フランスにおける父親の育児休業制度
―なぜ、高い就業率と特殊合計出生率が両立したのか

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法政大学 講師 水野 圭子

1. フランスにおける高い就業率と特殊合計出生率

フランスは、高い特殊合計出生率と女性の就業率を誇っている。一人の女性が一生の間に何人の子供を産むかというという特殊合計出生率の値は、2010年2.01を超え、世界の注目を集めた。近年においても、2016年は1.93、2017年は1.88という比較的高い特殊合計出生率を維持しつつ、高い女性就業率を維持している。16歳から64歳の女性の就業率は、2005年から2015年の10年間に3.2ポイント上昇した後、ほぼ横ばいを維持しており、2016年には67.6%(男性の就業率は+0.3ポイント75.5%)である。このような現象がドイツ(例えば、2015年の特殊出生率は1.50)や北欧(スウェーデンは1.85)ではなく、フランスにだけなぜ生じたのか、少子化対策やワークライフバランスの観点から研究対象とされ、その答えとして、家族政策における高額の子育て支援給付が注目されてきた。

しかし、高い女性の就業率を維持しつつ出生率を上げるには、それだけでは不十分である。子育て支援給付と、賃金から就労に伴う保育費用・交通費等の支出を引いた額を比較し、就労しないという選択が行われるからである。

高い就業率と出生率の理由は、文化的・歴史的に女性が尊重されてきたからという誤解もある。だが、ナポレオン法典は、「夫が妻の財産を管理」し、「就労するには夫の許可が必要」として妻の権利を抑制し、1965年7月13日法が「妻は、夫の同意がなくとも職業に従事する権利を有する」とするまで、自由に就労できなかったのである。同様に、移民による出生率を上げているという指摘も適切ではない。統計によれば、移民ではないフランス国民の出生率も高いのである(注1)。では、なぜ、出生率と就労率が高いのであろうか。

2. 20世紀初頭からの少子高齢化に対する取り組みと高くない就業率

(1)第一次世界大戦と少子化

実は、フランスは、世界で最初に急激な少子高齢化を迎えた国である。第一次世界大戦による戦死者とインフルエンザの大流行により、人口が約300万人激減し、1914年には2.34であった合計特殊出生率が、1916年には1.23にまで急落したのである。フランス政府は、人口減少が兵力減少をもたらし国防力が低下し、労働力の減少により農業生産力の低下、経済力の低下が懸念される国家的危機と認識した。きわめて早い時期に、少子化対策に取り組まざる得なかったのである。出産奨励政策として、1920年7月に中絶禁止を法制化し、1921年からは、第3子に対し13歳まで年額90フランの児童手当を創設した。また、託児所を設け、幼稚園を増設し、子育て給付と保育制度の拡充という少子化対策を行ったのである。結果として、一時的に出生率は回復するも再び下がり、第二次世界大戦後のベビーブームまで低迷した。ラロックプランに基づき、家族給付である妊娠手当(allocationprénatale)、家族手当(allocation familiale)、出産手当(allocation cucheman) が行われるも、1947年に特殊合計出生率が3.037をピークとして、継続的に下がり続けた。このような状況において、フランスは20世紀初頭から少子化対策、家族政策が重要課題となったのである。

(2)20世紀初頭の高くない就業率

フランスにおいて、従来から出生率と就業率が高かったわけではない。1931年において、農業従事者を除き、労働人口に対する女性労働者の割合は、33.8%である(注2)。日本は、1930年において、25.6%であるが、現在高い就業率であるオランダも1930年に25.9%、デンマークは1930年35.3%、スウェーデンも1930年に35.3%であった。この時点において、日本と北欧、フランスの就業率に著しい差はないのである。

その後、フランスでは、民法が改正され、1965年7月13日法によって夫の承諾なしに就労が可能となった。また、大きな社会運動であった1968年の五月革命や、1970年代の女性解放運動を通じて女性の社会進出が進んだ。さらに、1975年7月11日法により、協議離婚が可能となった。このような社会の変革の中でフランスの女性就業率は、1970年に増加し、50%となり、1975年に59.3%になる。一方、1970年に2.48であった特殊合計出生率は、1975年に1.927に低下する。

(3)出生率と就業率の関係

エマニュエル・トッドは女性の社会進出と出生率には密接な関係があることを指摘している。女性が高い教育を受け社会進出が進むと、仕事と子育ての二者択一を迫られた結果、女性は就労を選択し、出生率がさらに低下する。しかし、社会における女性の地位が向上するにつれて、出生率は回復することが指摘されている(注3)。また、男女共同参画に関する専門調査会の報告書においても、女性労働力率と合計特殊出生率との関係について、「OECD加盟24カ国(1人当たりGDP1万ドル以上)においては、2000年の女性労働力率と合計特殊出生率は、労働力率の高い国ほど出生率が高いという正の相関関係にある。しかし、1970年には、労働力率の高い国ほど出生率が低いという負の相関関係にあり、80年代半ばを境に関係が変化している。」「この20年間に女性労働力率を上昇させながら出生率も回復してきている国の社会環境には、男性を含めた働き方の見直しや保育所整備等の両立支援、固定的性別役割分担意識の解消や男性の家事・育児参加、雇用機会の均等などが進んでいるという特徴がある。」と指摘する(注4)

フランスの高い出生率と就業率の理由は、他国に先駆けて、上記のような両立支援に取り組み始め、それを現在も継続しているからではないだろうか。事実、フランスでは、70年代から子育て支援給付と保育施設の整備という旧来の少子化対策を一歩進めた。「専業主婦と子どもと働き手を家族モデル」として支援するという政策形態から、家族政策も「両親が共に働く家族とその子どもという家族モデル」に対する支援と政策転換が行われたのである。このような政策転換を、一朝一夕に行うことはできない。子育て支援給付においては、家族政策における各種家族給付制度の改革、社会保障給付制度の創設と改正、女性の子育てと就労の両立支援として、公立保育園をはじめとする各種形態の保育園の創設や、保育ママといった保育支援政策、育児休業制度やその間の所得補償、復職に際する職業訓練、労働時間の短縮による男性の家事・育児参加といった多岐にわたる労働政策・家族政策の見直しが必要となったのである。

筆者が行ったフランスの複数の専門家へのインタビューにおいても、「フランスが高い女性の就業率と出生率を回復した理由は、一つではなく、長年にわたる、特に70年以降の労働政策、家族政策によるものである」との異口同音の回答であった。現在、フランスでは、「女性に仕事か子育てかの二者択一を迫らない、多様な選択を可能とする」ということを家族政策の基本としている。では、具体的に、女性の就業率の向上と出生率の回復に至るまでにどのような家族政策・労働政策がとられてきたのであろうか。育児休業という視点から考察することとしたい。

3. 「女性に仕事か子育てかの二者択一を迫らない、多様な選択を可能」とする「両親が共に働く家族と子どもという家族モデル」に対応する家族政策

(1)子育て支援給付

1972年までに、子供2人以上を養育する家庭に収入の上限規制を課さず、共働きの家庭に対しても支給される家族手当(Allocations familiales)、収入の上限規制があり、子を養育している両親の一方が不就労の場合、子供の数、年齢に応じた給付が行われる単一賃金手当(allocation de salaire unique)、単身世帯も対象として家族構成に即した住宅家賃を一部補助する住宅手当(l'allocatio logement)が整備された。

さらに、1973年の改正によって、所得制限付きの家族に対する給付が相次いて創設された。家庭で1人しか収入がなく、所得が一定以下の場合に給付される単一収入補足手当(majoration de salaire unique)、3歳以下の子を保育園に預けるか、自宅でベビーシッターを雇い保育を行う場合に、一定の条件付きで給付される保育費用手当(allocations pour frais degarde)また、所得が一定の水準に達していない場合に、新学期の学用品購入費用を補助する手当(allocationspour frais de rentrée scolaire)である。1976年には、一人親と子どもで構成される家庭を支援する単親手当(l’allocation parent isolé (API))が創設され、1977年には、保育ママの認可制度の導入、1978年には、単一賃金手当・専業主婦母親手当・保育費手当が第3子に対して給付される家族補足手当(lecomplément familial)として統合された。育児給付だけではなく保育費手当、保育ママなど女性の就労支援における子育て支援費用が拡充したのである。

(2)1977年7月12日法による育児休暇の創設

家族政策が「両親が共に働く家族とその子どもという家族モデル」に変更されていく動きの中で、1977年7月12日法により創設された親教育休暇(uncongé parental d'éducation)は女性を対象とした制度であった。出産休暇(un congé materné)に引き続き、育児親養育休暇の申請が認められていたが、その要件は、①200名以上を常時雇用する企業において、②1年以上勤務する女性労働者が出産休暇(または養子受け入れ休暇)終了の1カ月前までに申請すること(養子の場合は3歳未満)であった。出産休暇と合わせて2年まで休暇の延長が可能であったが、取得者として母親を想定し、父親は、同上の要件を満たしたうえで、母親が取得できない場合のみ申請が認められた。注目すべき点は、育児親教育休暇は、労働契約の中断となると条文に明記されたことである。その目的は、休暇取得に際して労働契約の終了や変更を防止し、女性の就労継続をはかり、休暇後、同様の仕事に同じ賃金で復職することにあった(旧労働法典L.122-28-1)。このため、復職の時、技術革新などで必要であれば、教育訓練を受けることができると規定していた(L.122-28-4)。

フランスの育児休暇政策は当初から、女性が出産・育児によって労働市場から撤退させないために育休取得後の復帰を考慮した規定を定めていた。これらの規定によって、育児休暇取得は、あくまで、労働契約の中断で、解雇事由とならず、休暇を取得した時と同職種に同賃金で復職し、休暇取得時に獲得していた労働条件は変更されないのである。技術革新や業務上の改革などが生じても、使用者には教育訓練が義務付けられており、休暇による能力不足を最小限に抑えることができ、能力不足を配置転換や降格、解雇事由とすることもできない。この視点は、日本の育児休業制度に対する示唆となろう。その一方で、女性の取得が原則で、取得方法に多様性はなく、短時間勤務による早期復職規定もなかった。1976年には1.829であった特殊合計出生率は1979年には、1.855に、1980年には1.945と回復するも、再度下落し1983年には1.784となる。

(3)親教育休暇の多様化と所得補償

こういった問題の解決のため、休暇の取得方法を多様化し、所得補償を行い、男性の休暇取得を促進する制度改正が求められた。

①短時間労働による早期復職制度

育児休業は子育て支援としては重要であるが、長期のブランクにより復職が困難となるデメリットがある。1982年の3月26日のオルドナンスは、休暇期間短縮を選択し、短時間労働で復職する『労働時間の選択制度』を設け、短時間労働による復職を選択しても解雇できないとした。1984年に労働時間を50%に削減し就労を継続できるとし、1991年には最低週16時間労働から80%の間で選択可能とした。

②所得補償の創設と基準の緩和

親教育休暇が創設された当初は、所得補償の規定はなかったが、1985年1月4日法が、3人以上の子の養育責任を負う母親が育児親休暇を取得し就労を中断する場合、育児親休業手当給付(Allocation parentaleducation 略称APE)を創設し、保育を自ら行うことに対し給付を行うこととなった。さらに、1986年、要件を引き下げ、3歳までの給付を認め、親教育休暇の取得要件も緩和し、子供の出生か養子の受け入れの前10年間において2年間就労していれば給付可能とした。また、育児親教育休暇を実施する企業規模についても、1984年に、100人以上の企業において適用されるとし、100人以下の企業であっても、一定の条件を満たす場合は、育児親休暇の取得を拒否できないとした。さらに、取得期間を延長し、出産休暇と合わせて3年間の取得が可能となった。

父親も育児休業を取得することは可能であったが、実際の取得者は、母親が圧倒的に多いという問題があった。女性の就業率は増加するも、家庭責任と育児の負担は女性にかかっており、男性の育児休暇取得をどう向上させるかは未解決であった。このためであろうか、1988年の特殊合計出生率は1.805、1989年は1.788、1990年は1.778と減少した。

(4)育児休業の普及に伴う問題

①所得補償の増加と就業率の低下

改善しない出生率の向上を目的として、1994年、親教育休暇を取得した場合、第3子からでなく第2子から給付を行うとし、さらに、自由選択親給付(Allocation parentale de libre Choix)をさだめ、第1子から保育学校(ecole matelnelle)の入学まで、所得制限なしに、最低賃金(SMIC)の半額を給付するとした。これは、親教育休暇制度と給付要件の緩和にもかかわらず、特殊合計出生率が低下したため、早い時期に女性労働者が第1子を出産するようとする意図であったと指摘されている。結果、1994年に1.663であった特殊合計出生率は、95年に1.713、96年1.733、97年1.726と上昇し、99年には1.874まで回復する。しかし、給付の拡充が、女性の就業率に対し問題を生じさせた。特に就業経験が浅く専門性の低い分野で働く若年女性労働者が、親教育休暇就労後も給付が続くため、復職しない傾向が顕著となった。1994年から1997年にかけて、女性就業率は約15%減少した。

解決策として、早期に復職する場合には給付額を増加する改革を進めた。また、1998年には週35時間労働という労働時間の短縮が行われた。時短による男性の育児参加、家事負担の増加が期待された。時短導入時の調査によると、実際に男性の家事・育児の時間が増加している(注5)。さらに、2004年、社会保障給付に関する立法(loi de finamcement de la Securite socialepour 2004)により乳児受け入れ基礎給付(Pajeg=L'allocation de base de la prestation d'accueildu jeune enfant)により(注6)、所得条件付きで第1子(養子)から3歳までの子の養育給付が創設された。さらに、労働時間を短縮し早期の復職を促進する目的から、「就労選択自由補償給Le complémentde libre choix d'activité (CLCA))、休職し自ら保育にあたる「就労選択自由補償オプションLecomplément optionnel de libre choix d'activité (COLCA)(注7)」という選択が可能な保育費補償システムが作られたのである。

②父親の出産休暇の創設

父親の出産休暇としては、1955年にはすでにフランス全土に適用される全国レベルの労働協定が締結され、これにより1961年に、3日間の父親出産休暇が労働法典化されていたが、2001年、父親の育児休暇取得促進を念頭に、父親出産休暇(congé de paternité, L.1225-35)が改正された。取得対象者は、出産する女性労働者の父親だけではなく、PACS(Pactcivl solidalite)を結んだパートナーや親族に加え、母親と生計を共にする者も含む。子どもが誕生した場合、普通出産では11日、多胎出産では18日の休暇を取得することができる。取得後、復職する場合、以前の職あるいは賃金の等しい同様の職に復職することが保障されている(L.1225-36)。

2004年の取得状況を見ると、その平均取得日数は10.8日で、若い父親(25歳から34歳)が71%、年齢の高い父親(35歳以上)は58%である。そして、半数の父親が第1子の出生に際して取得している。取得の理由は、第1子の場合、子どもと過ごすためが85%であり、出産に立ち会うためが78%である。しかし、第2子以降は、他の子どもの世話のため、出産に際しての雑事を処理するためといった必要性から取得するケースが増加する。2003年から特殊合計出生率は上昇し、2004年には1.898となり、2010年には2.01を回復し、人口が増加に転じ注目されたのである。

(5)時短による早期復帰と所得補償の問題点

しかし、就労選択自由補償(CLCA)の問題点が2012年に指摘された。就労選択自由補償(CLCA)を利用して、すなわち、労働時間を短縮する形で早期に復帰した場合の補償給付の額と、時短をせずにフルタイムで職場復帰した場合、子供の保育費用を考慮すると、労働時間を短縮した復帰を選択した方が金銭的なメリットがあるとの分析がなされたのである(注8)。もちろん、これは、両性の平等と女性就労というEUの定めた目標にも反することとなり、大きな政治的な問題となった。さらに一層の父親の育児への参加、具体的には、父親と母親の取得率の均衡を図るため、新しい制度の策定が求められた。このようにして作られたのが、子供教育分担手当(Prestation partagéed'éducation de l'enfant = (PrePerE))制度である。

4. 現在の育児休業と所得補償の仕組 ―就労選択自由補償給付(CLCA)から子供教育分担手当(PrePerE)への移行―

フランスにおける育児休業制度は、産前産後の出産休暇、父親の出産休暇の後、労働契約の中断もしくは労働時間の削減を労働者の決定に従って行い、子供の養育を行うものである。育児休業に対して行われる補償給付として、2017年3月に就労選択自由補償(CLCA)が廃止され、子供教育分担手当(PrePerE)に移行した。

子ども教育分担手当は、母親だけではなく、父親やパートナーが育児休暇を取得する場合のみ、育児休業の延長を定めている。従来の制度のように母親だけが長期の育児休暇を取得することを許容せず、子供教育分担手当(PrePerE)は母親と父親の間で取得する休業期間の分担を求める制度になっている。

子供教育分担手当(PrePerE)は3歳以下の子供(養子縁組された子)に適用される。就労の中断あるいは労働時間の短縮が要件となる。子供教育分担手当(PrePerE)は両親の一方が取得するのが原則であるが、同時にあるいは継続して取得することも可能である。休暇の取得は、企業だけでなく公的機関で就業している場合にも可能である。取得要件は、一定期間の間に8期の年金保険料の納付を証明する必要があり、その期間は、子の数に従って定められている(1人2年、2人4年、3人以上5年)。

子供教育分担手当(PrePerE)による給付は、親の就業状況によってことなり、就業を完全に中断した場合、月額394.09ユーロが給付され、労働時間を50%削減した場合、253.47ユーロ、労働時間の短縮(50%~80%)146.21ユーロが給付される。

給付期間はのように、子供の数と家族の状況によって決定される。

取得期間
子供の数 カップル・二人親家庭 ひとり親家庭
1人 6カ月ずつ、各パートナーに対し1歳の誕生日まで 1歳の誕生日まで
2人 24カ月ずつ、双方の親が最も幼い子供の3歳の誕生日まで両親は給付を分かち合うことができる。例えば、母親が2年取得し、父親が1年間3歳の誕生日まで取得するという方法である。
注意)出産休暇の取得期間によって、この期間は短縮される。親教育休暇は毎月1日から開始され、給付は翌月となる。
最も幼い子供が3歳の誕生日を迎えるまで
3人 シンプル(PrePerE)増額がないもの 24カ月ずつ、双方の親が最も幼い子供の3歳の誕生日まで両親は給付を分かち合うことができる。例えば、母親が2年取得し、父親が1年間3歳の誕生日まで取得するという24カ月ずつ、双方の親が最も幼い子供の3歳の誕生まで。
注意)出産休暇の取得期間によって、この期間は短縮される。親教育休暇は毎月1日から開始され、給付は翌月となる。
最も幼い子供が3歳の誕生日を迎えるまで
(PrePerE)増額 双方の親が8カ月ずつ、最も幼い子が1歳の誕生日を迎えるまで取得できる。
注意)出産休暇の取得期間によって、この期間は短縮される。親教育休暇は毎月1日から開始され、給付は翌月となる。
最も幼い子供が1歳の誕生日を迎えるまで

子供教育分担増額手当(PrePerE majorée)は、3人以上の子の養育責任を負い、かつ、就業を完全に中断している場合に需給可能となり、640.90ユーロが毎月給付される。一度、この選択決定すると変更はみとめられない。両親双方が休暇を取得する場合、2つの子供教育分担手当(PrePerE)を受領しうるが、その給付額の合計が392.09ユーロを超えてはならない。また、三つ子以上の多胎の場合、支給期間を48カ月、カップルの各メンバーが6歳の誕生日まで取得することができる。子供たちの養育責任を一人の者が負う家庭の場合、給付は6年間に延長される。給付期間は次の条件に該当する場合延長可能である。①少なくとも2人以上の子供がいる場合、②保育園、保育ママ、ベビーシッターなど保育手段を見つけられない場合、③家族補償給付(complément familial)の支給基準となる収入要件を超えないことである。条件を満たす場合、一般には、保育学校(通常3歳から99%の子どもが就学する公立学校)開始の9月までが、延長が可能となる。両親・カップルの場合、延長期間は、少なくとも親の一方が就労していなければならない。

5. 「女性が子どもか仕事かの二者択一を迫られない」仕組みの中で父親教育休業の役割

フランスでは他国に先駆け、第一次世界大戦後の急激な少子化を契機として家族政策に早くから取り組んできたことが理解できよう。特に、70年代に専業主婦のいる家族構造から共働きの家族構造へと変化に対して柔軟な対応を行ってきた点が注目される。例えば、子育て支援政策の見直し、保育園だけでなく保育者を雇い家庭で保育を行う場合の費用補助、男女の雇用平等、母親が子育てと仕事を両立できるような育児休業や復職制度といった様々な政策を実行してきた。その中で、94年の第1子からの子育て支援給付の開始と98年の労働時間の短縮による家庭責任と育児を父親と分担は、出生率の向上に一定の効果をももたらしたように思われる。女性の両立支援においては、パートナーの家庭責任の分担がかなり大きな影響を与えるとも考えられるのである。しかしながら、フランスにおいては、男性の育児休業の取得率は芳しくない。「女性に多様な選択肢を与え」「仕事か子育ての二者択一を迫らない」家族政策をさらに一歩推進するために、父親に対して家庭責任と育児を分担することを、特に、1歳までの育児を半分分担することを求めたものともいえよう。フランスでは、女性の政治家や管理職の割合が低いという課題があり、地方議会において政治家の男女比を均等とするなど積極的な政策を進めている。このような社会状況において、男性が育児を等しく分担することが強く必要とされているのである。

日本においても、少子化対策は課題である。多様な選択肢を提供し、女性に仕事か子供かの二者択一を迫らない、本当の意味での両立支援の実現が求められているといえるのではないだろうか。

参考レート

2018年12月 フォーカス:諸外国における育児休業制度等、仕事と育児の両立支援にかかる諸政策 ―スウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、韓国

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