「時間外労働」をした労働者の2割がサービス残業

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  • 国別労働トピック:2022年9月

連邦統計局がこのほど発表した資料によると、雇用労働者3780万人の12%に相当する450万人が、2021年に残業をしたことがあると回答した。さらに、残業実績がある労働者の22%が、無給で残業したことがあると回答していた。

残業の3形態―労働時間口座・有償・無償

今回の分析には、2021年の労働力調査(LFS)が用いられた。残業については、「基準週に本業(メインの仕事)において雇用契約での合意以上の時間働いた」と回答した従属労働者(注1)を抽出。合意以上に働いたと回答した者は、さらにこれらの残業時間について、①「労働時間口座に貯蓄(注2)」、②「残業代を受け取った(有償)」、③「残業代を受け取らなかった(無償)」のいずれかを複数回答できる。そのため残業の形態は、この3つが組み合わさっている可能性もある。

連邦統計局の分析によると、2021年に残業をした労働者のうち、「労働時間口座に貯蓄」と回答したのが72%、「無償(サービス残業)」と回答したのが22%、「有償」と回答したのが18%であった。
つまり、2021年に時間外労働をした労働者の約2割は、サービス残業をしたことがあった。

男性やや高く/金融保険産業は5人に1人/大半は週数時間

残業実績があった労働者の性別を見ると、男性が14%、女性が同10%と、男性の方がやや多かった。

産業別では、「金融・保険産業」の割合が高く、労働者のほぼ5人に1人(19%)が残業をしていた。次いで高かったのは、「エネルギー供給産業」で18%となっていた。逆に残業割合が低かったのは、「芸術・エンターテイメント産業」で8%、「接客業」で6%となっていた。このような産業で、残業労働者の割合が少なかったのは、2021年のコロナ禍による行動制限が大きな要因だと連邦統計局は分析している。

さらに、残業時間の長さを見ると、多くは週に数時間という回答であった。残業実績者の6割近く(59%)は週に10時間未満と回答しており、3割強(33%)は週5時間未満であった。他方で、週15時間以上と回答した割合は残業実績者の29%であった。

残業は、法律でなく労使合意に基づく

ドイツの時間外手当や時間外割増賃金は、法律では明示的に規定されておらず、雇用契約や事業所協定、団体協約等によって定められている。

また、労働者は、労働時間法(ArbZG)に基づき、原則として1日8時間を超えて働いてはならない。ただし、この時間は、6カ月または24週の期間で平均が1日8時間を超えない場合にのみ、10時間まで延長することができる。また、限定的に1日10時間を超える労働時間も許容されている。例えば、緊急事態など法律で根拠が規定されている場合(州当局が1日10時間を超える長時間労働を許可する権限を保有している場合)や、労働協約等に基づく場合は、一定の要件を満たした上で例外的に認められる。また、労働者の健康確保の観点から、EU労働時間指令に基づき、1日の労働時間終了後、少なくとも11時間の連続休息時間が確保されなければならない(労働時間法5条)。ただし、特殊な職種(公共、介護、農業、接客業、交通運輸、オンコールサービス等)においては、休息時間の短縮に補償があることを条件に、法や労働協約等に基づく休憩時間の短縮が例外的に許容されている。

なお、自己の判断で採用及び解雇を行う権限を有する者や包括代理権または業務代理権を有する者に該当する「管理的職員(leitende Angestellte)」等は、労働時間法の規制対象外となっている。

参考資料

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