調査シリーズ No.109
子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査2012 (第2回子育て世帯全国調査)
概要
研究の目的
本調査は、子どものいる世帯の生活状況やその保護者(主に母親)の仕事の実態や要望などを調査し、今後のひとり親の仕事に対する支援策のあり方を検討するための基礎資料として実施されたものである。
研究の方法
- 調査対象の母集団 :末子が18歳未満のふたり親世帯またはひとり親世帯(全国)(※いずれも核家族世帯に限らず、親族との同居世帯を含む)
- 調査方法:訪問留置き回収法
- 標本数:ふたり親世帯2,000 ひとり親世帯2,000
- 標本抽出方法:住民基本台帳から層化二段無作為抽出
- 調査期間:2012年11月~12月(原則として11月1日時点の状況を調査)
- 有効回収数:ふたり親世帯 1,508票、母子世帯621票、父子世帯65票、その他世帯7票
- 有効回収率(世帯計):55.0%
主な事実発見
拡充してほしい公的支援の1位は「金銭的援助」、2位は「保育サービス」(図表1)
金銭的援助を望む保護者が全体の67.7%~75.2%に達し、「児童(子ども)手当の増額」、「年少扶養控除の復活」、「乳幼児医療費助成期間の延長」を期待する保護者がとくに多い。保育サービスの充実を望む保護者も全体の26.2%~50.3%を占めており、「休日保育、延長保育等サービスの多様化」、「病時・病後児保育の充実」および「保育所の増設・受入児童数の増加」を求める意見が多かった。一方、育児休業制度の法定期間の延長を望む保護者は全体の1割未満となっている。
短時間勤務制度の利用が母子世帯の間に広まっていない(図表2)
導入が義務化されている3歳未満の子どもを育てている有業母親の短時間勤務の利用率を見ると、ふたり親世帯では16.8%(正社員は26.1%)となっているが、母子世帯では4.2%と低い水準である。
専門資格を持つ母親が全体の6割に上るが、活用されたことのない資格も多い
何らかの職業資格を持つ母親は全体の6割に上る。保有資格が仕事に役に立った割合をみると、看護師(91.4%)、歯科衛生士(85.7%)、保育士・幼稚園教諭(64.8%)、介護福祉士(73.8%)、准看護師(59.5%)など医療・福祉・介護系資格の活用率は高いことが分かる。一方、簿記資格(37.7%)、語学関連資格(31.7%)、医療事務(42.7%)等語学・事務系資格の活用率が相対的に低い。
「専業主婦型」祖母を持つ場合、母親の産後の職場復帰時期が遅い
(母方)祖母の就業スタイルが母親の仕事選好に関係している。母親に自身が3歳、6歳、12歳だった頃の祖母の働き方をたずねた上、その3時点の就業有無から祖母の就業スタイルを「就業継続型」(3時点とも就業)、「専業主婦型」(3時点とも無業)および「中間型」に分けてみた。「継続就業型」祖母を持つ母親が第1子出産後に1年以内に職場復帰した者の割合が34.4%で、「専業主婦型」祖母を持つ母親に比べてその割合が約2倍である。
年収よりも家事・育児の分担が「良い父親」の評価へとつながる
稼ぐ力よりも家事・育児の分担割合が父親としての評価上重要な加点要素である。家事・育児の半分以上を分担している父親に対して、母親の評価が「良い父親」(67.7%)または「まあまあ良い父親」(20.3%)となっている。一方、家事・育児を全く分担していない父親に対して、母親の評価が「普通」(41.4%)または「あまり良くない父親」(32.3%)となっている。「良い父親」の評価をもらっている父親の割合は、(父親の)年収が600万円以上層(34.4%)と600万円未満層(32.3%)でほとんど同じである。
図表1 拡充してほしい公的支援(%、3つまでの複数回答)
図表2 短時間勤務制度の利用率(%)
注:(1)利用率=(制度を利用しているまたは利用していた有業者数)/有業者総数
(2)有業母親を対象とした集計結果である。末子3歳未満をグループAとして、末子3歳~6歳未満をグループBとして、集計対象者数は、母子世帯(A)24世帯、母子世帯(B)64世帯、ふたり親世帯(A)137世帯、ふたり親世帯(B)146世帯、ふたり親世帯(A)・正社員69世帯、ふたり親世帯(B)・正社員37世帯である。
政策的含意
- 子育て世帯のニーズを見据えて、経済的支援と保育サービスをより充実させる必要がある。
- 母親(とくにシングルマザー)の短時間勤務制度の利用率が低い。制度利用期間中の収入減少分に対する補助金の導入が利用率の向上につながると考えられる。
本文
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研究の区分
プロジェクト研究「企業の雇用システム・人事戦略と雇用ルールの整備等を通じた雇用の質の向上、ディーセント・ワークの実現についての調査研究」
サブテーマ「子育て中の女性の就業に関する調査研究」
研究期間
平成24年度
調査実施担当者
- 周 燕飛
- 労働政策研究・研修機構 副主任研究員
データ・アーカイブ
本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.85.2)。
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