2031年までに830万人の雇用が創出
―伸びは鈍化、労働統計局予測
連邦労働省労働統計局(BLS)は9月8日、2021~31年の雇用予測(Employment Projections、EP)を発表した。この間の雇用創出規模は約830万人で年間0.5%の増加率となるが、2011~21年の年間1.0%増に比べて雇用の伸びは鈍化する。産業別に見ると、「レジャー・ホスピタリティ」や「ヘルスケア・社会扶助」が雇用の伸張を牽引する一方、小売業や製造業などの雇用は縮小する。職業別では医療・介護、サービス、専門技術関連の職種の雇用が増えるのに対し、レジ係や一般事務などの仕事は少なくなっていく。
雇用の増加率は年間平均0.5%に
BLSでは労働市場、マクロ経済、産業活動に関する各種統計データに基づき、全国の産業別、職業別の10年間の雇用予測を行っている。今回発表した2021年から2031年までの雇用予測によると、総雇用者数は2021年の1億5,813万4,700人から2031年に1億6,645万2,100人へと831万7,400人増加する。この間の年間増加率は平均0.5%(10年間の増加率は5.3%)で、前期(2011-2021年)の1.0%に比べて、雇用の伸びは鈍化する。BLSでは雇用が抑制される要因として、出生率の低下や移民の減少に伴う人口増加率の減速の影響を指摘している。
2031年までの雇用の増減を職業グループ別に見ると、「医療補助の職業」(17.8%増)、「コンピュータ・数理の職業」(15.4%増)、「パーソナルケアとサービスの職業」(14.1%増)などで増加、「事務・管理補助の職業」(4.5%減)、「生産の職業」(1.9%減)、「販売・営業の職業」(1.1%減)で減少する(表1)。
職業名 | 雇用増加数 (千人) |
雇用増加率 (%) |
全職業 | 8,317.4 | 5.3 |
管理の職業(Management occupations) | 883.9 | 7.6 |
ビジネス・財務の職業(Business and financial operations occupations) | 715.1 | 7.2 |
コンピュータ・数理の職業(Computer and mathematical occupations) | 764.8 | 15.4 |
建築・エンジニアリングの職業(Architecture and engineering occupations) | 91.3 | 3.6 |
自然科学、社会科学の職業(Life, physical, and social science occupations) | 98.7 | 6.9 |
コミュニティ・社会サービスの職業(Community and social service occupations) | 294.6 | 10.4 |
法務の職業(Legal occupations) | 131.0 | 9.6 |
教育、訓練、司書の職業(Educational instruction and library occupations) | 658.2 | 7.2 |
アート、デザイン、エンターテイメント、スポーツ、メディアの職業(Arts, design, entertainment, sports, and media occupations) | 184.6 | 6.6 |
医療・看護・技師の職業(Healthcare practitioners and technical occupations) | 795.3 | 8.6 |
医療補助の職業(Healthcare support occupations) | 1,253.8 | 17.8 |
保安警備の職業(Protective service occupations) | 72.6 | 2.1 |
飲食業の職業(Food preparation and serving related occupations) | 1,319.9 | 11.2 |
土地建物の清掃・メンテナンスの職業(Building and grounds cleaning and maintenance occupations) | 290.8 | 5.4 |
パーソナルケアとサービスの職業(Personal care and service occupations) | 544.8 | 14.1 |
販売・営業の職業(Sales and related occupations) | -164.5 | -1.1 |
事務・管理補助の職業(Office and administrative support occupations) | -880.8 | -4.5 |
農業、漁業、林業の職業(Farming, fishing, and forestry occupations) | 8.4 | 0.8 |
建設・採掘の職業(Construction and extraction occupations) | 252.9 | 3.6 |
設置、保守、修理の職業(Installation, maintenance, and repair occupations) | 304.0 | 5.0 |
生産の職業(Production occupations) | -163.6 | -1.9 |
運輸・運搬の職業(Transportation and material moving occupations) | 861.8 | 6.5 |
出所:連邦労働省労働統計局
「レジャー・ホスピタリティ」「ヘルスケア・社会扶助」の業界が雇用を牽引
年間平均増加率を産業別に見ると、「レジャー・ホスピタリティ」(1.3%増)、「ヘルスケア・社会扶助(Health care and social assistance)」(1.2%増)、「教育サービス」(1.2%増)などが高く、10年間の雇用の伸びを牽引する。
これに対し、「公益事業(Utilities)」(0.7%減)、「小売業」(0.2%減)、「製造業」(0.1%減)などではマイナスとなる。小売業や製造業での減少には、オンライン販売の浸透や競争の激化、技術革新の進展が背景にあるとみられる。
医療・介護、専門技術、サービスで目立つ雇用増
2031年までの10年間の雇用増加率が高い職業の上位5つは「診療看護師(nurse practitioners)」(45.7%増)、「風力タービンサービス技術者(Wind turbine service technicians)」(44.3%増)、「案内・ロビー・チケット係(Ushers, lobby attendants, and ticket takers)」(40.5%増)、「映写技師(Motion picture projectionists)」(40.3%増)、「レストラン調理人(Cooks, restaurant)」(36.6%増)となった。娯楽施設や飲食店での雇用については、コロナ禍での減少から回復する見込みを示している。
同期間の雇用創出数では、「在宅医療・介護助手(Home health and personal care aides)」(92万4,000人増)、「レストラン調理人(Cooks, restaurant)」(45万9,900人増)、「ソフトウェア開発者(Software developers)」(37万600人増)、「ファストフード店カウンター係(Fast food and counter workers)」(24万3,200人増)、「ゼネラル・オペレーション・マネージャー(General and operations managers)」(20万9,800人増)の順となる。医療・介護や専門技術を持つ職種のほか、雇用増加率の予測と同様にコロナ禍で落ち込んだサービス関連での増加が目立つ(表2)。
(雇用増加数の上位10職業) | ||
職業名 | 雇用増加数 (千人) |
|
在宅医療・介護助手(Home health and personal care aides) | 924.0 | |
レストラン調理人(Cooks, restaurant) | 459.9 | |
ソフトウェア開発者(Software developers) | 370.6 | |
ファストフード店カウンター係(Fast food and counter workers) | 243.2 | |
ゼネラル・オペレーション・マネージャー(General and operations managers) | 209.8 | |
ウエイター・ウエイトレス(Waiters and waitresses) | 197.0 | |
正看護師(Registered nurses) | 195.4 | |
貨物・在庫・資材運搬作業者(Laborers and freight, stock, and material movers, hand) | 168.4 | |
在庫・注文対応係員(Stockers and order fillers) | 157.9 | |
マーケット調査アナリスト・マーケットスペシャリスト(Market research analysts and marketing specialists) | 150.3 |
(雇用減少数の上位10職業) | |
職業名 | 雇用増加数 (千人) |
レジ係(Cashiers) | -335.7 |
秘書(法務・医療・役員除く)(Secretaries and administrative assistants, except legal, medical, and executive) | -207.6 |
一般事務員(Office clerks, general) | -130.8 |
カスタマーサービス担当者(Customer service representatives) | -105.3 |
役員秘書(Executive secretaries and executive administrative assistants) | -102.6 |
その他の組立て・加工作業者(Miscellaneous assemblers and fabricators) | -96.4 |
小売店現場管理者(First-line supervisors of retail sales workers) | -78.2 |
簿記・経理・監査事務員(Bookkeeping, accounting, and auditing clerks) | -77.2 |
ファストフード調理人(Cooks, fast food) | -69.1 |
出入荷・在庫係員(Shipping, receiving, and inventory clerks) | -57.1 |
出所:連邦労働省労働統計局
「一般事務」などの職業は減少
一方、雇用の減少率が高い職業は「ワープロ入力・タイピスト(Word processors and typists)」(38.2%減)、「駐車監視員(Parking Enforcement Workers)」(37.1%減)、「裁断工(Cutters and trimmers, hand)」(28.4%減)、「原子力発電所オペレーター(Nuclear power reactor operators)」(26.8%減)、「製本・仕上げ作業員(Print binding and finishing workers)」(24.8%減)」などだった。
また、減少数の多い職業は「レジ係(Cashiers)」(33万5,700人減)、「秘書(法務・医療・役員除く)(Secretaries and Administrative Assistants, Except Legal, Medical, and Executive)」(20万7,600人減)、「一般事務員(Office clerks, general)」(13万800人減)、「カスタマーサービス担当者(Customer service representatives)」(10万5,300人減)、「簿記・経理・監査事務員(Bookkeeping, accounting, and auditing clerks)」(7万7,200人減)などである。AI技術導入などの合理化が進み、販売や事務などの職業が減っていく傾向がうかがえる。
参考資料
- 連邦労働省労働統計局「雇用予測2021-2031」
2022年9月 アメリカの記事一覧
- 失業保険特例措置の終了と雇用への影響を分析 ―連邦準備銀行
- ギグ・ワーカーに「最低報酬」を保障 ―シアトル市などで条例制定
- 2031年までに830万人の雇用が創出 ―伸びは鈍化、労働統計局予測
- 在宅勤務者の割合17.9%、コロナ禍前の3倍に ―国勢調査局推計
- 貨物鉄道労使、協約改定交渉で暫定合意 ―ストライキを直前回避
関連情報
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