(香港特別行政区)キャセイ航空、経営側とパイロットの交渉決裂

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年9月

キャセイ航空の経営者とパイロット組合は、 職務当番表の改善をめぐってここ数年対立していたが、 さらにこれに勤務条件をめぐる対立が加わり、 難行した交渉も結局2001年6月28日に決裂して、 パイロット側の示威行動をも辞さない態度によって緊迫した状況を迎えている。

パイロット組合は、 キャセイ航空の1500人のパイロットのほとんどを代表するが、 現行の職務当番表について、 パイロットが予期しない呼び出しを受けて予定外の勤務に就かねばならなず、 空港につくまで出国、 入国の日取りも明確に定まらない弊害があり、 家族と過ごす計画も立たない等、 強い不満を表明していた。 このための話し合いも進展してこなかったが、 これに加えて、 パイロットの給与の格差が問題になり、 1993年以降に入社したパイロット(香港出身者も移入者も含むが、 特に前者)の給与が、 それ以前に入社した者より低いことに強い不満が表明され、 さらに他の航空会社と比べて給与水準が低いとの主張もなされてきた。 そしてパイロット組合は全体として32%の賃上げを要求したが、 これに対して会社側の回答は始めは9%で、 平行線をたどった。

事態はその後も進展せず、 パイロット側は2001年6月20日の決議で、 7月1日を期して示威行動を行うとの強硬な態度を示し、 これに対して会社側は6月25日、 6月28日深夜で交渉を打ち切るとの最後通告を組合側に発した。 この間も、 調停に当たる政府労働局で会社側とパイロット組合の話し合いは続けられたが、 結局6月28日に決裂した。

会社側は、 10.5%の賃上げ、 超過勤務に対する別手当、 職務当番表の改善等の最終案を提示し、 交渉担当責任者のトニー・タイラー氏は、 会社の立場は明確で、 最終提示条件を変更するつもりのないことを明言した。 会社側の提示条件をパイロット組合が受諾すると、 4年の契約期間、 示威行動を行わない義務を負うことになる。 また、会社側は、 パイロット側の職場放棄に対して、 他の航空会社からの臨時便の支援等で7月の観光シーズンにも十分対処し得ると強気の態度を崩していない。

他方、 パイロット組合のジョン・フィンドレー事務局長は、 示威行動の期限を7月2日深夜まで延ばすとしたが、 職務当番表の問題を過去4年間も議論してきたことを強調し、 勤務条件についての妥協も拒否する姿勢を示している。 また組合は、 7月の観光シーズンを控え、 旅客に対して不測の事態に備えて他の便を確保することを勧める等の広告を事前に行う反面、 会社との闘争に長けた米国のパイロット組合からネット等を通して指導を受けたりしている。

このような中で、 建華長官は6月27日に異例の意見表明を行い、 パイロット組合に対して、 香港経済ために、 会社側との交渉による解決を図り、 示威行動を控えるように要望した。 同長官は、 キャセイ航空ではこのところ数年に一度、 会社側とパイロット組合の紛争があり、 これは香港にとって重要な観光業のためにならないとし、 また、 キャセイ航空のパイロットが、 世界でも最高の給与を取得している部類に属していると述べている。

このような 長官の発言に対して、 有力労組の工連会(FTU)や職工会連盟(CTU)は、 行政府の長が労使の紛争に介入して、 会社側に与すると取られる発言を行うことは不適切であり、 政府は労使の争いに中立の立場を貫くべきで、 解決は労使の交渉に任せるべきだと批判した。 ただ、 キャセイ航空の地上勤務職員からは、 パイロット組合の強硬な態度に対する批判が出ており、 強硬態度は自分達の職場を脅かす危険があり、 示威行動は自粛すべきだとの意見表明がなされている。

7月3日深夜を期して何らかの示威行動があれば、 1999年の紛争に際して、 パイロットの病欠届けにより約1000便が欠航して以来のことになるので、 今後の紛争の行方が注目される。

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