく影響していた高度成長期の動向と類似した面がある。高度成長期からバブル崩壊までの春闘では、相場けん引役となる製造業のパターンセッターの役割とポジションが明確で、そこで形成された相場が企業間・産業間に波及してきた経緯がある。

それがここ数年、大手回答の分散化傾向が強まったこともあり、波及メカニズム自体が見えにくくなった。ここは産業別労使レベルで、フォーマルだけではなくインフォーマルを含めたコミュニケーションの再構築が必要なのかもしれない。

企業内の課題をあげるとすると、再構築がより必要なのは職場レベルにおけるコミュニケーションではないだろうか。

先に見た5社の事例でも労組の有無にかかわらず、職場レベルでのコミュニケーションの活性化によるチームワーク力の強化を、生産性の向上に結び付けている。

当機構が実施した「AIの導入が職場に与える影響に関するヒアリング調査」で、AI導入の成否を左右する大きな要因は、従来型の労使協議による企業内コミュニケーションというより、職場レベルのコミュニケーションが担っていることが示されている。これまでのデジタル技術導入による業務の効率化とは異なり、AIの設計・開発・運用については、担当の正社員と開発者という単線的な結びつきだけでなく、関連業務に従事する派遣社員や子会社や代理店の従業員といった幅広い人材の関与も欠かせない[注2]

5社の事例にみられるように、現場でデジタル技術を活用しているパート・アルバイトの意見なしに付加価値生産性の向上につながる業務の改善案を見出すことは難しい。また、リンガーハットにおける副業の導入事例のように、これからは隣で働いている人が実は他社の正社員であるケースも出てくる可能性がある。このように、コロナ禍で進んだテレワークの定着など働き方の多様化を視野に入れると、ポストコロナ下でのDXの推進にあたっては、職場の多様な人材をどのように結合させ、新たなイノベーションにつなげていく視点を見逃がすことはできない[注3]

2023年は分岐点となるか──ポストコロナとポスト「春闘」

1990年代のバブル経済崩壊により、わが国の経済社会は変調をきたし、雇用システムも変容を遂げた。1993年からは新卒採用の抑制による就職氷河期の端緒が開かれ、大手企業では希望退職が拡大、給与面でも管理職への年俸制導入に始まり、個人の成果・業績を軸とする制度への改編が進む。

その後、大手金融機関が破綻し、アジア通貨・金融危機が発生した1997年に賃金水準、消費支出とも既往最高となった後、翌年から漸減傾向が強まり、現在に至るまで、その水準は回復していない。経済のデフレ基調もここから始まる[注4]

また、同年は正社員数が3,812万人となったあと、減少に転じ翌98年は3,794万人へと落ち込み、その後も減少が続き、非正規雇用の増勢が強まる。労働組合員数についても同年がピークで、これ以降、減少傾向に歯止めがかからない。

経済情勢の悪化も影響してか、専業主婦世帯数を共稼ぎ世帯数が追い抜いたのが、97年だった。さらに、自殺者の数も、97年以降、大幅に増加する。同年の2万4,391人から翌98年には3万2,863人へ急増し、その後14年連続で、3万人超えが続いた。

このように、わが国の社会・経済面において、1997年が大きな分岐点となったことがデータから浮き彫りになる。

2023年春闘を本当の意味での転換点とし、1997年以降続く縮み志向を反転させ、大きな分岐点とするためには、それを実感できるような政策対応と、労使の取り組みが求められるのではないだろうか。

そのためにも、政府はポストコロナのニューノーマルに向けた政策の枠組みを具体的・可視的に示すことに加え、労使には従来パターンによらないポスト「春闘」の枠組みを提示することが求められる。

これまでの大手企業の労使交渉の流れをみると、転換点としたいとの意向が強く示されている。残された課題は、賃上げの持続性に加え中小企業への波及と非正規雇用の処遇改善による全体的な底上げになる。

政労使会議では、こうした課題への取り組みが議論され、岸田首相はさらに17日の記者会見で、いわゆる「106万円・130万円の壁」について「被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援などをまず導入し、さらに制度の見直しに取り組む」と表明した。

主婦パートを中心にした「年収の壁」を意識した就業調整が賃金水準の上昇を阻んでいるとの指摘は多く、これをテコに「短時間労働者への被用者保険の適用拡大」と「最低賃金の引き上げ」につなげるとしている。

「春闘」もこれまでの延長線上での転換は困難だろう。2022年「労働組合基礎調査」結果(厚労省)によると、雇用者数に占める労働組合員数の割合を示す「推定組織率」は16.5%と過去最低を更新しており、従来型の集団的な労使関係を前提とした「春闘」の枠組みは年々縮小している。

こうした動向も踏まえて、経済同友会の櫻田謙悟 代表幹事は集中回答日を受けた3月15日のコメントで「業界が一律に賃上げの要求や回答を求める春闘の慣習からの脱却も必要である。労使自治の原則の下、多様で柔軟な働き方を可能とする施策を進め、役割とその成果に応じた公平な処遇や円滑な労働移動により、生産性を向上させていくことが重要である」と述べている。

連合はすべての職場における集団的労使関係の構築に向けて、運動方針(2022~2023年度運動方針)の中で、「労働者代表法制」の導入も視野に入れた職場における過半数代表制の適正な運用徹底や、規定の厳格化[注5]とあわせて、集団的労使関係による成果を波及させるために、「労働協約の拡張適用」[注6]に取り組むとしている。

経済同友会からは連合とのトップ懇談会の場で「従業員代表制については一致している」との見解が表明されており、労使関係の再構築に当たっての大きな論点となる可能性もある。

経団連は、2020年の『経営労働政策特別委員会報告』の中で、労働組合との集団的労使関係だけでなく、社員との個別労使関係を深めていくことが重要となっていると主張する。企業労使間の「共感と信頼」を前提としつつも、さまざまなチャネル・施策を通じて、良好で安定的な関係を多層的に深化させるとしている。

ポストコロナにおける成長力の回復にあたっては、先に見た個社における事例からは多様な人材を包摂する形でのコミュニケーションの重要性が浮かび上がる。一方、岸田政権が掲げる「春闘」を通じた賃上げを起点とする新しい資本主義においては、産業レベルに加え、ナショナルレベルにおいても政労使間の対話(コミュニケーション)の役割がより重要になっていくのではないだろうか。

脚注

注1 価格転嫁の取り組みについては、同サイトのJILPT緊急レポート「「価格転嫁」についての政労使の取り組み(PDF:753KB)」(松上隆明)を参照。また、非正規雇用の現状と直面する政策課題については、ブックレット『「非正規雇用」について考える』(尾形强嗣)に詳しい。

注2 資料シリーズNo.253「金融業におけるAI技術の活用が職場に与える影響─OECD共同研究─」(2022年)、資料シリーズNo.262「製造業におけるAI技術の活用が職場に与える影響─OECD共同研究─」(2023年)を参照。また、調査シリーズNo.210「新しいデジタル技術導入と労使コミュニケーションに関する研究」(2021年)では「伝統的なルートによる協議や交渉が相対的に少なかったということが明らかとなってきた」としている。

注3 「職場の再構築」に関する今日的課題については、第124回労働政策フォーラム「日本の人事制度・賃金制度『改革』」での荻野コメント・配布資料「聞き取り調査から浮かび上がる今日的課題「職場の再構築」(PDF:1.0MB)」参照。

注4 早わかり グラフでみる長期労働統計「常用労働者1人平均月間現金給与額 1947年~2022年 年平均(PDF:212KB)」参照。

注5 当機構の調査(2019年)によると、過半数代表者の選出が「投票や挙手」といった本来求められる方法ではなく、「信任」「話し合い」「親睦会の代表等が自動的に」「使用者が指名」などの不適切な方法が7割を占めている。

注6 具体的な事例として、2021年9月22日にUAゼンセンに加盟する「UAゼンセンヤマダ電機労働組合」、「ケーズホールディングスユニオン」、「UAゼンセンデンコードーユニオン」の3労組が会社側と締結した年間所定休日に関する労働協約の地域的拡張適用を厚生労働大臣が決定している。地域的拡張適用の決定は1989年以来32年ぶり。