賃金上昇に対応して、地方政府が社会保障など追加コストの抑制に動き出す

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年9月

中国は社会保障制度の確立に向かっており、企業は、人件費以外に、社会保障金の納付が義務つけられている。社会保障金は、養老保険金、住宅積立金などを含めており、香港の会計事務所が中国内陸で投資する香港系企業を調査した結果、社会保障金のトータルな金額はすでに賃金の60%をも占めるほど、企業にとって大きなコストとなっている。そのため、大都市の地方政府は、社会保障金の納付率に上限を加えるなどフレキシブルな対応策を講じ、一部の地域では、社会保障金の比率をすでに賃金の40%以下の水準に抑えられるようになった。

香港の会計事務所によれば、社会保障金の納付比率が確立された当初、中国の一般労働者の月給は1000元から2000元のレベルであった。しかし、近年の急速な経済成長によって、広州、北京、上海など主要都市の賃金が急上昇し、マネジャー層の場合、すでに月給が2万元台に上った。それに60%の追加コストが課されれば1.2万元を多く払うこととなる。高級経営管理者層になると、月給が8万から10万元の者も現れているため、社会保障費の追加コストは重荷となっていることが容易に想像できる。さらに、一部の多国籍企業は、現地従業員にストックオプションを導入しており、一昨年度にナスダック株が上昇した際、現地人マネジャーの中で報奨利益の獲得によって10万元を手にした者もあり、さらに60%の追加コストが課されると、雇用主の負担率は非常に高くなる。

このような状況を考慮して、北京、広州、上海などの大都市の地方行政は、社会保障費の徴収にかなりフレキシブルな政策を講じる姿勢を見せた。たとえば上海では、すでに社会保障費納付率の上限が設けられている。内陸部の都市では、賃金が沿海部ほど上昇していないので、今のところ、特に問題は現れていない。

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