在宅勤務者の割合17.9%、コロナ禍前の3倍に
―国勢調査局推計
米国勢調査局は9月15日、在宅勤務を行っている人の割合がコロナ禍前の2019年の5.7%から2021年に17.9%へと増加したとする推計結果を発表した。コロンビア特別区(ワシントンD.C.)では就業者の約半数(48.3%)にのぼるが、一部の州では一桁の割合にとどまり、地域差も目立つ。また、民間調査機関の調査結果によると、在宅勤務の理由に「感染への懸念」をあげる人は減り、「在宅勤務を好むため」が増加している。
パンデミックのインパクト大きく
推計はアメリカン・コミュニティ・サーベイ(American Community Survey、ACS)に基づく。同調査は毎年、全国350万以上の世帯に対して実施し、住宅や教育、家計、労働などの生活環境をたずね、10年に1回の国勢調査を補っている。
ACSでは16歳以上の就業者について、調査前週の通常の通勤方法をたずねている。回答の選択肢には「自動車」や「バス」、「地下鉄」などとともに「在宅勤務(working from home)」がある。2021年に「在宅勤務」と答えた者の割合は17.9%(全米就業者数に換算すると推計2,760万人)で、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の5.7%(同約900万人)から3倍に増加した。国勢調査局では「仕事と通勤はアメリカ人の生活の中心だ。在宅勤務の採用の広がりはパンデミック期の決定的な特徴といえ、米国の通勤環境に強力なインパクトを与えた」と指摘している。
目立つ地域差
コロンビア特別区(ワシントンD.C.)では就業者の約半数(48.3%)が在宅勤務を選択している(図表1)。このほか、ワシントン州(24.2%)、メリーランド州(24.0%)、コロラド州(23.7%)、マサチューセッツ州(23.7%)、オレゴン州(22.7%)、バージニア州(22.3%)、ニュージャージー州(22.1%)、カリフォルニア州(21.4%)、ミネソタ州(20.9%)、アリゾナ州(20.7%)、ユタ州(20.0%)で2割を超えている。
州名 | 割合(%) | 州名 | 割合(%) | 州名 | 割合(%) |
アラバマ | 9.6 | ケンタッキー | 11.5 | ノースダコタ | 8.9 |
アラスカ | 10.3 | ルイジアナ | 8.4 | オハイオ | 14.8 |
アリゾナ | 20.7 | メイン | 17.7 | オクラホマ | 10.4 |
アーカンソー | 9.7 | メリーランド | 24.0 | オレゴン | 22.7 |
カリフォルニア | 21.4 | マサチューセッツ | 23.7 | ペンシルベニア | 18.7 |
コロラド | 23.7 | ミシガン | 16.4 | ロードアイランド | 17.5 |
コネチカット | 19.5 | ミネソタ | 20.9 | サウスカロライナ | 11.7 |
デラウエア | 18.6 | ミシシッピ | 6.3 | サウスダコタ | 11.1 |
コロンビア特別区 | 48.3 | ミズーリ | 14.7 | テネシー | 14.0 |
フロリダ | 16.6 | モンタナ | 14.0 | テキサス | 16.3 |
ジョージア | 18.2 | ネブラスカ | 12.8 | ユタ | 20.0 |
ハワイ | 10.7 | ネバダ | 13.0 | バーモント | 19.6 |
アイダホ | 13.3 | ニューハンプシャー | 19.3 | バージニア | 22.3 |
イリノイ | 19.3 | ニュージャージー | 22.1 | ワシントン(州) | 24.2 |
インディアナ | 11.9 | ニューメキシコ | 15.2 | ウェストバージニア | 10.2 |
アイオワ | 13.4 | ニューヨーク | 19.6 | ウィスコンシン | 14.8 |
カンザス | 13.8 | ノースカロライナ | 18.8 | ワイオミング | 8.9 |
出所:米国勢調査局より作成
100万人以上の人口を有する大都市圏のうち、情報通信産業が発展するカリフォルニア州の「サンフランシスコ・オークランド・バークレー」と「サンノゼ・サニーベイル・サンタクララ」では、約35%と高い水準を示している。一方、アーカンソー州(9.7%)、アラバマ州(9.6%)、ノースダコタ州(8.9%)、ワイオミング州(8.9%)、ルイジアナ州(8.4%)、ミシシッピ州(6.3%)では一桁にとどまっており、普及度の地域差が目立つ。
在宅勤務の理由の変化
民間調査会社のピュー・リサーチセンターが2月16日に発表した世論調査(約6,000人の米国労働者を対象)の結果によると、主に自宅でできる仕事に就いている人のうち、常に、あるいはほとんどの時間、在宅勤務している人の割合は、2022年1月時点で59%だった。感染拡大最中の2020年10月調査の71%から減少したものの、依然として約6割が在宅勤務を日常的に行っている。
在宅勤務の理由として最も多いのは「自宅での仕事を好むため」で76%を占め、「コロナウイルス感染への懸念」の42%を上回った(複数回答)(図表2)。2020年10月調査では、前者は60%、後者は57%と拮抗していた。また、「育児、子の世話」が45%から32%に減少したのに対し、「職場から離れた場所への転居」が9%から17%に増加しており、在宅勤務の理由は変わってきている。
図表2:在宅勤務の理由(複数回答) (単位:%)
出所:ピュー・リサーチセンター
参考資料
2022年9月 アメリカの記事一覧
- 失業保険特例措置の終了と雇用への影響を分析 ―連邦準備銀行
- ギグ・ワーカーに「最低報酬」を保障 ―シアトル市などで条例制定
- 2031年までに830万人の雇用が創出 ―伸びは鈍化、労働統計局予測
- 在宅勤務者の割合17.9%、コロナ禍前の3倍に ―国勢調査局推計
- 貨物鉄道労使、協約改定交渉で暫定合意 ―ストライキを直前回避
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