調査シリーズNo.239
子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査2022
第1回(2011年)~第6回(2022年)子育て世帯全国調査の基礎的集計

2024年3月26日

概要

研究の目的

子育て世帯の生活状況と保護者の就業実態などを調査し、今後の保護者の仕事に対する支援策のあり方等を検討する。

研究の方法

2011年から継続しているアンケート調査の第6回目を2022年に実施し、過去のデータと合わせて記述的な分析を行った。

第6回調査の概要

・調査対象の母集団:
末子が18歳未満のふたり親世帯またはひとり親世帯(全国) 
※いずれも核家族世帯に限らず、親族との同居世帯を含む
・調査方法:
訪問留置き回収法
・標本数:
ふたり親世帯2,000 ひとり親世帯2,000
・標本抽出方法:
住民基本台帳から層化二段無作為抽出
・調査期間:
2022年11月~12月(原則として11月1日時点の状況を調査)
・有効回収数(回収率):
ふたり親世帯1,163(58.2%) ひとり親世帯879(44%)
※抽出時の世帯区分に対する有効回収数

主な事実発見

(1) 世帯の基礎情報

過去10年間で全体的に世帯の小規模化が進行している。特に母子世帯は離婚が原因で「ひとり親化」 し、追加の子どもが生まれにくい傾向にあるため、一人っ子の割合が高い。一方で、ふたり親世帯では、伝統的な「二人っ子+夫婦」の家族構成はあまり変わっていないが、親との同居率は低下している。また、両タイプの世帯において、母親の年齢が上昇している。さらに、ふたり親世帯の女性の高学歴化が進んでいる一方で、母子世帯では高学歴化の傾向がほとんど見られず、結果として世帯間の学歴格差が拡大している。

図表1 母子世帯とふたり親世帯の母親の学歴

ふたり親世帯の母親の高学歴化が進んでいる一方で、母子世帯の母親では高学歴化の傾向がほとんど見られず、結果として世帯間の学歴格差が拡大している

(2) 母親の職業生活

この10年間で母子世帯とふたり親世帯ともに「母親・女性の就労」に対する肯定的な意見が増加している。母親の望ましい働き方については、完全にフルタイム勤務を理想とするような極端な変化はないが、子育てをしながら何らかの形で就業を継続することを望む傾向が強まっている。ただし、子どもが3歳以降の理想は多様化してきており、母親が理想とする「仕事と家庭の両立」のあり方も一枚岩ではない。

母子世帯の母親は、有業率が高く正規雇用としての労働参加が多い。一方でふたり親世帯の母親では、有業率が相対的に低く非正規雇用やパートタイムの割合が高い。母子世帯の母親の個人年収は極端に低いわけではない。ただし、職域には若干違いが出ており、母子世帯の母親は比較的サービス職寄りで、ふたり親世帯の母親では専門・技術職寄りとなっている。

これまでの本人の職業キャリアについては、出産や育児での一時的な退職後の再就職が一般的であったが、特に母子世帯ではこの傾向が減少し、一貫して働き続けるパターンが増えている。一方、ふたり親世帯では学卒後の仕事を長期的に継続するパターンが多い。

(3) 世帯の家計と生活状況

その世帯年収と等価可処分所得はふたり親世帯よりも低く、母子世帯の家計は困難な状況にある。現在も母子世帯の半数が相対的貧困に陥り、経済的な余裕がほとんどない状況にあるが、長期的には貧困や貯蓄状況の改善傾向が見られる。しかし、ふたり親世帯の世帯年収の増加により、世帯間の経済格差は拡大している。この母子世帯における経済的困窮は、子どもの教育や余暇活動への支出能力の差にも影響を及ぼし、子どもの体験格差を拡大させている。さらに母子世帯の母親の主観的幸福度は低い。

図表2 母子世帯とふたり親世帯の等価可処分所得

ふたり親世帯の等価可処分所得はこの10年間で大きく増加しており、世帯間の経済的な格差は縮小するどころかむしろ拡大している

(4) 母子世帯に対する政策的支援のニーズ

過去10年間にわたり、両立支援プログラムの認知度と利用が増加しているが、特に子の看護休暇や短時間勤務制度の利用はまだ限定的である。特に母子世帯を対象とする能力開発系の制度の認知度が低い。第6回(2022年)調査では、家計負担を直接軽減する給付型支援への強いニーズが明らかになった。さらに、母子世帯では職業訓練への金銭的支援が、ふたり親世帯では子育て支援が重要視されている。職場における支援の充足度も向上しており、特に母子世帯では就業時間への配慮と復職支援が、ふたり親世帯では託児施設の利用が増加している。しかし、就業時間の調整が必要と感じている人が依然として多く、今後はさらなる働き方改革が求められている。

政策への貢献

シングルマザーの経済的自立に関する基礎的な資料としての活用が期待される。

本文

分割版

研究の区分

プロジェクト研究「多様な人材と活躍に関する研究」
サブテーマ「多様な人材と活躍に関する研究」

研究期間

令和4~5年度

執筆担当者

田上 皓大
労働政策研究・研修機構 研究員
夏 天
労働政策研究・研修機構 多様な人材部門 アシスタント・フェロー

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