(香港特別行政区)中国本土での職探し増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年5月

香港の長引く景気低迷と厳しい雇用市場を反映して(第II記事参照)、香港に見切りをつけて中国本土で就職を求める香港住民が増加しているが、これにともない、政府労働局も本土での職捜しに助力することを計画し始めた。

香港では2002年1月26日と27日の両日、中国企業約70社が合同就職説明会を開催し、これは中国企業による香港での大規模求人の初めての試みだったが、折からの景気低迷と高い失業率を背景とする職捜しの困難も手伝って、就労者と失業者を含めて、初日7000人、二日目5000人、合計約1万2000人が説明会に押し寄せた。参加した中国企業には、ZTE社、チャイナ・イーグル証券、ミッション・ヒルズ・ゴルフ・クラブ等本土の有名企業が含まれ、その求人数は約750で、求めた人材は修士以上等、企業管理や通信技術等の専門知識をもつ高学歴の人材で、主に中間管理職が求められたが、ビジネス経験豊かな役員等の幹部人材を募集する企業もあった。会場には長蛇の列が出来、来訪者は担当者に熱心に質問していたが、初日だけでも約300人の内定が決まった。もっとも、部門によっては中国企業の求める水準に達していない者も多かった。

香港城市大学が行った香港住民2690人を対象とする中国での就職に関する意識調査によると、約32%が中国での就職を考えてもよいと回答しており、梁君民同大学助教授によると、以前は何でも香港が優ると考える意識が強かったが、香港の経済状況と雇用市場の悪化で、中国本土の市場に目を向けざるを得なくなってきている。

このような動きを受けて、政府労働局は新たなサービスとして、香港住民の中国本土での就職活動を助力する計画に乗り出した。これは香港の雇用市場の悪化に伴う労働局の就職関連サービスの拡大の一環で、パメラ・タン労働コミッショナーによると、この計画では労働局が中国本土の企業、なかんずく香港に登録され、本土で活動する民間の職業紹介企業と接触をもち、4月から労働局の就職紹介ウェッブ・サイトに職業紹介企業の住所・電話、求人広告等の情報を載せ、香港の求職者は、本土での仕事、中国の労働法、生活上の適応等についてアドヴァイスを受ける。既にセント・ジョージ・コンサルティング社等、香港、中国、東南アジアに拠点をおく就職斡旋会社が、この計画の支持を表明している。

プーン・シュウ・ピン香港・九竜労働組合連合副委員長は、香港労働者は、時折開催される企業の合同説明会や個人的なつて以外に、中国本土での就職先を見つけ、本土の労働環境について知識を得る正規のチャンネルをもたないから、労働局の計画は適切だとしている。

最近中国が世界貿易機関(WTO)に加盟したこともあって、香港労働者の中国の就職市場に対する意識の変化が見られるだけに、中国からの専門技術者導入問題という反対の動きと並んで、今後の動きが注目される。


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