内務省、永住資格の申請要件の厳格化など提案

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  • 国別労働トピック:2025年12月

内務省は11月、外国人流入者数の削減策の一環として、永住権の申請要件の厳格化に向けたパブリック・コンサルテーションを開始した。申請に要する国内での居住期間を従来の5年から原則10年に延長しつつ、国内での経済的・社会的貢献度に応じて期間の調整を行うプランで、高所得あるいは高い能力が認められている者は3年、公的サービス従事者は5年などに短縮する一方、社会保障給付の受給者は15~20年、不法入国の後に滞在資格を得た者等は最長30年に延長するとの方針を示している。

「貢献度」に応じて居住期間の要件を短縮・延長

現状では、およそ70の入国ルートのうち約40について、通常5年間の居住や英語能力、イギリスに関する知識等の条件を満たせば、永住権の申請が認められている。しかし、このところの外国人流入者数の急速な増加により、永住権の申請者にも劇的な増加が予想されることから、政府が5月に示した移民白書(注1)では、申請要件となる居住期間を5年から原則10年に延長したうえで、「獲得された永住権」(earned settlement)という新たなモデルの導入により、経済や社会への貢献度に応じて期間を短縮するとの方針が示された。

今回、コンサルテーション文書で公表された改正案(注2)では、より詳細な制度改正案の内容が明らかとなった。対象は、永住権を取得していない者全般(注3)とされ、申請者には、最低限の適格要件(犯罪歴や英語能力・イギリスに関する知識、所得等)を満たしていることを前提に、居住期間10年をベースとして各種条件に基づく短縮・延長(いずれも、最も期間の長いものを適用)を経た居住期間が、要件として課される(図表1図表2)。基準以上の所得あるいは高い能力が認められている場合で居住期間の要件は3年(7年短縮)、指定された公共サービス(公的医療等)に従事している場合で5年(5年短縮)となる一方、公的給付を受給している場合には、受給期間に応じて15年または20年(5年または10年の延長)、不法入国や6カ月以上のオーバーステイなどの後に滞在資格を得た場合には、最長30年(最長20年延長)とするものだ。

図表1:期間短縮の条件(最も短縮期間が長いものを適用)
統合 英語能力(ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)のC1(熟達した言語使用者)以上) 1年短縮
貢献 直近3年間の課税所得が年12万5140ポンド以上 7年短縮
直近3年間の課税所得が年5万270ポンド以上 5年短縮
指定の公共サービス職種で5年間以上の雇用 5年短縮
コミュニティでの労働(ボランティア等) 3~5年短縮
入国と居住 イギリス国民の親・パートナー・子どもとして条件を満たしている 5年短縮
国外からのイギリス人(British National Overseas)として入国許可を保有 5年短縮
グローバルタレントビザまたは革新的起業家の入国資格により3年以上滞在 7年短縮
特別な/立場の弱い者として期間短縮を適用 未定
図表2:期間延長の条件(最も加算期間が長いものを適用)
貢献 公的給付を12カ月未満受給している 5年延長
公的給付を12カ月以上受給している 10年延長
入国と居住 不法な入国 最長20年延長
ビジタービザによる入国 最長20年延長
6カ月以上のオーバーステイ 最長20年延長

介護労働者は申請まで居住期間15年が必要に

加えて、職業レベルが資格枠組みのレベル6(大卒相当)未満の者については、ベースとなる居住期間要件自体を15年とする案が示された。ここ数年で急速に増加した介護労働者を念頭に置いたもので、政府によれば、2022~24年の期間における保健介護ビザによる入国者は、主申請者と家族を合わせて61万6000人であったが、半数以上が家族で、多くの不正な事例が見られたとしている。政府は、今後5年間の永住権取得は160万人にのぼると試算しており、その多くを占める低賃金労働者と就労しない扶養家族による永住権取得が拡大すれば、財政に大きな負担になるとして、別途の居住期間要件を設定する必要性を主張している。

なお、前後して公表された難民受け入れ制度の改革案(注4)では、難民認定を受けた者についても、永住権の申請に要する居住期間を5年から20年に延長するとしている。

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