調査シリーズNo.229
新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査
[ JILPTコロナ連続パネル個人調査(第1~7回)]結果

2023年8月2日

概要

研究の目的

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大やその予防措置が、仕事や生活に及ぼす影響について把握した。

研究の方法

インターネット調査会社のモニター登録会員のうち、2020年4月1日時点で国内に居住する20歳以上64歳以下の「民間企業で働く雇用者」及び「フリーランスで働く者」を対象に、2020年5月下旬~2022年3月上旬迄、全7回の連続パネルWeb調査を実施した(図表1)。

図表1 新型コロナウイルス感染症の新規感染者数等と連続パネルWeb調査の実査時期の関係

画像:図表1画像クリックで拡大表示

調査内容は、新型コロナウイルス感染症の拡大やその予防措置が、雇用や仕事(事業活動)、収入等に及ぼしている影響や実労働時間・月収水準の変化、また、政府や自治体の要請に基づき勤務先で行われた対応や、在宅勤務・テレワークの実施状況、収入不安や失業・失職不安等、連続パネル調査としての定点観測項目を中心に、例えば在宅勤務・テレワークの減少理由や仕事の性質等との関連、生活水準・価値観の変化、職場環境の変化や今後の就労意欲等、時々の調査項目を適宜追加する形で構成した(図表2)。

図表2 連続パネルWeb調査の概要と回答者構成

画像:図表2画像クリックで拡大表示

主な事実発見

  • 新型コロナウイルス感染症の拡大やその予防措置に伴う影響は、この問題の惹起時点で就いていた仕事の状況(勤め先の業種や就業形態等)により大きく左右された。「JILPT第1回(A)調査」で、2020年4月1日時点の「民間企業の雇用者」を対象に、新型コロナウイルス感染症に関連した自身の雇用や収入にかかわる影響について尋ねた結果をみると、何らかの影響が「大いに/ある程度、あった」割合は、「飲食店、宿泊業」で約4人に3人にのぼり、「サービス業」や「教育、学習支援業」でも半数を超えた(図表3)。具体的な内容として(複数回答)、「勤務日数や労働時間の減少」や「収入の減少」を挙げた割合は、「飲食店、宿泊業」や「教育、学習支援業」「サービス業」「運輸業」等で高く、(製造業等に影響が集中したリーマン・ショック時等と異なり)内需依存型産業に広く影響が及んだ様子が見て取れる。

    図表3 勤め先の主な業種別にみた自身の雇用や収入にかかわる影響

    画像:図表3画像クリックで拡大表示

  • 「JILPT第2回(B)調査」では、勤め先からの「休業手当」の支払状況についても尋ねた。「民間企業の雇用者」のうち、新型コロナウイルス感染症の発生以降、自身は働きたい・働ける状態なのに、(通常月なら勤務予定だった日に)勤め先から自宅待機(一切、働けない「休業」)を命じられた経験が「ある」場合に、「休業日(休業時間数)の半分以上が、支払われた」との回答は、全体では半数を超えたものの、「非正社員」の同割合は「正社員」を20ポイント以上、下回り、「(これまでのところ)全く支払われていない」が約1/3となった。
  • 「JILPT第1回(A)調査」~「JILPT第7回(G)調査」の「全調査の継続回答者」で就業形態・状況の変化についてみると、2020年4月1日時点の「民間企業の雇用者」あるいは「フリーランス」のうち、コロナ禍が始まってから約2年後の2022年2月末時点で3~4%が働いておらず、うち2.8%は求職活動もしていないという結果になった。非労働力化した割合は、男女とも「60歳代」や「女性」で相対的に高く、コロナ禍が高齢者の「完全引退」や「女性不況(She-cession)」等に繋がったことが分かる。
  • 「JILPT第1回(A)調査」で「民間企業の雇用者」を対象に、政府や自治体の要請に基づきあるいは自主的に、勤めている会社(事業所・工場・店舗)で行われた就労面での取組状況をみると、約3割が「在宅勤務・テレワークの実施」を挙げ、これに「出張の中止・制限」や「WEB 会議、TV 会議の活用」「出勤日数の削減(例:交替で週2日勤務等)」「時差出勤」「営業時間の短縮」「休業(閉鎖、閉店等)や休業日数の拡大」「有給休暇の取得促進」等が続いた。何らかの取り組みが行われたとする割合は、勤め先の従業員規模が大きいほど高まる傾向が見られ、中でも「1,000 人以上」では、「在宅勤務・テレワークの実施」割合が半数を超え、「WEB 会議、TV 会議の活用」や「出張の中止・制限」も4割以上となった。
  • 「全調査の継続回答者」のうち、勤め先で行われた就労面での取組として、いずれの調査時点も「在宅勤務・テレワークの実施」を挙げた場合にその日数変化についてみると、「在宅勤務・テレワーク」を行った割合は、2020年4~5月の全国的な「緊急事態宣言」の発出を受け、「5月の第2週」に掛けて急上昇し、約4割が「5日(以上)」と回答するなど急速に拡がったが、「緊急事態宣言」が全面的に解除された「5月の最終週」以降、早々に揺り戻したことが分かる。その後も「緊急事態宣言」期間に合わせた上下動を繰返しながら推移したものの、全面解除下でも一貫して、新型コロナウイルス感染症発生前の通常月の2倍を上回る実施率を維持している。

図表4 勤め先で継続して「在宅勤務・テレワーク」が行われた場合の日数変化

画像:図表4画像クリックで拡大表示

政策への貢献

衆議院予算委員会、参議院予算委員会、労働経済白書、厚生労働白書、過労死等防止対策白書、男女共同参画白書、厚生労働省雇用政策研究会等に引用

本文

研究の区分

新型コロナウイルスによる雇用・就業への影響等に関する調査、分析PT

研究期間

令和2~3年度

執筆担当者

渡邊 木綿子
労働政策研究・研修機構 調査部(統計解析担当)次長
多和田 知実
労働政策研究・研修機構 調査部(統計解析担当)調査員

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.157)。

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