「買断工齢」訴訟、労働者側が勝訴するも、会社側は従わず

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年9月

内蒙古モンゴル族自治区の阿栄旗石油公司の27名の退職労働者が、会社側の非合法的な「買断工齢」制度に関する民事訴訟で勝訴したが、実際の職場復帰は果たされないままになっており、退職労働者は、司法当局と政府の強い指導を希望している。

「買断工齢」とは、退職時に、一時金を受け取るのと引き換えに、その後の社会主義国家の退職労働者として給与されることになっている多くの権利を放棄する制度である。ただし、「単位」内での住宅の所有・使用権まで放棄するかどうかは、一定ではない。「工齢売断」ともいう。

問題の経緯

阿栄旗石油公司は、元は、地方政府直属の公営企業だった。1998年6月、経営権が、中国石油公司天然ガス集団公司に移行した。

その後、阿栄県の個人営業のガソリンスタンドの増加により、阿栄旗石油公司は赤字経営に陥った。1998年1月、上部公司の呼盟石油総公司は、阿栄旗石油公司を経営改革のテストケースにすることを決定し、労働者の総会を開催し、経営改革計画を発表した。

今回の訴訟の代表者の呉桂雲の供述によると、この時の経営者側の発表は、経営改善のために、労働者が、1人当り1万元の出資金を拠出し、そのまま継続して「単位」に残ることを選択するか、拠出金を支払わずに、「買断工齢」制度を選択し、2万元を受領するかを7日以内に回答せよというものだった。

家庭の経済状況が苦しかった27名の労働者は、「買断工齢」を選択し、経営者側と『買断工齢協議書』に署名し2万元を受領し、退職した。

問題の発生と訴訟の内容

しかし、継続して就労する労働者の中に、出資金を全く拠出していない、または数千元のみ拠出したものがいた。このため、この労働者達は、自治区、県政府に、実情を訴えた。

政府の強い行政指導の下、1998年10月13日、呼盟石油総公司は、「買断工齢」を選択した労働者が、2万元を返還した場合には、従来通り勤務できることを発表した。しかし、1998年10月末、本社の自治区石油総公司は、呼盟石油総公司の決定を否定し、復職を拒否した。このため、27名の退職労働者は、阿栄県労働仲裁委員会に仲裁を申請した。

1999年6月24日、同労働仲裁委員会は、経営者側は、僅か7日間しか労働者に検討期間を与えなかったこと、全体のリストラ計画を労働者側に提示していなかったこと、県労働行政部門に対する報告がなかったことなどを理由に、労働者が、退職一時金の2万元を返還した場合、経営者側は、労働者の復職を認めるよう決定した。

阿栄旗石油公司は、同労働仲裁委員会の仲裁内容を不服とし、阿栄県人民裁判所に提訴した。しかし、同人民裁判所は、会社側の訴えを棄却した。このため、2000年8月1日、呼盟中級裁判所に控訴したが、同中級裁判所は、一審の判決を支持した。

勝訴した労働者側は、県人民裁判所に対し、判決の執行申請を提出したが、会社側が抵抗し、復職できない状態が続いた。

地方人民代表大会の指導と現況

この問題は、内蒙古モンゴル族自治区の各地方人民代表大会(地方議会にあたる)の特別の関心を集めた。各人民代表大会は、監督議案とし、強い政治的指導を実施した。

しかし、会社側は、依然として抵抗し続け、2002年3月末現在、当該労働者の職場復職は、まだ果たされていない。

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