レイオフや失業労働者の生活保障制度加入率の拡大

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年5月

中国では、都市部で最低生活保障制度を導入しており、主にレイオフ、失業、定年退職などの都市部低所得者を対象としている。労働保障部の統計によれば、最低生活保障への加入基準に該当する都市部貧困世帯人口はすでに1320万人に達しているが、2001年秋現在で、最低生活保障制度に加入しているのは全体のわずか25%に止まっている。最低生活保障に未加入の貧困世帯は、主に親戚などの援助によって生計を立てており、生活状況が厳しいと思われる。

貧困世帯が、最低生活保障制度の加入を申請しない理由として、まず、最低生活保障に加入することで、自分の面目を失うという意識がある。国有企業のレイオフ労働者や失業者にはこのような意識をもつ者が多い。彼らにしてみれば、最低生活保障の加入は、自分は能力がないことの証であり、世間における体面を失うことになる。もう1つの理由は、子供が差別を受けることへの心配である。親が最低生活保障を受けていることが分かれば、子供は学校では恥をかき、いじめを受けるのではないかという。3番目の理由は、再就職に支障をきたすことである。最低生活保障に加入すれば自分が貧困世帯であることが明らかにされ、企業にとって負担になりかねないとの理由で、採用をためらう企業があるからである。

最低生活保障を導入している36都市をみると、深市の基準は1人当たり月額319元で最も高く、南昌市は1人当たり月額143元で最も低い。この2、3百元の月額は、貧困世帯にとっては生存にかかわる大切なものであるにもかかわらず、面子を保つために、あえて最低生活保障金を放棄することは、決して理性的な選択ではないと見られるが、実は、社会特性や文化に深く根付く価値観を現している。

中国は、貧困世帯における最低生活保障制度の加入率が100%になることを目指している。加入率を向上させるためには、今後、加入者の個人情報の厳密な管理、加入者個人の権利への配慮、または、社会や学校、企業などにおける貧困世帯への差別意識の排除に努めなければならない。2002年3月の全人代における朱鎔基首相の「政府活動報告」によれば、都市部最低生活保障制度の加入者数は、2001年年初の400万人から年末の1120万人には拡大した。

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