国有企業がストックオプションなどを導入

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

国家経済貿易委員会、人事部と労働保障部は、2001年に入ってから、「国有企業の人事・労働と分配制度の改革についての意見」と題する通達を公表した。これにより、国有企業改革をさらに進め、今後、株を報奨として従業員に支給するストックオプションなどを導入するだけでなく、リストラを実施することも可能となる。これまで、国有企業は、役所と同様、中央から地方までの行政ランク付けがされていたが、今回の通達により、こうした企業の行政ランク付けが廃止される。また、経営困難な企業や倒産に瀕する企業の場合、リストラを決行できる。さらに、国有企業は、技術能力を株式に換算して株を支給する制度、またはストックオプションなどを、インセンティブ・メカニズムとして導入することができる。

国有企業ではこれまで、管理者や技術者は国家公務員と同様の「幹部」身分を付与され、労働者とは区別されている。企業が、国家機関と同様の行政ランクを廃止すれば、当然、管理者や技術者の「幹部」身分も廃止され、労働者との間の身分格差がなくなる。これは企業の人事労務制度が、かつての身分重視から、仕事中心のポストを重視するよう変わったことを意味している。労働契約制度は数年前から導入されており、現在、国有企業の中ではもはやかつての終身雇用の「固定工」従業員は存在しない。管理者と技術者にも競争制度を導入した。

また、今回の通達は株式制度や従業員持ち株制度の導入を踏まえて、賃金面の規制撤廃の内容も組み込まれている。国有企業は、地域の平均賃金や企業の経営状況に基づき、市場メカニズムを通じて、自ら賃金を決定し、固定給の割合を大幅に下げ、企業の経営成果と個人の貢献度をリンクする変動給の割合を大幅に増加することが可能となる。さらに、技術者やマネジメント人材に対するインセンティブ・メカニズムを確立するための提言がなされている。例えば、技術者や研究開発者に対して、仕事や職務、業績に基づき賃金を決定する。企業経営に貢献度の大きいプロジェクトの場合、その成果に応じて奨励金を支給する。新技術や新製品を開発し、商品化に成功した場合、そこから得た利益の一部を開発者に還元する。技術移転、技術開発、技術サービスや技術コンサルティングで得た利益の一部を技術者本人に還元する。中堅技術を株式に換算し、それをもつ技術者本人に株を譲与する。株式を報奨として譲与することやストックオプション制度等々である。企業は、専門技術者を招致し確保する場合に、特別の賃金や福利厚生を採択することも可能である。今回の通達は、国有企業では、個人の技術能力に対する評価を賃金システムに反映することがより強化され、それによって、企業内の収入格差がさらに開くことになるという方向を示した。

国有企業「長城技術」の副社長、張志栄は、技術者のインセンティブ制度の確立は今後、国有企業が向かうべき方向であると認めると同時に、現状では、まだそれほど容易ではないと見ている。特に国有資産と個人の関係をいかに明瞭化させるかが、目下の大きな課題であるとしている。また、他の国有企業の会長は、まず、国有企業が国家、企業、個人の利益関係を早くに明瞭化しなければならないとの意見を述べた。

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