調査シリーズNo.192
子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査2018(第5回子育て世帯全国調査)

2019年10月17日

概要

研究の目的

本調査は、2011年、2012年、2014年と2016年に行われた第1回、第2回、第3回と第4回「子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査」(略称:子育て世帯全国調査)に続く第5回調査である。

子育て世帯の生活状況と保護者の就業実態などを調査し、今後の保護者の仕事に対する支援策のあり方等を検討するための基礎資料を収集することが主な目的である。

調査の概要

  1. 調査対象の母集団 :末子が18歳未満のふたり親世帯またはひとり親世帯(全国)
    (※いずれも核家族世帯に限らず、親族との同居世帯を含む)
  2. 調査方法:訪問留置き回収法
  3. 標本数:ふたり親世帯2,000 ひとり親世帯2,000
  4. 標本抽出方法:住民基本台帳から層化二段無作為抽出
  5. 調査期間:2018年11月~12月(原則として11月1日時点の状況を調査)
  6. 有効回収数:1,974票
    (内訳)ふたり親世帯1,267票、母子世帯653票、父子世帯54票、その他世帯0票
  7. 有効回収率(世帯計):49.4%

主な事実発見

■母子世帯の貧困率は5割超え、13%が「ディープ・プア」世帯

可処分所得が厚生労働省公表の貧困線を下回っている世帯の割合は、母子世帯では51.4%、父子世帯では22.9%、ふたり親世帯では5.9%となっている。可処分所得が貧困線の50%を満たない「ディープ・プア(Deep Poor)」世帯の割合は、母子世帯が13.3%、父子世帯が8.6%、ふたり親世帯が0.5%である(図表1)。

図表1 相対的貧困率

図表1 画像

注:不詳を除いた集計値である。貧困線は厚生労働省の公表値(2012と2015年名目値)通り、単身者世帯では122万円、2人世帯では173万円、3人世帯では211万円、4人世帯では約244万円である。

■子どもが小さい家庭よりも、子どもが大きい家庭の母子世帯は困窮している

母子世帯の場合、子どもの年齢が高い世帯ほど、経済的困窮度が高い。暮らし向きが「大変苦しい」と回答した母子世帯の割合は、末子が「0~5歳」層では21.4%、「6~11歳」層では23.0%、「12~14歳」層では27.9%、「15~17歳」層では29.4%となっており、末子の年齢上昇とともに、経済的困窮を感じている世帯の割合が上昇傾向にある。

■父親の就業時間が60時間超えの場合、母親のフルタイム就業率が顕著に低下

ふたり親世帯の場合、夫の週あたり就業時間が60時間を超えると、妻のフルタイム(FT)就業率が顕著に低下する。夫の週あたり就業時間が60時間以下であれば、妻のFT就業率がおおむね4割前後で推移しているのに対して、60時間を超えると、妻のFT就業率が3割に急落している(図表2)。

図表2 夫の就業時間数別、妻のFT就業率と無職率(%)

図表1 画像

■離別父親の44%は子どもとの交流が「全くない」

過去の1年間、非同居父親と子どもとの面会や会話等交流の頻度は、「年に数回以上」の割合は、母子世帯の離別父親が37.3%、ふたり親世帯の単身赴任父親が93.8%である。離別父親の44.2%は子どもとの交流が「全くない」状態であり、そのうち離婚5年以上の離別父親の半数以上(51.6%)が子どもと交流なしの状態である。

■母子世帯では娘よりも息子は学業不振が深刻

小中高校生の第1子が学校での学業成績が「(まあまあ)良好」(4点以上)である割合は、母子世帯33.0%、父子世帯36.7%、ふたり親世帯46.0%である。ふたり親世帯の場合、4点以上の良い学業成績を挙げている子どもの割合は、小学生も中高生も、男子(息子)も女子(娘)も同じく4~5割程度となっている。一方、母子世帯の場合、娘は息子より学業成績が明らかに良い。その差は小学生の段階では5ポイントほどであるが、中高生の段階になると18ポイントまでに広がっている。

■「金銭的支援」の拡充を望むふたり親世帯が増加し、全体の8割弱に

育児と就業を両立する上で、拡充してほしい公的支援についてたずねると、「児童手当の増額」、「乳幼児医療費助成期間の延長」、「職業訓練を受ける際の金銭的援助」、「年少扶養控除の復活」といった「金銭的援助」の拡充を望む保護者がもっとも多く、そのいずれかを選択した保護者の割合は、母子世帯79.2%、父子世帯76.9%、ふたり親世帯78.6%となっている。ふたり親世帯は「金銭的支援」を選ぶ割合が、前回調査より5ポイントも上昇し、母子世帯と並ぶ8割前後の水準となっている。

政策的インプリケーション

  1. 「ディープ・プア」世帯や、子どもが大きい家庭の母子世帯に対する支援をさらに検討する必要がある。
  2. 父親の就業時間は60時間超えや不規則的である場合、母親の無職率が上昇する。女性の就業を促進するためには、父親の働き方も変える必要がある。

政策への貢献

子育て世帯への就業・経済支援のあり方において、本調査研究の結果が貴重な基礎資料となる。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

プロジェクト研究「働き方改革の中の労働者と企業の行動戦略に関する研究」
サブテーマ「育児・介護期の就業とセーフティーネットに関する研究」

研究期間

平成29年度~令和3年度

執筆担当者

周 燕飛
働き方と雇用環境部門 主任研究員

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.116)。

関連の研究成果

入手方法等

入手方法

刊行物のご注文方法をご確認ください。

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。