プロジェクト研究:令和7年度

研究テーマ名 趣旨・内容

労働市場とセーフティネットに関する研究

働く人がウェルビーイングを高めつつ安心・安全に活躍できる労働市場をどのように構築するかについて、雇用・労働の質の向上や健康確保、労働環境の整備、格差是正、効果検証に基づくセーフティネットのあり方の検討に資する政策的インプリケーションを提示する。

令和7年度は、労働力需給推計については、前年度の成果を踏まえ、改善に向けた検討を行うほか、企業及び個人パネル調査を継続的に実施し、企業の人材戦略や、ミドルエイジ層の就業・生活・健康・ウェルビーイング等について経時変化を把握する。また、公的統計の二次分析により経済格差と貧困問題等に焦点を当てた研究を行う。

職業構造・キャリア形成支援に関する研究

 

生産活動期間の長期化や産業・職業構造の変化の中で、生涯にわたる主体的なキャリア形成支援のあり方、転職希望者の労働移動や就職活動に困難を抱える人の労働参加を進めるための効果的なマッチングやカウンセリング、デジタル化時代に対応した職業情報の整備や支援ツールの開発など、職業相談現場や求職・求人両者のニーズ・課題に即した効果的なキャリア形成支援・職業相談手法を提示する。

令和7年度は、厚生労働省職業情報提供サイト【job tag】に掲載する新規職業の職業解説・数値情報作成等を進めるほか、セルフ・キャリアドックに焦点を当てた大企業調査を実施し、その導入に向けた要因を明らかにし、他の人事労務管理施策との関連を検討するとともに、求職者の離職経緯と求職活動への意識に関するアンケート調査等を実施する。

技術革新と人材開発に関する研究

職業能力の高度化に向けた多様なニーズを把握・分析し、職業能力開発インフラのあり方や新しい産業領域における人材育成、若者の雇用・キャリア形成等について政策的インプリケーションを提示する。

令和7年度は、マーケットペイ(外部労働市場の市場賃金を参照して賃金レベルを決定する仕組み)に着目した賃金に関する調査の実施、および人材施策に関する国内・海外のヒアリング調査や銀行業のヒアリング調査を行う。また、若年者雇用については第6回若者のワークスタイル調査の実施、及び若者の離職状況・キャリア形成に関する調査の各論分析や、アメリカのコミュニティカレッジに関する海外調査を実施。デジタル人材の採用や育成については、アンケート調査を実施する。

多様な人材と活躍に関する研究

高齢者就業や社会貢献活動、ジェンダー間や就業形態間の格差、非正規労働者の処遇改善などの課題を抽出・分析し、政策的インプリケーションを提示する。

令和7年度は、高年齢者の就業・雇用の研究では、ヒアリング調査のほか、大規模アンケート調査を企業と高齢者個人向けに実施し、改正高年法の影響を把握する。女性労働研究に関しては、女性労働をめぐる法政策(特に雇均法、女活法)が与えた影響や政策効果について調査研究を実施していく。非正規雇用の研究に関しては、正規・無期転換者だけでなく、正規・無期転換を断った労働者にもヒアリング調査を実施する。さらに、人材ポートフォリオと雇用管理・働き方に関して、事業所調査・労働者調査を実施する。非営利セクターの就労に関する研究については、ソーシャルエコノミーセクターに位置する団体とそこに働く人に対してアンケート調査を行う。外国人労働者の研究については、帰国した技能実習生・特定技能外国人のキャリア形成に関する実態を把握するための海外ヒアリング調査等を行う。

多様な働き方と処遇に関する研究

労働時間、賃金、仕事と育児・介護の両立、という従来取り組んできたテーマに、テレワーク、兼業・副業といった柔軟な働き方に関する視点を加え、企業・労働者双方の抱える課題を抽出し、ワークライフバランスの実現に資する政策的インプリケーションを提示する。

令和7年度は、労働時間関係について、働き方改革関連法施行後の職場管理等の実情を明らかにするための企業アンケート調査を行うほか、厚生労働省が実施した勤務間インターバル調査のデータを用いて企業や労働者の実情を分析する。賃金関係については、欧米主要国における職務給の実態について文献及び現地調査を行うほか、最低賃金の引き上げと企業行動に関するアンケート調査結果の分析などを行う。育児・介護関係の研究については、育児休業について昨年度のドイツ調査に続きスウェーデンでの調査を実施し、介護休業についてこれまでの蓄積を活かし国際会議での報告を行う。なお、外部研究機関との連携については、引き続き労働安全衛生総合研究所・過労死等防止調査研究センターとの共同研究を行い、過重負荷予防に向けた分析を行う。

多様な働き方とルールに関する研究

多様で柔軟な働き方における労働者概念や労使関係の変容について、国際比較を含めて実態を把握し、労働法・政策面の課題を摘出するとともに、新しい時代に相応しい政策的インプリケーションを提示する。

令和7年度は、解雇無効時の金銭救済の実態を明らかにするため、海外ヒアリング調査及びあっせん事案(解雇または雇い止め)の収集・分析、労働者アンケート調査の分析を行う。また、労働者の学び直しやプラットフォーム労働を対象とした比較法研究や、雇用創出・労働条件改善をめぐる労使交渉の日韓比較研究、日本及び諸外国におけるAI技術の活用や活用をめぐっての労使コミュニケーションの分析、過半数代表についての実態調査、医療・福祉・公共交通分野といった「エッセンシャル・サービス」の提供に従事する労働者の雇用・労働条件に関するヒアリング調査等のとりまとめを実施する。