JILPTリサーチアイ 第57回
在宅勤務によるワークライフバランスの新しい形

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経済社会と労働部門 副主任研究員 高見 具広

2021年3月17日(水曜)掲載

新型コロナウイルス感染症は、人々の仕事や生活に大きな影響を与え続けている。働き方の最大の変化のひとつは、様々な調査結果が示すように、在宅勤務(テレワーク)の拡大であろう。とりわけ、1回目の緊急事態宣言発令(2020年4月)を機として、在宅勤務を初めて経験した者も少なくなかった。「出社勤務から在宅勤務へ」という働き方の変化は、働く者の生活スタイルにも大きく影響したと推測される。本レポートでは、JILPTが実施した12月調査(第3回調査)データをもとに、労働時間・生活時間の変化を見ることから、在宅勤務がワークライフバランス(以下、WLB)に与えた影響を考えてみたい。具体的には、新型コロナ感染拡大の前(=「コロナ前の日常」)から、第一波に伴う2020年4~5月の緊急事態宣言発令期間(=「緊急時」)を経て、同年11~12月(=「ウィズコロナ時代の新しい日常」)にかけて、働く者の仕事・生活時間がどう変化したのか、とりわけ、在宅勤務を行う者の生活スタイルがどう変わったのかを検討する[注1]。なお、本レポートで扱う労働時間・生活時間は、調査票に回答された自己申告による時間であり、労働時間は週当たりの実労働時間、家事・育児時間、余暇時間は、平日1日当たりの時間である。

在宅勤務の経験と労働時間の変化

JILPT12月調査をもとにすると、2020年12月時点で、雇用者の約3割が在宅勤務を経験し、そのうち約7割が感染拡大第一波の時期(3~5月)に初めて在宅勤務を行っていた。ただ、在宅勤務経験者のうち、12月時点で在宅勤務を行っていない割合は約4割にのぼっており、定着には課題を残している[注2]

では、在宅勤務によって仕事・生活はどう変わったのか。コロナ問題発生前にフルタイムで働いていた者を対象に、2020年の緊急事態宣言発令期間と同年12月調査時点の数値をもとに、変化を読んでみたい[注3]。なお、以下では、時間の「変化」に検討の中心を置くため、各時点の労働時間数等の平均値については、付表(在宅勤務の有無別に記載)を参照してほしい。

まずは労働時間の変化を見る。コロナ禍を機に在宅勤務となったことで労働時間はどう変化したのか。図1は、5月第2週、11月最終週において、コロナ前と比べて労働時間に平均何時間の増減があったかを示すグラフである。特に、感染拡大第一波の時期(2020年3~5月)に初めて在宅勤務を経験した人について、在宅勤務の経験・継続に伴う労働時間の変化を観察することに目的がある。図では、3~5月に初めて在宅勤務を経験した者のうち、同年12月時点まで在宅勤務を継続している者を「在宅勤務経験・継続」、経験したものの12月調査時点で在宅勤務を行っていない者を「在宅勤務経験・非継続」とし、この間に在宅勤務の経験がない者を「在宅勤務経験なし」(=比較対象)として検討している[注4]

図1 週実労働時間のコロナ前からの変化(平均変化時間数)─在宅勤務の経験・継続別─

図1 グラフ

図1をみると、緊急事態宣言期間中である5月第2週は、在宅勤務の有無にかかわらず、労働時間が大きく減少している。「在宅勤務経験なし」の層で労働時間が大きく落ち込んだことは、特に驚くことではない。在宅勤務が行われなかった中には、飲食店等、在宅勤務に馴染みにくく、外出自粛・移動自粛の要請下で営業時間短縮を迫られた対人サービスの仕事が多く含まれるからである。それよりも、在宅勤務に切り替わった人においても労働時間の減少が見られたことが、注目に値しよう。緊急事態宣言下の在宅勤務で労働時間が減少した背景には、在宅勤務に伴って残業が減った場合のほか、感染対策を最優先にした緊急避難的な在宅勤務で、実労働時間が極端に低下した場合があったものと推測される[注5]

特に、「在宅勤務経験・非継続」の者で、緊急事態宣言中(5月第2週)の労働時間減少幅が大きかったが、11月最終週の数字を見ると、大きく回復してコロナ前の水準近くに戻ったことがわかる。この層においては、緊急事態宣言下の在宅勤務適用に伴い業務遂行水準が大幅に低下したものの(自宅待機に近い状態等)、宣言解除後に出社勤務に戻った場合が少なからず含まれると推測される。「働く場所の揺り戻し」とともに、「時間の長さの揺り戻し」も大きく、元の働き方に戻った様子が示されていよう。

一方、12月時点で在宅勤務を継続している者においては、コロナ前と比べたときの労働時間減少が続いていた。背景には様々な要因が考えられ、評価が難しい[注6]。在宅勤務で業務遂行の水準をいかに維持するかは、効果的な在宅勤務の推進において大事なポイントであるが、以下、本稿では、働き方の変化が生活時間にもたらした影響に検討の中心を置きたい。

在宅勤務と家事・育児時間の変化

在宅勤務の経験・継続によって、生活時間はどう変化したのか。まず、家事・育児時間の変化を検討する。有配偶者に対象を限定し、a.緊急事態宣言期間中、b.2020年12月時点において、コロナ前と比べて家事・育児時間が増えた人の割合を、当該時点の在宅勤務の実施有無別に検討する(表1[注7]

表1 コロナ前と比べて家事・育児時間が増加した人の割合
─各時点における在宅勤務の実施有無別─(有配偶者)N=1026

表1

注:在宅勤務あり/なしは、当該時点で在宅勤務を行っていたか否かで識別した。

男女計で見ると、緊急事態宣言期間中、12月時点とも、在宅勤務を行っている人は、行っていない人よりも、コロナ前と比べて家事・育児時間が増加したとする割合が高い。特に、男性の傾向を見ると、12月時点で在宅勤務を行っている場合、家事・育児時間がコロナ前と比べて増加した人の割合は29.5%であり、1時間以上増加した人の割合も15.2%にのぼる。在宅勤務を行っている男性で、家事・育児時間が顕著に増加した傾向がうかがえる[注8]

コロナ禍を機に新たに在宅勤務を行った人で、家事・育児時間の増加が見られたのだろうか。図2は、図1と同様に、2020年3~5月に初めて在宅勤務を経験した人に着目し、在宅勤務を経験しなかった人を比較対象として、有配偶者の家事・育児時間の変化の推移を読むものである。

図を見ると、2020年の緊急事態宣言下では、(在宅勤務有無にかかわらず)全体的に家事・育児時間が増加したことがわかる。これは、5月時点では学校休校が続いており、子育て世帯の育児負担が大きかった等の事情が考えられる。同時に、在宅勤務を行った人で特に増加幅が大きかったことも確認される。

12月時点を見ると、全体的に、その時間数は、緊急事態宣言期間中に比べると減少し、コロナ前の水準(通常時)に近づいている[注9]。ただ、在宅勤務を継続している人では、コロナ前と比べたときの家事・育児時間の増加傾向が引き続き見て取れる。一方、在宅勤務を経験したものの継続していない(出社勤務に戻った)人では、家事・育児時間についてもコロナ前の水準に戻った様子がうかがえる。

図2 家事・育児時間のコロナ前からの変化(平均変化時間数)
─在宅勤務の経験・継続別─[有配偶者]

図2 グラフ

図3 家事・育児時間のコロナ前からの変化(平均変化時間数)
─在宅勤務の経験・継続別─[男性・有配偶者]

図3 グラフ

同様の推移グラフを、男性だけを対象に見てみたい。図3を見ると、有配偶男性において、コロナ下で在宅勤務となり、その働き方を継続している者で、コロナ前と比べた家事・育児時間の増加が続いていた。在宅勤務が「ニューノーマル」となった男性は、生活時間、生活スタイルも新しい形に移り変わった可能性がうかがえる。興味深いのは、12月時点まで在宅勤務を継続している男性では、4~5月の緊急事態宣言期間中に家事・育児時間が顕著に増加している一方、在宅勤務を継続していない男性では、4~5月における家事・育児時間の増加傾向が弱いことである。これは、コロナ禍を機に新しいワークライフバランスの形を見つけた男性ほど、ウィズコロナの新しい日常において在宅勤務を継続する一面があった可能性をうかがわせるものである[注10]

在宅勤務と余暇時間の変化

次に、在宅勤務による余暇時間の変化を検討する。「余暇時間」は、JILPT調査から把握できる自由時間と睡眠時間を合計したものとした。まず、前記の表1と同様、各時点の在宅勤務実施有無によって、余暇時間が増加した人の割合がどう異なるのかを確認する(表2)。余暇時間についても、家事・育児時間と同様、緊急事態宣言期間中、12月時点ともに、在宅勤務を行っている者ほど増加したとする割合が大きい。男女別に見ても同じ傾向が確認される。

表2 コロナ前と比べて余暇時間が増加した人の割合
─各時点における在宅勤務の実施有無別─ N=1951

表2

注:在宅勤務あり/なしは、当該時点で在宅勤務を行っていたか否かで識別した。

コロナ下で在宅勤務を初めて経験した者において余暇時間がどう変化したのかを見ると(図4)、緊急事態宣言期間中においては、在宅勤務を経験した者で、大きく増加したことがわかる。12月時点までの推移を見ると、在宅勤務を続けている者では、コロナ前と比べてやや増加した状態を保っているものの、在宅勤務を継続しなかった者では、コロナ前の水準に戻っていることが確認される。在宅勤務の経験と継続が、余暇時間の確保につながったことをうかがわせる結果である。

図4 余暇時間のコロナ前からの変化(平均変化時間数)
─在宅勤務の経験・継続別─

図4 グラフ

在宅勤務のWLB効果─働く者自身の評価から

以上、コロナ下における在宅勤務の経験や継続によって、労働時間・生活時間が大きく変化した様子がうかがえた。では、「新しい日常」において在宅勤務を継続することは、働く者の生活の質を高めているだろうか。この点、調査からは、在宅勤務によってWLB実現度が上昇したとする割合が40%を超えており[注11]、在宅勤務という働き方(の変化)が、働く者から好ましい評価を得ている様子がうかがえる。以下では、生活の質に関して、12月時点の生活満足度に着目し、在宅勤務実施との関係を見てみたい。

生活満足度に関する集計を行った表3を見ると、12月時点で在宅勤務を行っている者は、行っていない者に比べて「満足」の割合が大きく、「不満」の割合が小さいことがわかる。在宅勤務実施者の中で属性による違いを見ると、男女による差はないが、配偶者がいる者で満足度がやや高い傾向があり、在宅勤務がWLBに寄与していることがうかがえる。居住地域とは関係が見られなかった[注12]。また、労働時間変化が生活満足度に関係することがうかがえた。つまり、在宅勤務を行っている者のうち、コロナ前と比べて労働時間が増加した者は、「満足」の割合が小さいなど、生活満足度が相対的に低い傾向にあった[注13]

以上、ウィズコロナの日常において在宅勤務を続けている者は、全体的にみると、生活満足度が高い傾向にあった。在宅勤務を行っていることが、生活の質向上に寄与していることがうかがえる。なお、生活満足度には様々な要素(収入水準や変化等)が関わること、また、在宅勤務を行っている者の生活水準が元々高い可能性もあることから、後ほど回帰分析を行うことで検討したい。

表3 2020年12月時点の生活満足度
─12月時点の在宅勤務実施有無・属性別─ N=1951

表3

注:生活満足度について、調査票は5件法であるが、ここでは、「かなり満足」「やや満足」を「満足」、「やや不満」「かなり不満」を「不満」として集計した。

在宅勤務が生活時間変化に与える影響

先に、在宅勤務継続者では、緊急事態宣言(1回目)解除から半年以上が経過した2020年12月時点においても、家事・育児時間、余暇時間が、コロナ前と比べて増加していることを確認した。これは、働く場所が自宅に変わったことの効果と言えるのだろうか。あるいは、労働時間が減少(図1参照)したことの効果だろうか。回帰分析をもって検討したい。分析方法は、家事・育児時間の増加有無、余暇時間の増加有無を被説明変数とした二項ロジスティック回帰分析とする。説明変数は、年齢、性別、配偶者有無、18歳未満の子ども有無、最終学歴、雇用形態、職種、コロナ前の個人年収、居住地域、コロナ前からの労働時間の変化、12月時点の在宅勤務実施有無である[注14]

結果を見る(表4)。家事・育児時間については、(1)有配偶者(男女計)の結果、(2)有配偶者(男性)の結果を示し、(3)余暇時間については全サンプル(無配偶含む・男女計)の結果を示している。まず、有配偶者(男女計)の家事・育児時間の分析結果(1)を見ると、18歳未満の子どものいる子育て世帯で増加傾向が見られた(係数がプラスの値)ほか、「在宅勤務実施ダミー」の係数が、統計的に有意な正の値をとっている。つまり、12月時点で在宅勤務を行っている者ほど、家事・育児時間が増加していることがわかる。これは労働時間の変化傾向をコントロールした結果であることから、働く場所の変化によって生活時間に変化があったものと考えられた[注15]。なお、男性だけにサンプルを限定した分析結果(2)でも、在宅勤務の効果に関して同様の結果が得られている。つまり、12月時点で在宅勤務を行っている(続けている)男性においては、コロナ前と比べて家事・育児時間が増えたことが確認された。

余暇時間に関する結果(3)を見ると、労働時間減少が余暇時間増加をもたらしているほか、「在宅勤務実施ダミー」の係数が有意な正の値を示しており、在宅勤務を行っている者で余暇時間の増加確率が高いという結果が得られた。このように、在宅勤務(の継続)によって、コロナ禍を機に生活時間の変化が起こった様子が確認できた。

表4 家事・育児時間、余暇時間増加の規定要因(二項ロジスティック回帰分析)

表4

**1%水準で有意,*5%水準で有意,+10%水準で有意。標準誤差については、頑健な標準誤差を表示している。

在宅勤務が生活の質に与える影響

では、在宅勤務を行っていることは、働く者の生活の質向上につながっているだろうか。先に基礎集計を示したが、生活満足度の規定要因について回帰分析を行うことで考察を進める。生活満足度には多様な要素が関係すると考えられることから、そうした要因を一定としても、12月時点で在宅勤務を行っている(続けている)ことが生活満足度を高めるのかが検証課題である[注16]。分析方法は、12月時点の生活満足度(点数)を被説明変数とした順序ロジスティック回帰分析とする。説明変数は、年齢、性別、配偶者の有無、18歳未満の子ども有無、最終学歴、雇用形態、職種、コロナ前の個人年収、居住地域、コロナ前と比べた収入変化、11月末の実労働時間、コロナ前と比べた労働時間変化、在宅勤務の実施有無である。あわせて、説明変数としてコロナ前の生活満足度を投入していることから、コロナ前の生活満足度の水準が同じ人の中で、どういう人において生活満足度が高いのかを読むことができる。

表5 生活満足度の規定要因(順序ロジスティック回帰分析)

表5

**1%水準で有意,*5%水準で有意,+10%水準で有意。標準誤差については、頑健な標準誤差を表示している。

結果を見よう(表5)。モデル1の結果を読むと、収入水準、収入変化が生活満足度に大きく影響するほか、「在宅勤務実施ダミー」の係数が正で統計的に有意であり、12月時点で在宅勤務を行っていることが生活満足度を高めるという結果が得られている。労働時間の長さおよび増減傾向をコントロールしていることから、働く場所が自宅に変わったこと自体が、働く者の生活の質向上に寄与している可能性がうかがえた。

ただ、注意が必要な点も確認された。モデル2で、在宅勤務実施と労働時間の増加・減少の交差項を追加的に投入したところ、「在宅勤務実施・労働時間増加」の交差項の係数が有意な負の値をとった。これは表3の集計結果と同様の傾向であり、主効果と合わせて読むならば、在宅勤務によって労働時間が長くなる場合、生活の質へのポジティブな効果が消滅してしまうという結果が示されていよう。

おわりに

本レポートでは、コロナ下における在宅勤務の経験や継続によって、生活時間、生活の質がどのように変化したのかを考察した。結果をまとめたい。まず、コロナ下で平均的に労働時間が減少する中、在宅勤務を行った者でも労働時間が減少していた。加えて、12月時点で在宅勤務を続けている者では、家事・育児時間、余暇時間が、コロナ前と比べて増加する傾向が続いていた。家事・育児時間の増加は、男性においても観測され、「在宅勤務によるワークライフバランスの新しい形」が垣間見られた[注17]。一方、在宅勤務を経験したものの、継続しなかった者においては、生活時間の変化は一時的なものにとどまっていた。

あわせて、生活の質に関して分析したところ、在宅勤務を続けていることは、生活満足度を高めており、働く者の生活の質向上に寄与していた。仕事・生活を、その時々の都合に合わせて柔軟に組み立てやすいという在宅勤務のメリットがうかがえる結果となった。ただ、注意が必要な場合もある。在宅勤務によって労働時間が増加した場合には、生活の質が高まらないという結果が得られたからである。在宅勤務は、長時間労働になるリスクや、仕事・生活の境界が曖昧になりやすいといった課題も指摘されるところであり[注18]、会社あるいは働く者自身が、仕事に関わる時間を適切にコントロールすることが、WLBを保つ上で重要であるとあらためて示唆された。

参考文献

付表 各時点の週実労働時間、家事・育児時間、余暇時間(平均値 単位:時間)
─各時点における在宅勤務の実施有無別─

付表

注1:週実労働時間については、緊急事態宣言期間中は「5月第2週(5月7~13日)」の実労働時間、12月調査時点は「11月最終週(11月24~30日)」の実労働時間の平均値とした。

注2:家事・育児時間、余暇時間については、平日1日当たりの各時間である。また、「家事・育児時間」は、調査から把握できる家事時間と育児時間の合計であり、「余暇時間」は、自由時間と睡眠時間の合計とした。

注3:緊急事態宣言期間中と、2020年12月時点で、在宅勤務実施者が異なることから、両時点の在宅勤務実施有無にかかわるNは一致しない。

脚注

注1 調査設計や集計は、1月18日公表の記者発表『新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査(JILPT第3回)【12月調査】(一次集計)結果』(PDF:1.7MB)を参照のこと。調査の個票データは、渡邊木綿子氏より提供を受けた。また、山本雄三氏(九州国際大学准教授、JILPT新型コロナウイルスによる雇用・就業への影響等に関する調査 分析PT委員)、渡邊木綿子氏、周燕飛氏、高橋康二氏、石井華絵氏(以上、JILPT)より、有益な助言を得た。記して感謝を申し上げたい。なお、本稿の主張は筆者個人のものであり、所属機関を代表するものではない。

注2 上記の記者発表資料(1月18日)を参照。なお、本レポートの主題ではないので詳細な結果は割愛するが、在宅勤務経験者のうち、誰が12月時点で在宅勤務を継続しているのかを分析したところ、業種(情報通信業+)、居住地域(首都圏+)、年収水準(700万円以上+)による差が見られた。また、回帰分析でそうした属性をコントロールしても、コロナ感染拡大以前(2020年2月以前)に在宅勤務を経験していた層に比べて、感染拡大以降(「2020年3~5月」「2020年6月以降」)に初めて在宅勤務を経験した層では、12月時点での在宅勤務継続確率が有意に低かった。さらに、在宅勤務の経験自体は、職種や企業規模と強い関係があることもあらためて確認された。在宅勤務の実施・定着に関わる上記の傾向は、JILPT8月調査(第2回調査)を分析した高見・山本(2021)と整合するものである。

注3 コロナ前(通常時)の週実労働時間が35時間以上の者を「コロナ前フルタイム」として扱っている。以降、本レポートでは、コロナ前フルタイムの者を対象に検討を行う。また、分析対象は、パネル調査の継続回答者とし、かつ、4月1日以降、同じ勤め先での雇用が続いている者で、業種、職種等の基本属性に欠損値がないサンプルとしている。変数作成方法については、高見・山本(2021)を参照。また、本レポートの分析では、「2020年2月以前」に在宅勤務を初めて経験したという回答も、(厳密には識別できないが)4~5月の緊急事態宣言下で在宅勤務を行ったものとして扱っている。

注4 本調査が把握する在宅勤務経験者の中には、2020年6月以降に初めて在宅勤務を経験した者も若干含まれるが、推移を見る分析(図1,2,3,4)の対象からは除外している。また、新型コロナ感染拡大以前(2月以前)から在宅勤務の経験がある者も、在宅勤務の新規経験による変化を読むには適さないことから、図1,2,3,4の分析対象から除外している。上記サンプルは、他の表では分析対象に含めている。

注5 この点、高見・山本(2021)において、仕事内容が在宅勤務に適合的かどうかによって、緊急事態宣言下の在宅勤務におけるフルタイム維持確率が変わることをもって検討した。

注6 業務の生産性・効率性が向上することで残業時間の短縮になっているとしたら、仕事・生活の両面で肯定的に評価できるが、JILPT12月調査の結果を見る限り、在宅勤務者において生産性・効率性の主観的評価が低い場合も少なくなく、詳細に見たところ、労働時間が減少した者でその割合が高かった。在宅勤務者の労働時間減少を肯定的に捉えてよいかは、更なる議論が求められる。

注7 JILPT調査では、平日1日あたりの家事時間(炊事、洗濯と掃除をこなす時間)、育児時間(子どもの世話(衣食の世話、遊び相手、勉強の面倒見など)にあてられる時間)を、コロナ前、緊急事態宣言期間中、現在(12月調査時点)の3時点で尋ねている。回答は、それぞれ30分もしくは1時間のカテゴリーであるが(「0分」~「5時間以上」)、ここでは、「30分未満」=15分、「30分~1時間未満」=45分というようにカテゴリーの中央値を当てることで連続変数とみなした。そして、家事時間と育児時間を足し合わせることで「家事・育児時間」とした。

注8 この傾向は、内閣府が2020年12月に行った調査(第2回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査)でも確認されている。

注9 この点は、周(2021)を参照。5月時点で見られた女性における家事時間、育児時間の増加は、12月調査時点では概ね解消されている(コロナ前の水準に戻っている)ことも同レポートで指摘されている。

注10 平均値で見た変化量自体は大きくないこと、また、サンプルサイズ(N)が限られることから、大きな変化を読み取るには一定の留保が必要ではある。

注11 前述の記者発表資料(1月18日)を参照。

注12 在宅勤務によって通勤時間を削減できることが、働く者の生活の質を高める可能性があるが、本調査では通勤時間を尋ねていないため、直接の検証は叶わない。代わりに、居住地域によって平均的な通勤時間が異なることから、首都圏居住者で在宅勤務のWLB効果が特に高いのか等を見ることで、間接的に検討した。結果、データの限り、居住地域による差はうかがえなかった。

注13 労働時間減少の場合も「不満」が多い傾向が確認されるが、これは、回帰分析(表5)で検討したところ、収入減少との相関が強く、労働時間の減少に伴って収入(残業代等)が減少したことが生活満足度の引き下げにつながったものと推測された。

注14 最終学歴、職種、コロナ前の個人年収は、社会経済的地位を示す指標として投入している。

注15 通勤時間が削減された効果も考えられるが、先に述べたように、厳密な検証は叶わない。この点、居住地域による在宅勤務効果(交差項の効果)を検討したが、確認できなかった。限界はあるが、通勤時間削減等による時間配分の変化(のみ)ではなく、仕事の場を自宅に移したことで、時間的やりくりが容易になった、意識変化があった等によるものと解釈した。

注16 例えば、属性および社会経済的地位に関わる指標(学歴・職業)、収入水準、コロナ下での収入低下等が関係すると考えられることから、回帰分析で指標を統制した。コロナ下において、非正規雇用であること、家計が赤字であることによる生活満足度への負の影響は、高橋(2021)を参照。

注17 本レポートでは、家事・育児時間数の水準や、その男女差については議論しておらず、男性の家事分担がどのような状態にあるのかといった点については、更なる検討が必要である。

注18 厚生労働省雇用環境・均等局に設置された「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」の同名報告書(2020年12月)では、テレワークの労働時間管理に関し、「集中して作業に従事した結果、長時間労働になる可能性があり、過度な長時間労働にならないように留意することが重要である」と指摘される。