JILPTリサーチアイ 第74回
職場における感染防止をめぐる法政策─ドイツにおけるコロナ労働保護規則の変遷を追う

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労働法・労使関係部門 主任研究員(労働法専攻) 山本 陽大

2022年9月7日(水曜)掲載

Ⅰ.はじめに

2020年初頭以降における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行(パンデミック)を契機として、ここ数年の間、各国の労働政策においてはコロナ危機への対応が中心となっている[注1]。このような政策領域は非常に多岐にわたるが、おおまかにいえば、コロナ禍に起因する事業縮小や休業時の雇用保障・所得保障(フリーランスに対するものを含む)に関するものと、テレワークの実施をはじめとする職場における感染の防止に関するものとに区分することができよう。そして、日本では、これらのうち前者の領域については、雇用調整助成金の要件緩和や助成率の引上げ、新型コロナウイルス対応休業支援金あるいは小学校休業等対応助成金の創設等が、雇用保険関係法令の改正等によって実施されており、まさに立法政策による対応が図られている[注2]。一方、後者についてみると、日本では、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室によって、各業界団体が策定した業種ごとの感染拡大予防ガイドラインが整理されているほか[注3]、厚生労働省がHP上[注4]で、各職場の安全衛生委員会等に対して感染拡大防止のためのチェックリストを提供し、あるいは職場における感染防止対策の実践例を示すといった対応を行っているものの、総じて立法政策上の動きは低調となっている[注5]

これに対して、諸外国においては、上記のうち後者の政策領域についても積極的に立法によって対応しようとする例がみられる。なかでも、ドイツにおいては、2021年1月に「コロナ労働保護規則(SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnung)」が制定されており、それによって、職場での感染防止のために使用者が講じるべき措置が、法的に規制されている。加えて、で示したように、同規則については、その後数度にわたり改正ないし全面改定がなされ、その内容の拡充・整理・統合が図られてきたという経緯もある。もっとも、かかるコロナ労働保護規則は2022年5月25日に有効期限を迎えており、現在ではその効力を失っているのであるが、その制定から累次にわたる改正および改定のプロセスを確認しておくことは、日本における政策的対応を相対化してみるうえでは有益であろう。また、これまでにドイツにおけるコロナ対応をめぐる労働政策を扱った先行研究[注6]は、上記で挙げたうち前者の政策領域(特に操業短縮手当)に焦点を当てるものが多く、後者を主題として検討を行ったものは、管見の限りみられない。そこで、本稿においては、コロナ労働保護規則の制定およびその後の変遷の過程を追うことにより、職場における新型コロナウイルス感染防止をめぐるドイツ労働法政策の一断面を覗いてみることにしたい。

表 コロナ労働保護規則の変遷

2021年1月21日 コロナ労働保護規則(初版)制定
3月12日 第1次変更規則による改正
4月15日 第2次変更規則による改正
4月22日 第3次変更規則による改正
2021年6月25日 コロナ労働保護規則(改定版)制定
9月 6日 改定版・第1次変更規則による改正
11月22日 「全国的蔓延状態の決定廃止を契機とした感染症予防法及びその他の法律の変更に関する法律」13条による改正
2022年3月17日 コロナ労働保護規則(再改定版)制定
5月26日 失効

出典:連邦労働社会省のHP〔BMAS - SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnungneues Fenster〕に基づき筆者一部加工〔最終アクセス日:2022年9月4日〕

Ⅱ.コロナ労働保護規則制定までの過程

ドイツでは、新型コロナウイルス感染症は2020年初頭に流行の兆しがみられ、3月上旬には感染者が1,000人を超えるに至った。このような状況下において、まず同年4月16日に、「コロナ労働保護基準(SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnung)」[注7]が公表される。これは、連邦労働社会省(BMAS)が労災保険制度の運営機関(Unfallversicherungsträger:以下、労災保険機関という)[注8]と共同で策定したものであり、そこでは職場(事業所)内での新型コロナウイルスへの感染を防止するために有効とされる措置が示されている。この点、ドイツでは労働保護法(ArbSchG[注9]によって、使用者は、職場等におけるリスクアセスメント(Gefährdungsbeurteilung)の実施(5条および6条)と、かかるリスクから(労働者を含む)就労者(Beschäftigte[注10]を保護するための措置(保護措置〔Schutzmaßnahmen〕)を講じること(3条および4条)を、それぞれ義務付けられている。そのうえで、上記のコロナ労働保護基準は、感染症予防法(IfSG)5条に基づき連邦議会が感染症の全国的蔓延状態に関する決定[注11]を行った期間中について、コロナ禍における行動様式としてドイツ連邦政府によって強く推奨されていたAHA+Lルール(Abstand〔対人間隔確保〕、Hygiene〔衛生対策〕、Alltagsmasken〔日常的マスク着用〕、Lüften〔換気〕)を職場においても実施するという観点から、使用者が感染防止のための保護措置を講じるに当たっての一般原則を示したものであった。

また、これに加えて、2020年8月20日には、連邦労働社会省の労働保護委員会と連邦労働保護・労働医学研究所(BAuA)によって、「コロナ労働保護ルール(SARS-CoV-2-Arbeitsschutzregel)」[注12]が策定・公表されている。これは、コロナ労働保護基準のなかで示された一般原則をより具体化することを目的としたものであり、職場における感染防止に向けたリスクアセスメントのあり方を示すとともに、複数の観点(職場〔トイレや休憩室等も含む〕の設計、換気、ホームオフィス、出張・会議、対人間隔確保、機器・工具、労働時間・休憩時間の設計、制服等の保管、外部の者の職場への立ち入り、マスク等)から、感染防止のために使用者が実施を検討すべき保護措置の内容を提示したものであった。しかも、かかるコロナ労働保護ルールには、使用者がそれに従って行動している限り、職場内での新型コロナウイルスへの感染防止という点では、上記でみた労働保護法上の使用者の義務は履行されたものと推定する効力(推定効〔Vermutungswirkung〕)も付与されていた。

更に、これらコロナ労働保護基準およびコロナ労働保護ルールというのは、全ての産業分野を対象としたものであったが、ドイツでは労災保険機関によって、産業・業種ごとの特殊性を考慮した形でのリスクアセスメントのあり方や具体的な保護措置を示したガイドライン(Handlungshilfe)も公表されていた[注13]

このように、ドイツにおいてはコロナ・パンデミックの比較的早い時期から、行政機関等によって、職場における感染防止のための保護措置が具体的に示されていた点は注目されよう。しかしながら、これらは直接的に使用者に対して特定の措置を講じることを義務付けるものではなかった一方、ドイツにおいては2020年末になっても、店舗や小学校の閉鎖等の制限措置にもかかわらず、依然として高い感染者数および死亡者数が続いており、また当時は、変異株(アルファ株)による感染拡大も予想される状況にあった。そこで、労働保護法18条3項の規定に基づき、連邦議会により感染症の全国的蔓延状態に関する決定が行われている期間中について、連邦労働社会省が特別の法規命令(Rechtsverorndnung)を時限的に発することで、使用者を(また、部分的には就労者をも)対象に、感染防止のための一定の保護措置を義務付けることが必要とされた[注14]。このために制定されたのが、コロナ労働保護規則である。

Ⅲ.初版(2021年1月~6月)

1.規制内容

2021年1月21日に制定された最初のコロナ労働保護規則(以下、初版という)は、まず1条1項において、就労に際してのコロナウイルス(SARS-CoV-2)感染へのリスクを低減すること、および就労者の安全および健康を保護することを、その目的として掲げている。先ほどでも示したように、コロナ労働保護規則は失効に至るまでに2度の全面改定が行われているのであるが、かかる目的については、その後の改定に際しても一貫して維持されている。

そのうえで、同規則は、2条の1項において、使用者は労働保護法5条・6条に基づくリスクアセスメントを、事業所内における感染防止のために必要な追加的措置という観点からも実施しなければならないことを明確に規定しつつ、2項以下において、人同士の接触機会を低減させるための複数の措置の実施を、使用者に対して義務付けている。

これにより、第一に、使用者は、複数人による仕事上の会議を、必要最小限に減らし、かつ、それが可能である限りにおいて、情報通信技術により代替させなければならない(3項1文)。また、これが不可能である場合には、使用者は、就労者の保護を同程度に確保しうる他の適切な保護措置を講じる義務を負う(同2文)。ここでいう「他の適切な保護措置」としては、初版にかかる草案の理由書(Begründung)のなかでは、アクリル板等による間仕切りの設置や集中的な換気といった措置が挙げられている。

また第二に、使用者は、オフィスワークまたはそれと比較可能な職務に従事している就労者に対しては、差し迫った事業上の理由がない限りにおいて、その職務を自宅から行うことを申し出なければならない(4項)。これはまさに、テレワーク、なかでもホームオフィス(Homeoffice)における在宅テレワークを就労者に認めることを使用者に対し義務付けるものといえる。もっとも、草案理由書によれば、かかる使用者の義務の不履行に対しては、労働保護法22条に基づく行政監督という形での公法上のエンフォースメントのみが予定されており[注15]、在宅テレワークの開始自体については、あくまで使用者と就労者間での合意が必要とされている。従って、就労者には、上記規定を根拠に、ホームオフィスでの就労に関する私法上の請求権までは認められない[注16]。また、ここで規定されていたのは、上記の通り、使用者からの申し出義務に限られ、これを受け入れ在宅テレワークを行う就労者の義務までは想定されていなかった。

第三に、一つの空間を複数人が利用せざるをえない場合には、行う職務がそれを許容する限りにおいて、一人当たりの床面積が10平方メートルを下回ってはならない(5項1文)。草案理由書によれば、ここでの10平方メートルという基準は、2020年11月25日の連邦首相・州首相会議で定められた卸売・小売業における一人当たりの販売面積の基準に従ったものとされる。また、職務の性質上、かかる床面積を確保することが困難である場合には、ここでも使用者には、換気や間仕切りの設置といった他の適切な保護措置を講じることが求められる(同2文)。

第四に、就労者数が11人以上の事業所においては、使用者は、就労者の作業グループの人数を可能な限り最少化する義務を負うとともに(6項1文)、事業プロセスにおける各グループ間での接触機会およびグループの変更を必要最小限に抑えなければならない(同2文)。更に、更衣室や休憩室、食堂等における混雑を回避するために、使用者は、当該事業所の実状に照らして可能である限り、時間帯をずらして労働することを可能とすべき義務をも負う(同3文)。

以上のように、初版はまず2条において、技術的あるいは組織的な観点からの事業所内における感染防止のための保護措置を複数定めているのであるが、続く3条は、使用者に対し、就労者へマスクを提供すべき義務を課すとともに(1項1文)、就労者に対しても使用者から提供されたマスクを着用すべき義務を課している(同2文)。また、ここでのマスクについては品質確保の観点から規格が定められており、医療用マスク(medizinische Gesichtsmasken)またはFFP2マスクもしくは初版の補遺(Anlage)において列挙されている呼吸用保護マスク(Atemschutzmasken:N95マスク、P2マスク等)でなければならない。更に、草案理由書によれば、提供されたマスクは最長でも1回の勤務を超えて着用することはできず、汚れ等が付着した場合には、その都度交換しなければならないとされている。但し、同時に3条1項1文により、上記の使用者のマスク提供義務は、2条において定められた床面積の要件を遵守できない場合(1号)、または1.5メートルの対人間隔を確保できない場合(2号)、もしくは職務の遂行に際して高いエアロゾル放出の危険が予想される場合(3号)の、いずれかに当たる場合に限られる。これは、マスクの着用のような就労者個々人を対象とした保護措置に優先して、技術的あるいは組織的な保護措置が講じられなければならないという労働保護法上の一般原則(4条5号:いわゆるTOP原則)を考慮したものと考えられよう[注17]

なお、かかる初版については、有効期限が差し当たり2021年3月15日に設定されていた(4条)。

2.第1次変更規則による改正

かかる初版の制定後、ドイツでは2021年2月・3月になると、連邦首相・州首相会議において、これまで制限されていた社会活動の段階的な再開が検討されるようになる。もっとも、感染者数自体は依然高い水準を維持しており、また変異株の占める割合が急速に上昇していたことから、社会活動の制限緩和によるリスクをカバーするためにも、事業所における感染防止措置は引き続き重要との認識が示された[注18]。このために、初版は、2021年3月12日のコロナ労働保護規則の変更に関する第1次規則(以下、第1次変更規則という)によって、有効期限が同年4月30日まで延長されるとともに、その内容の補充が行われることとなった。かかる第1次変更規則による重要な変更点は、次の4点である。

まず第一に、2条1項が改正され、使用者はリスクアセスメントに当たり、コロナ労働保護ルールを考慮したうえで実施すべきことが明確に規定された。先ほどでみたように、コロナ労働保護ルールは、初版の制定以前から職場における感染防止に向けたリスクアセスメントのあり方を示していたが、コロナ労働保護規則のなかに摂取されることで、明確な法的位置付けが与えられたといえる。

また第二に、2条5項が定める一人当たり10平方メートルの床面積確保義務の精緻化が図られている。すなわち、同項2文が改正され、使用者が同義務を負わない場面として、職務の性質上遵守できない場合のほか、建物の構造上遵守できない場合が新たに追加される一方、これらの場面において使用者が講じなければならない「他の適切な保護措置」として、①換気措置(1号)、②その場に居合わせた人の間における適切な間仕切り(2号)、③その場に居合わせた全ての人に対するマスクの着用義務(3号)、④(後述する)衛生計画のなかで指定されたその他の措置(4号)が、それぞれ明記された。

第三に、事業所内における衛生計画(Hygienekonzepte)の策定が、新たに義務付けられている。すなわち、新3条として、使用者は2条1項に基づき実施したリスクアセスメントを基礎として衛生計画を策定し、そのなかで事業所内における感染防止のために必要な措置を定め、かつ実施しなければならない旨が規定された(1項1文)。従来は、リスクアセスメントを実施したのちに、それを踏まえて具体的にどのような保護措置をとるかは、2条2項~6項が定めるもののほかは、使用者に委ねられていたが、この点が衛生計画の策定という形をもって義務化されたことになる。また、使用者が衛生計画のなかで保護措置を定める際には、ここでもコロナ労働保護ルールの内容を考慮すべきことが明記されているほか、でみた労災保険機関が産業・業種別に定めているガイドラインの内容を援用することができる旨も定められている(同項2文)。なお、定められた衛生計画は、職場内における適切な方法により、就労者が入手しうるようにすることが求められる(3項:以下、周知義務という)。

第四に、新4条として、マスクの提供および着用義務についても、精緻化が図られている。すなわち、まず使用者が提供すべきマスクの規格については、原則として医療用マスクで足りることとされた(1項1文)。これは、医療用マスクであれば着用者からの飛沫の拡散を抑制でき、他者を保護できることから、その場に居合わせた者全員が医療用マスクを着用していれば、保護措置として十分であるとの考え方に基づくものである[注19]。また、その一方で、使用者が医療用マスクを提供すべき場面として、就労者が自席に着くために建物内を移動する場合が、新たに追加された(同3号)。更に、リスクアセスメントの結果、医療用マスクでは就労者の保護にとって十分ではなく、着用者自身を保護する機能を備えたマスクが必要であることが明らかとなった場合、使用者は、補遺において列挙されている呼吸用保護マスクを提供しなければならず、特にこのような場合として、①職務の遂行に際して高いエアロゾル放出の危険が予想される場合、または②職務上、マスクの着用義務がない他者と接触する場合が挙げられている(1a項)。他方で、就労者のマスク着用義務については、使用者が提供するものと同程度の機能を有するものであれば、就労者が自身で用意したマスクを着用することができる旨が、新たに規定された(1b項)。

3.第2次変更規則による改正

しかし、ドイツではその後も、感染者数、とりわけ変異株への感染が拡大するなかで、無症状の感染者からの感染も確認されるようになってきたことから、検査を頻繁かつ迅速に行うことが、事業所内における感染防止のためには有効であるとの認識が示されるようになる[注20]。このことを背景に、2021年4月15日のコロナ労働保護規則の変更に関する第2次規則(以下、第2次変更規則という)により、初版は再度改正され、有効期限が最長で同年6月30日にまで延長されるとともに、新たに5条が創設され、それにより使用者の検査実施義務が導入されることとなった。

かかる新5条によれば、使用者は、就労者に対して、専ら自宅において就労している(=在宅テレワークを行っている)場合を除き、少なくとも暦週に1回のペースで、コロナウイルス(SARS-CoV-2)の病原体を直接証明するための検査を提供しなければならない(1項)。ここでいう「検査(Test)」とは、第2次変更規則にかかる草案の理由書のなかでは、PCR検査や抗原迅速検査(Antigen-Schnelltests)が想定されている。また、これに加え、一定のカテゴリーに属する就労者に対しては、検査のペースが週1回から週2回へ引き上げられている(2項)。このようなカテゴリーとしては、①使用者の指示により共同宿泊施設に宿泊する就労者(1号)、②コロナウイルス(SARS-CoV-2)が伝染しやすい気候上の条件のもと屋内で作業を行う就労者(2号)、③他者に対する身体的な接触が不可避である役務提供を行う事業所の就労者(3号)、④マスクの着用義務がない者と接触する職務を行う就労者(4号)、⑤事業上、頻繁に複数の他者と接触する就労者(5号)が規定されている。草案理由書によれば、具体的には、①については農業における季節労働者が、②については食品・食肉製造業における就労者が、④については保育園や障害者施設で看護を行う就労者が、⑤については小売業や運送・配達業の就労者が、それぞれ当たるとされている。かかる2項および先ほどの1項に基づき実施された検査の証明については、使用者は行政監督に備えて、4週間保管しなければならない(3項)。

なお、草案理由書のなかでは、「就労者には、使用者による検査の提供を利用することが求められる。」との記述がみられるが、検査を受けるべき就労者の義務までは規定されていない。

4.第3次変更規則による改正

ところが、かかる第2次変更規則からわずか7日後の2021年4月22日に、コロナ労働保護規則の変更に関する第3次規則(以下、第3次変更規則という)によって、初版は再度改正される。その背景としては、引き続き感染状況が悪化していることに加え、Heinlich-Heine大学(デュッセルドルフ)の最新の研究により、就業率が高い地域においては低い地域よりも感染率が高いことが明らかにされ、職場における感染防止のための保護措置、特に検査によるスクリーニングの重要性がいっそう認識されたことによる[注21]。このために、第3次変更規則により、有効期限が2021年7月30日まで延長されるとともに、検査実施義務を定める第5条が改正され、従来週1回が原則であった検査のペースが、週2回に引き上げられることとなった(1項)[注22]。また、コロナ労働保護規則の有効期間中は、使用者による検査の実施について行政監督が行われる可能性があることから、従来4週間とされていた検査実施証明の保管期限が、上記でみた同規則の有効期限延長と連動して、同年7月30日まで延長された。

なお、従来、使用者の就労者に対するホームオフィスでの就労(在宅テレワーク)の申し出義務について規定していた2条4項(←1)は、第3次変更規則によって削除された。これは、かかる義務については、同じく2021年4月22日の感染症予防法改正により同法中へ承継されたことによるものである[注23]

Ⅳ.改定版(2021年6月~2022年3月)

以上でみたように、コロナ労働保護規則の初版は、2021年1月21日の制定以降、累次にわたる改正によって、有効期間の延長と内容の拡充を重ねてきたわけであるが、同年5月以降になると、感染者数には低下傾向がみられるようになった。またワクチン接種率も次第に増加しており、最新の研究によれば、ワクチンを接種した人(Geimpfer)および感染から回復した人(Genesener)については、(再)感染するリスクは格段に低くなることも明らかとなってきた。しかしその一方で、この頃になると新たな変異株(デルタ株)への感染が広がりをみせ、またRobert-Koch研究所からの報告によれば、職場での感染の割合が家庭内での感染よりも2倍高くなっているとのデータも示された[注24]。このような状況変化を背景に、コロナ労働保護規則は、2021年6月25日に1回目の全面改定が行われることとなった(以下、かかる改定後のものを改定版という)。

1.規制内容

かかる改定版の規制内容について、初版(第3次変更規則による改正後のもの)との異同を整理しておくと、まずⅢ.1でみたように、コロナ労働保護規則の目的(1条1項)自体は初版の時点から変更はない。一方、初版は、2条において、人同士の接触機会を低減させるための保護措置を複数講じることを、使用者に対し義務付けていたのであるが、改定版では、3条において、使用者は事業に起因する人同士の接触機会を低減させるために適切な全ての技術的・組織的措置を講じなければならない旨(1文:TOP原則)、および複数人による空間の同時利用は、事業上必要最小限としなければならない旨(2文)が規定されるにとどまり、初版に比してかなり抽象化ないし縮小された規定となっている。これに対して、リスクアセスメントの実施義務(2条1項1文)と、事業所内の衛生計画の策定・周知義務に関しては、初版における規制が引き続き維持されている(同項2文・3項)。これにより、使用者が具体的にいかなる保護措置を講じるかは、リスクアセスメントの結果を踏まえ、またコロナ労働保護ルールや労災保険機関によるガイドラインを考慮しつつ、各事業所ごとの衛生計画のなかで柔軟に決定しうる形になったといえよう。

また、使用者の就労者に対するマスク提供義務(2条2項1文)と検査の実施義務(4条1項)についても、従来の規制が引き続き維持されている(就労者側のマスク着用義務についても、同様である〔2条2項2文〕)。但し、このうち検査実施義務については、4条2項が、使用者が就労者に対し同程度の保護を確保しうる他の適切な保護措置を講じている場合、または既に同程度の保護があることを証明できる場合には、使用者は検査を提供する必要はない旨を規定しており、例外の余地が新たに認められた。この点につき、改定版にかかる草案の理由書によれば、かかる例外に当たる場合として、就労者がワクチン接種を完全に終えていること、あるいは過去(少なくとも28日前)にコロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したことの証明がある場合が挙げられている。これは、先ほどみた、ワクチンを接種した人および感染から回復した人の(再)感染のリスクに関する知見を反映したものと解されよう。また、このほか、検査実施義務に関しては、改定版では、使用者は検査を無料で実施しなければならない旨、および検査は連邦医薬品機構の認可を得たものでなければならない旨が、それぞれ新たに明記されている(4条1項)。

なお、かかる初版については、有効期限が差し当たり2021年9月10日に設定されていた(4条)。

2.第1次変更規則による改正

そして更に、かかる改定版は、2021年9月6日のコロナ労働保護規則の変更に関する第1次規則(以下、改定版・第1次変更規則という)によって改正されている。かかる改正については、それ以外のものとは異なり、連邦労働社会省のHP上では草案理由書が公表されていないため、その背景については明らかではないが、この直前の8月はドイツにおいてワクチン接種率が停滞をみせる一方、変異株がほぼ全てデルタ株に置き換わった時期に当たる[注25]

そのためか、改定版・第1次変更規則によって、改定版の有効期限が同年11月24日まで延長されるとともに、コロナ労働保護規則のなかで初めて、ワクチン接種に関して規定が置かれることとなった。すなわち、上記改正により新5条が創設され、①使用者は就労者が労働時間中にコロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する予防接種を受けることを可能としなければならない旨(1項1文)、②使用者は事業所において予防接種を実施する産業医(Betriebsarzt)等に対して、組織面および人員面での支援を行わなければならない旨(1項2文)、③使用者は就労者に対し、労働保護法12条に基づく安全衛生教育の一環として、新型コロナウイルス感染症に罹患した場合における健康リスクについて説明するとともに、予防接種が可能であることについて情報提供を行わなければならない旨(2項)が、それぞれ規定された。先ほどみた通り、改定版・第1次変更規則については草案理由書が公表されていないが、でみる再改定版のコロナ労働保護規則も3条において改定版新5条と全く同じ規定を置いており、かかる再改定版の3条にかかる草案理由書[注26]によれば、上記のうち②にいう組織面・人員面での支援として、事業所内での予防接種に当たり、使用者が補助員を配置し、部屋や設備・器具等を用意することが挙げられている。

3.感染症予防法等変更法による改正

ところで、でみたように、コロナ労働保護規則の根拠法たる労働保護法18条3項は、連邦議会による感染症の全国的蔓延状態に関する決定(感染症予防法5条)がなされていることを条件に、連邦労働社会省に対し法規命令の発出権限を認めていたわけあるが、かかる決定については2021年11月25日に終了を迎えることとなっていた。そのため、それに先立つ同月22日の「全国的蔓延状態の決定廃止を契機とした感染症予防法及びその他の法律の変更に関する法律」(以下、感染症予防法等変更法という)により、労働保護法18条3項が改正され、連邦労働社会省には上記決定終了後も一定期間については特別の法規命令の発出権限が認められるとともに、コロナ労働保護規則(改定版)自体についても、有効期限の延長(2022年3月19日まで)と内容の一部改正が行われることとなった。かかる改正のポイントは、以下の2点である。

まず1点目として、先ほど1でみたように、改定版の3条2文は、複数人による空間の同時利用は、事業上必要最小限としなければならないとする接触機会の低減措置を使用者に義務付けていたが、これに「他の措置による同程度の保護を確保することができない限りにおいて」という留保が追加された。この点について、感染症予防法等改正法にかかる草案の理由書[注27]は、かかる留保に該当せず、使用者が接触機会低減措置を講じないことができるかの判断に当たっては、就労者がワクチン接種を完了していること、あるいは感染から回復していることといった事情が考慮される。

また2点目として、新6条が新設され、連邦労働社会省は、労働安全健康委員会をはじめとする労働安全衛生に関する各種行政委員会(労働保護法18条2項5号・24a条)に対して、コロナ労働保護規則が定める要請の充足を可能とするための規制や知見に関する調査、あるいはガイドラインの策定を委託できる旨が規定された。上記の草案理由書によれば、これにより、事業所内における感染予防のための保護措置の内容を、その都度の技術水準や労働医学・衛生学等の最新の知見に継続的に適合させてゆくことが可能となるとの説明がなされている。

Ⅴ.再改定版(2022年3月~5月)

上記でみた感染症予防法等変更法による改正が行われて以降、ドイツでは2021年12月に入ると、新たな変異株であるオミクロン株の発生により感染者数の増加が止まらない状況が生じたが、同時にそれまでの変異株に比して重症化リスクが低いといった特徴も明らかになってきた。そのため、2022年2月16日の連邦首相・州首相会議においては、社会・文化・経済活動の制限措置を段階的に撤廃することが決定された[注28]。このような状況変化を背景に、コロナ労働保護規則については、同年3月17日に2回目の全面改定が行われることとなった(以下、かかる改定後のものを再改定版という)。

かかる再改定版について、改定版(感染症予防法等改正法による改正後のもの)と比較すると、コロナ労働保護規則の目的(1条)、リスクアセスメントの実施義務(2条1項1文)、事業所内の衛生計画の策定・周知義務(2条1項1文・2項)、予防接種にかかる使用者の支援・説明・情報提供義務(3条)、連邦労働社会省による各種行政委員会に対する委託に関する規定(4条)は、いずれも従来のものが引き続き維持されている。

これに対して、改定版は、①複数人による空間の同時利用を事業上必要最小限とすること、②マスクの提供および③検査の実施を、それぞれ使用者の義務として規定していたのであるが、再改定版ではこれら①~③の措置を使用者に直接義務付ける形とはなっていない。すなわち、再改定版の2条3項においては、リスクアセスメントの際に、使用者は就労者の就労時における安全・健康を保障するために、業種の特性や地域の感染状況を考慮したうえで、上記①~③の措置が必要かどうかを検討しなければならない旨が規定されている。再改定版にかかる草案の理由書の表現を借りれば、これによって、上記①~③は、事業所内における感染防止のために使用者がとるべき基本的な措置の例示(beispielhaft)として位置付けられることとなった。かくして、再改定版においては、初版はもとより改定版に比しても、このような(保護)措置の選択に当たっての各事業所ごとの判断の余地が、よりいっそう拡大したということができよう。

なお、かかる再改定版の有効期限は2022年5月25日に設定されていた(5条)。

Ⅵ.失効後の状況

その後、ドイツでは感染者数は安定的に減少し、また感染しても軽症である例が大多数となったことから、コロナ労働保護規則については、有効期限の再延長は行われず、2022年5月26日をもって失効することになる。また、コロナ労働保護ルールについても、コロナ労働保護規則の有効期間中について適用があるものとされていたため、上記の日をもってやはり法的な位置付けを失うこととなった。しかし、再度感染が拡大する可能性もあること、また使用者は引き続き、でみた労働保護法上はリスクアセスメントとそれに基づく保護措置の実施義務を負っていることから、ドイツではコロナ労働保護規則の有効期限満了と日を同じくして、連邦労働社会省から「事業所内における感染防止(Betrieblicher Infektionsschutz)」[注29]という文書が公表されている。これは、連邦労働社会省が推奨する、事業所内における感染防止のために使用者がとるべき行動をQ&A方式で示したものである。そのなかでは、人同士の接触機会の低減措置、事業所内における検査や予防接種、マスク、ホームオフィスといった、コロナ労働保護規則の初版~再改定版において規定されていた措置のほとんどがとり上げられ、その導入に際しての留意点等が整理されるとともに、職場で感染者が出た場合の対応や就労者の予防接種にかかる情報の取り扱い等についても、使用者の行動指針が示されている。

Ⅶ.おわりに

以上、本稿では、コロナ労働保護規則の制定からその後の変遷の過程を追ってきた。同規則によるドイツにおける事業所内における感染防止をめぐる法政策は、当初、複数の保護措置を、使用者に対し法的に義務付ける形で始まった。これは感染力が強く、また感染時の死亡や重症化のリスクが高い未知のウイルスに対するドイツ連邦政府の強い危機感に支えられたものであったといえよう。また、その後の改正においても、検査や予防接種等の面では使用者の義務は、逐次拡充されてきた[注30]。しかし、他面において、これら使用者の義務のうち一部については、感染者数の減少やウイルス(特に変異株)についての研究の進展、ワクチン接種率の向上等を背景に、縮小ないし例外が認められるようになり、特に改定版以降は、保護措置の具体的内容についても、各事業所ごとの柔軟な決定が可能となってゆく。また、かかる決定の際に、行政機関等が定めたコロナ労働保護ルールや産業・業種別のガイドラインが参照されるべきとされていた点については、冒頭でみた日本における政策的対応との類似点も見出しうる。もっとも、このような柔軟な決定は、あくまで使用者に対し法的に義務付けられたリスクアセスメントの実施と衛生計画の策定の枠内において認められるものであり、かかる規制が再改定版に至るまで維持されてきたことは、日本と比較した場合におけるドイツ法の大きな特徴といえよう(でみた「事業所内における感染防止」のなかでも、連邦労働社会省としては、今後感染状況が再び悪化すれば、改めて必要な法的措置を講じるとの指摘がなされている)。

なお、ドイツにおける職場における感染防止をめぐる法政策は、職場における「3Gルール」[注31]の導入のように、部分的には感染症予防法によっても担われていたのであるが、本稿では十分に検討を行うことができなかった。この点についての検討は他日を期したい。

追記

なお、本稿脱稿後の2022年8月31日に、ドイツではコロナ労働保護規則の草案が再び公表された。これは、ドイツでも、オミクロン株BA.5がこれまでとは異なり夏の間も感染拡大をみせたこと、またこれから秋・冬を迎え人々が多くの時間を過ごす(企業施設を含む)屋内での感染拡大が予想されることを背景としたものである。そのため、かかる新たなコロナ労働保護規則(いわば再々改定版)の有効期限は、2022年10月1日~2023年4月7日に設定されている。また、内容面についてみると、大部分において再改定版(←)と符合しており、特に使用者が事業所内における感染防止のためにどのような措置を講じるかは、リスクアセスメントに基づく衛生計画に委ねられている(2条1項)。但し、再改定版とは異なり、再々改定版においては、使用者がリスクアセスメントに際し検討すべき事項として、新たに(手洗いや消毒液等による)手指の清潔の確保(同条2項2号)や、せき・くしゃみエチケット(Hust- und Niesetikette)の遵守(同3号)、室内の換気(4号)等が追加されている。また、リスクアセスメントにより、最低1.5メートルの対人間隔を確保できない場合、職務上肉体的接触を伴う場合または室内に同時に複数人が滞在する場合において、技術的・組織的な保護措置では就労者の保護にとって十分ではないことが明らかになった場合については、使用者のマスク提供義務(2条3項1文)と就労者のマスク着用義務(2条3項2文)も規定されており、マスクに関する規制が再改定版に比して強化されているといった特徴もある。

脚注

注1 諸外国におけるコロナ禍をめぐる労働政策については、天瀬光二「雇用・労働関係の諸外国の新型コロナ対策」季刊労働法271号(2020年)79頁、同 緊急コラム #028「コロナ禍の雇用維持政策を振り返る─諸外国の雇用維持スキームの対応」、「[特集②]新型コロナウイルス禍における労働立法政策」労働法律旬報1975+76号(2021年)所収の各論稿を参照。

注2 詳細については、山下昇「新型コロナウイルス感染拡大と雇用保険制度」季刊労働法271号(2020年)38頁、濱口桂一郎『新型コロナウイルスと労働政策の未来』(労働政策研究・研修機構、2020年)7頁以下を参照。

注3 内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室のHP「業種ごとの感染拡大予防ガイドライン一覧(PDF)新しいウィンドウ」から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注4 厚生労働省のHP「職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防及び健康管理に関する参考資料一覧新しいウィンドウ」から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注5 この点につき、北岡大介「新型コロナウイルス感染症と労働安全衛生法・労災保険法上の法的課題」季刊労働法271号(2020年)28頁以下も参照。また、日本企業の新型コロナウイルス感染防止対策の実態について検討を行った田上皓大 JILPTリサーチアイ第68回「企業の感染防止対策」によれば、感染防止対策を講じていない企業も少なからぬ割合存在したことが明らかとなっている。

注6 例えば、天瀬・前掲(注1)論文81頁以下を参照。

注7 連邦労働社会省のHP「BMAS - SARS-CoV-2-Arbeitsschutzstandard (PDF)neues Fenster」から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。かかるコロナ労働保護基準およびコロナ労働保護ルールについて紹介した文献として、川田知子「新型コロナウイルス禍における労働立法政策─ドイツにおける状況」労働法律旬報1975+76号(2021年)73-74頁がある。

注8 ドイツにおける労災保険機関については、山本陽大「第一章 ドイツ法」労働政策研究報告書No.205『労災補償保険制度の比較法的研究─ドイツ・フランス・アメリカ・イギリス法の現状からみた日本法の位置と課題』(労働政策研究・研修機構、2020年)9頁以下を参照。

注9 労働保護法の邦語訳については、山本陽大=井川志郎=植村新=榊原嘉明『現代ドイツ労働法令集』(労働政策研究・研修機構、2022年)169頁〔榊原嘉明翻訳担当〕を参照。

注10 「就労者」とは、労働者(Arbeitnehmer)のほか、職業訓練生や官吏等も含む概念である(労働保護法2条1項を参照)。

注11 感染症予防法5条によれば、脅威的な感染症がドイツ連邦共和国における複数の州を超えて急速に蔓延している場合等において、連邦議会は「全国的蔓延状態(epidemische Lage von nationaler Tragweite)」に関する決定を行うことができることとなっている。

注12 連邦労働社会省のHP「BMAS - Neue SARS-CoV-2 Arbeitsschutzregel gibt Beschäftigten, Unternehmen und Aufsicht mehr Sicherheitneues Fenster」から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注13 ドイツにおける労災保険制度は、民間企業に関しては産業・業種別に組織された9の職業協同組合(Berufsgenossenschaft)が運営機関となっており、かかるガイドラインはこれら各職業協同組合のHP上にて公表されている。一例として、金融保険業等協同組合(VBG)が策定したガイドラインについては、「VBG - Gefährdungsbeurteilung und Hygiene während der Coronavirus-Pandemieneues Fenster」から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注14 ここでの記述は、コロナ労働保護規則の初版にかかる草案の理由書「BMAS - Verordnung SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnung(Corona-ArbSchV) (PDF)neues Fenster」に依拠している〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注15 従って、使用者は、ホームオフィスにおける就労の申し出を行わない場合には、監督官庁からの求めに応じて、「差し迫った事業上の理由」の存在を裏付ける情報や資料を提供しなければならない。

注16 もっとも、ドイツにおいては、かかるコロナ労働保護規則とは別に、デジタル化(第四次産業革命)の文脈のなかで労働者に対し(私法上の意味での)テレワーク(モバイルワーク)の権利を認めようとする立法政策上の動きがみられる。詳細については、山本陽大『第四次産業革命と労働法政策─"労働4.0"をめぐるドイツ法の動向からみた日本法の課題』(労働政策研究・研修機構、2022年)84頁以下を参照。

注17 この点については、初版自体も2条2項1文において、「使用者は、事業に起因する人同士の接触機会を低減するための全ての技術的および組織的措置を講じなければならない。」として、TOP原則を確認的に規定している。

注18 ここでの記述は、第1次変更規則にかかる草案の理由書「BMAS - Referentenentwurf Erste Verordnung zur Änderung der SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnung (PDF)neues Fenster」に依拠している〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注19 第1次変更規則の草案理由書による。

注20 ここでの記述は、第2次変更規則にかかる草案の理由書「BMAS - Verordnung Zweite Verordnung zur Änderung der SARS-CoV-2 Arbeitsschutzverordnung (pdf)neues Fenster」に依拠している〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注21 ここでの記述は、第3次変更規則にかかる草案の理由書「BMAS - Referentenentwurf Dritte Verordnung zur Änderung der SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnung (pdf)neues Fenster」に依拠している〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注22 これに伴い、従来一定の就労者グループについて週2回の検査実施義務を定めていた5条2項は削除された。

注23 この点については、山本・前掲(注16) 書95-96頁を参照。

注24 ここでの記述は、改定版にかかる草案の理由書「BMAS - Referentenentwurf SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnung (Corona-ArbSchV) (pdf)neues Fenster」に依拠している〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注25 厚生労働省「ドイツにおける新型コロナウイルス感染症の状況~AHA+Lルールを基本とした新型コロナウイルス対策~(PDF)新しいウィンドウ」を参照〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注26 「BMAS - Referentenentwurf SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnung(Corona-ArbSchV) (pdf)neues Fenster」から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注27 「Deutscher Bundestag - Gesetzentwurf der Fraktionen SPD, BÜNDNIS 90/DIE GRÜNEN und FDP (pdf)neues Fenster」から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注28 ここでの記述は、再改定版にかかる草案の理由書「BMAS - Referentenentwurf SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnung(Corona-ArbSchV) (pdf)neues Fenster」に依拠している〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注29 「BMAS - Betrieblicher Infektionsschutz」から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注30 なお、これらコロナ労働保護規則に定められた措置(特にホームオフィス、検査、予防接種)のドイツにおける普及実態については、BMAS, Forschungsbericht 570/10: Arbeitssituation und Belastungsempfinden von abhängig Beschäftigten im von der Corona-Pandemie geprägten Jahr 2021 (pdf)neues Fensterを参照〔最終アクセス日:2022年9月4日〕。

注31 職場における「3Gルール」とは、ワクチン接種(geimpfte)、感染からの回復又は陰性検査結果(getestete)の証明ができる就労者についてのみ、出勤を可能とするものである。