特集4:職業訓練制度
職業訓練によるエンプロイアビリティーの向上:研修休暇制度
ここでは、被用者が利用できる職業訓練の一形態である研修休暇制度を改めて取り上げる。求職者に対する職業訓練は、再就職を促進するという点で、雇用・失業対策上の重要性が再認識されているのはこれまでに見たとおりであるが、就労中の被用者が、各自のイニシアチブによって継続して職業訓練を受けることも、エンプロイアビリティーを高めることにつながり、将来の労働市場内での移動を容易にするという点で、労働市場の構造改革を目指す雇用政策の観点からやはり重要性を増している。
(1) 職能評価休暇
個人的な職業計画を立てる前段階として、各人の職能や動機を分析するために取得する休暇で、これにより各人に必要な職業訓練が診断されることもある。職能評価休暇は、原則としてすべての被用者を対象とするが、以下の条件を満たしていなければならない。
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被用者として通算5年以上就労していること。そのうち12カ月は現在所属する企業に勤務していること。
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前回の職能評価から5年が過ぎていること。ただし雇用主が変わった場合はこのかぎりではない。
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職能評価は指定された機関で実施する。
職能評価は勤務時間内に実施することも可能である。その場合、被用者は、職能評価検査の実施団体と実施日(期間)を明記して、実施日の60日前までに「欠勤許可」を申請する。雇用主は、申請受理から30日以内に当該被用者に可否の回答をしなければならない。原則として、上記の条件を満たしていれば、雇用主は申請を却下できないが、業務上正当な理由があれば、6カ月まで先延ばしすることができる。許可が認められた場合、雇用主が所属する個人研修休暇制度運営機関(FONGECIFまたはOPCA)に休暇分補償の申請を行う。
職能評価の実施には、研修休暇制度の一環として指定された外部の機関が当たり、検査結果は被用者本人に直接通知される。こうした職能評価や、それにより処方される職業訓練は、被用者が所属する企業内部の研修制度と無関係のものであってもよい。
(2) 個人研修休暇(CIF)
被用者が、同一職種内における資格取得や職能向上、転職・転業などを目的として、自ら決定した職業訓練に参加する場合、個人研修休暇(CIF)を取得することができる。この職業訓練は、被用者が所属する企業内の研修制度と無関係のものでもよい。
個人研修休暇は、原則としてすべての被用者(公共部門を含む)を対象とするが、以下の条件を満たしていなければならない。
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被用者として通算24カ月以上就労していること。そのうち12カ月は現在所属する企業に勤務していること。
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前回の個人研修休暇取得から、一定の期間を経ていること。
就労時間内に職業訓練を受けることも可能であるが、その場合、職業訓練の内容と期間を明記した欠勤許可申請を規定期日までに雇用主に提出する。雇用主は、被用者が上記の条件を満たしている場合、原則として申請を却下することはできない。
職業訓練期間中の給与は、個人研修休暇制度運営機関によって次のとおりに補償される。
- 被用者の給与がSMICの2倍未満の場合、給与の100%
- 被用者の給与がSMICの2倍以上の場合、給与補償額は職業訓練期間による
- 訓練期間が1年以内、あるいはパートタイムで1200時間以内の場合、SMICの2倍を上限として、給与の80%が補償される。ただし優先的な職業訓練の場合は90%。
- 訓練期間が1年超、あるいはパートタイムで1200時間超の場合、最初の1年または1200時間は、SMICの2倍を上限として、給与の80%(優先的な職業訓練の場合は90%)が補償され、それ以降は60%。
職業訓練期間中、被用者の雇用契約は一時的に中断していると見なされる。訓練終了後、被用者は職業訓練受講証明を提出し、訓練開始前と同じあるいは同等のポストに復帰できる。
(3) 職業経験認定休暇(Validation des acquis de l’expe´rience: VAE)
職業経験認定休暇は、被用者の現時点までの職業経験を資格の形で認定する制度で、高学歴社会における低学歴(無学歴)者のエンプロイアビリティーを高めることを目的としている。具体的には、職業経験によって獲得した知識・技能を、被用者の就労前の最終学歴の1段階上の学位に相当するものとして認定する。
とりわけ、高校卒業資格(バカロレア)を未取得の場合、職業経験によって大学入学可能なレベルに達した被用者は、大学入学資格を取得できる。ただし、これによってアクセスできる高等教育は職能に結びつくものに限られ、また、受け入れ高等教育機関の側の判断で、実際の入学までに準備講習が実施される場合もある(技師養成機関など)。受け入れ高等教育機関の資金・人材確保を支援するため、VAE制度には国の予算および欧州社会構造基金(FSE)からの交付金が充てられている。
被用者は、こうして職業経験の資格認定を受ける際に、試験あるいは試験準備のため、24時間を限度として休暇を取得することができる。その申請には、資格認定対象分野において3年の職業経験を有することが条件である。資格認定の費用は個人研修休暇制度運営機関によって負担され、休暇中も給与は継続して支払われる。
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