(香港特別行政区)2002年度公務員給与の減額決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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政府行政会議は2002年5月22日、630億ドルの財政赤字を縮小し、2006~07会計年度までに財政均衡を達成する努力の一環として、10月1日を期して18万人の公務員の給与を1.58%から4.42%の範囲で減額することを決定した。これにより政府の歳出は31億ドル節約されることになるが、リョン財務長官が3月の処女財政演説(本誌2002年7月号I参照)で示した4.75%の減額目標には達しないことになり、この目標は公務員の自主退職条件の見直し、政府資産の民間売却等の他の方策でさらに算段されることになる。

香港では公務員給与の決定システム全体の見直しが提言されているが(本誌2002年3月号I参照)、今回の減額は毎年の民間企業の賃金動向調査に基づいて決定する従来の方式を踏襲したもので、減額幅は高級公務員が4.42%、中級公務員が1.64%、下級公務員が1.58%となる。この結果、例えば公務員のトップに位置するドナルド・ツァン政務官の月収22万7450ドルは1万50ドルの減額、月収4万7590ドルの中級公務員は780ドルの減額、月収8320ドルの下級公務員は130ドルの減額となる。

公務員給与の減額は、5年前のアジア経済危機以後の厳しい経済状況とそれが政府の財政に加えた圧迫、さらには民間企業の厳しい賃金状況を踏まえ、諸政党並びに世論の支持を概ね得ている。だが、実際に香港で公務員給与が減額されるのは1936年以来のこととなり、コモン・ローの下では、使用者は雇用者の契約条件をその同意がある場合にのみ変更できることを考慮して、公務員としてなされる給与減額は、立法会の立法措置を通して実施されることになった。政府はまた、2000年以前に雇用された公務員の契約条項には一方的な給与の削減を規定する条項がなく、このような状況で立法措置によらないで給与を減額すると、深刻な法的争いが生じる可能性があり、このような事態を避けるためにも立法措置を導入するのだとしている。そして政府は、7月上旬に法案を立法会で可決したいとしている。

これに対して、職工会連盟(CTU)や公務員関係労組は、政府が公務員との協議なしに立法措置でもって減額すると決定したことは、公務員側の反対する権利を奪う等の理由で当初から難色を示し、政府との交渉を強く求め、また組合の一部は、政府が立法措置を強行するなら、それを阻止するために裁判所の差止め命令を求めると主張した。

その後5月26日、公務員会議が調査委員会を設けて独立した調停を行うことを提案し、一部組合もこの提案を支持して、調停が行われることを条件に、裁判所の差止めを求めることを控えると表明した。しかしこれに対して、ジョセフ・ウォン公務員関係長官は5月27日、今回の公務員給与の減額は従来の方針に基づき、民間企業の賃金動向を参照する確立された方法で決定されたのだから、調査委員会による独立の調停を認める必要はないと、調停の提案を拒否し、組合側との対決色が強まった。

その後6月11日、董建華長官が正式に調査委員会設立の提案を拒否し、組合側は態度をさらに硬化させ、公務員の給与を保証する香港基本法に反するとして法廷闘争で政府と争うと表明した。そして給与減額法案が立法会を通過する直前の7月7日に、公務員2万人以上を動員した減額法案反対の大会を開催すると表明している。

ちなみに有力政党では、親中派で財界代表の自由党、労働者に基盤をもつ親中派の民建連(DAB)は法案に賛成し、リベラル派の民主党だけが反対している。

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