公務員など国家機関従業員の賃金引き上げに800億元拠出

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

中央政府財政部は4月12日に、国家機関職員に対する中央政府の賃上げ計画を発表した。発表によれば、中国は4月から、全国的に国家機関職員の新しい賃金基準をスタートさせ、その賃上げの対象者は全国で4500万人を超えており、一人当りの月収が平均100元増加する見通しである。なかでも、もっとも上昇幅の大きい者は月収が約300元増加すると見られている。今回の国家機関など国有非営利部門の従業員の賃上げの財源として、国家財政から800億元を拠出する。しかし、国家機関の役員や職員の多くは、賃金以外にグレーゾーンに属する収入があるため、100元の賃金増加にはそれほど大きな関心を示さない様子である。

今回の賃上げは、三つの内容からなっている。まず、国家機関と国有非営利部門の職員や労働者の基本賃金は、1人当り約100元上昇することとなる。現在、行政機関職員の賃金は、主に、基本給、勤続年数給、職務給と職階給の4つからなっている。今回の賃上げは、主に基本給と職階給の部分の増加である。次に、2001年から、全国13省634県において、貧困および遠隔地域の従業員に対する手当てを増加する。手当ての増加幅は4つのレベルに分かれており、1人当り月43元、86元、182元または300元増えることとなる。三つ目は、2001年から、年末の人事考査に合格した従業員に対して、1カ月分の賃金相当額の賞与を支給する。

貧困および遠隔地域の手当て増加分は、中央財政から拠出することとなるが、国家機関と国有非営利部門従業員の基本給と職階給のベースアップおよび年末賞与については、広東、福建、淅江、江蘇、上海、山東、北京など経済先進地域では、すべて地方財政から拠出し、その他の24の経済後進地域では、中央財政から3割ないし8割分の資金が提供される。

中国では、近年、公務員の汚職や腐敗などが、大きな社会問題となっている。今回の賃上げ決定には、公務員の汚職防止や士気向上の意味が込められているのはいうまでもない。しかし、全国紙の「中国経済時報」によれば、公務員の賃上げに対する国民の評価として、39%が「羨ましい」としているが同時に、「腐敗や汚職などの問題の解決にはならない」と思う人が25%と目立っている。また、国家統計局の最近の調査によれば、北京、広州、西安など大都市の市民の4割が、公務員の賃上げに賛成しない態度を表明しており、公務員全体に対する世間の不満が露になっている。一方、中国は、1994年からすでに3回にわたって賃上げを実施したが、現在、国内市場がデフレ状態にあり、小売価格が落ち込んでいる状況を反映して、今回の賃金上昇幅は前回の1998年より低めに設定されているため、公務員や国有部門従業員のほとんどは、月給にプラス100元の上昇幅はさほど意味がないと捉えている。現在の生活水準を維持するためには、賃金収入では不可能で、多くの人は、賃金より多額のグレーゾーンの副収入を得ている。

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