(香港特別行政区)失業率、最悪6.7%を記録

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

中国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2002年5月

政府が2002年2月21日に発表した統計によると、香港の2001年11月?2002年1月期の失業率は6.7%に達し、従来最悪だったアジア経済危機後の1999年1月の6.4%を突破して、1981年に統計発表が開始されて以来史上最悪の記録となった。失業率は前期比でも0.6ポイント上昇し、1カ月の上昇幅としても、1999年1月に失業率が6.4%に達した時の上昇幅0.5ポイントを更新して、最悪記録となった。

失業者数は21万9000人で、前期比で9000人増加したが、これも、前期の記録が21万人で従来最悪だった1999年12月の20万8700人を超えてから、さらに増加している。

失業は全産業部門広がっているが、最も打撃を受けたのは、建設、卸売・小売、レストラン、運輸、通信、不動産、企業サービスの諸部門だった。

今回深刻に受け止められているのは、記録が最悪となっただけではなく、被雇用者総数が絶対的に減少したことである。従来は、失業率は上昇していたが、それは主に香港への移入者の増加と若年層の雇用市場への参入による労働人口の拡大に起因し、雇用自体は創出されて被雇用者数は増えていた。しかし、今期は厳しい経済状況を反映して企業のリストラが続き、7200人の雇用が削減され、その結果被雇用者総数が323万人から322万9000人に減少し、従来の傾向が変わり、さらに深刻に受け止められている。

アントニー・リョン(Leungを今後リョンと表記する)財務長官は、従来の説明どおり、失業率の上昇は、世界的な経済の減速、米同時多発テロ、香港の産業構造の転換の結果だとしているが、さらにリストラが進む旧正月(春節)も、季節的要因になっていると述べている。さらに同長官は、短期的に失業はさらに上昇するとしながら、上昇がいつまで続き、どこまで上昇するかは確答できないと述べている。

専門筋も厳しい見通しを示しているが、香港城市大学のワン・フン講師は、失業率は3月には少なくとも7%に達し、第2四半期末までには7.5%に達する可能性が十分あるとしている。同講師は、従来安定していると思われた銀行や貿易部門の多くのホワイトカラー層が、従来から厳しい状況の製造業部門の労働者と同じ道をたどり、労働コストの安い中国本土等に移り始めていると述べている。

このような厳しい状況の中で、プライスウォーターハウス・クーパーズ社が行った香港の160社を対象とする調査では、43%の企業が今年さらにレイオフすると回答している。この中では、情報通信技術部門の17社中14社がレイオフすると回答しており、諸部門中最も高い率を示しており、イアン・パーキン商工会議所主任エコノミストも、調査結果は懸念材料になるとしている。

他方、厳しい失業の増加で社会不安も増大しており、社会福祉局が1月31日に発表した統計では、自殺・家庭内暴力等が増加している。2001年には984人の自殺者があり(2000年は868人)、9時間に1人の割合で自殺者が出ており、過去最悪記録となった。家庭内暴力は、1998年の1009件から2001年には2433件に増加し、児童虐待も、2000年の409件から2001年には535件に増えている。

ちなみに、包括的社会保障支援(CSSA)から支給を受ける失業者は、1999年6月以降、定期的に職業指導カウンセリングを受けることを義務づけられているが、1999年以降カウンセリングを受けた6万5800人のうち、雇用されたのは13%に過ぎない。

関連情報