基礎情報:韓国(2013年)
2. 雇用・失業対策

2-1 公共職業安定制度

基本業務(職業紹介等)

雇用労働部の関係機関である雇用支援センターが、職業紹介、就業支援及び職業能力開発などの業務を行っている。また、雇用労働部の傘下機関の韓国産業人力公団が職業訓練や技能資格検定を、韓国雇用情報院が雇用情報ネットワークを担当している。

全国的な組織網を持つ雇用支援センターが職業斡旋、職業指導、雇用情報の提供、民間部門に対する監督・指導、雇用保険事業、職業訓練、その他の雇用政策を実施している。

資料出所:厚生労働省(2013)「2011-2012海外情勢報告」

民間委託事例(職業訓練、就職支援等)

雇用支援センターに求職登録した15歳以上の失業者あるいは高等学校3年の在学中、進学しない者を対象に、大韓商工会議所の8つの人材開発院および62の民間訓練機関において政府委託訓練を実施している。人材の不足する職種または国家経済発展の基幹となる職種の人材を養成することを目的としている。

資料出所:労働政策研究・研修機構(2005)「労働政策研究報告書No.29 アジア諸国における職業訓練政策―若年層を中心に―

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2-2 労働者派遣制度

労働者派遣事業についての法規制

根拠法:
派遣労働者の保護等に関する法律(1998年制定)
許可制:
労働者派遣事業を行う者は、雇用労働部長官の許可を受けなければならない。
対象業務:
  • (1) 派遣対象業務:
    製造業の直接生産工程を除いて、専門知識・技術・経験または業務の性質などを考慮して適切であると判断される大統領令で定める業務(現在は32業務)
  • (2) 一時許可業務:
    出産・疾病・負傷等で欠員が生じた場合および一時的・断続的に人材を確保する必要がある場合の業務。
絶対禁止業務:
建設工事現場・荷役・船員等の業務。
派遣期間制限:
  • (1) 派遣対象業務:
    最長1年。ただし、1回に限り最長1年まで延長可能。延長期間を含む総派遣期間は2年を超えることができない。
  • (2) 一時許可業務:
    出産・疾病・負傷等の場合は、その事由の解消に必要な期間。一時的・断続的に人材を確保する必要がある場合は、3カ月以内の期間。ただし、1回に限り、最長3カ月間延長可能。
均等待遇:
派遣元と派遣先は、派遣労働者であることを理由に派遣先事業所の同種または類似の業務を行う労働者と比べて差別的処遇をしてはならない。派遣労働者は、差別的処遇を受けた場合、労働委員会にその是正を申請できる。
直接雇用業務:
次のような不法派遣の場合は、派遣労働の期間に関わりなく、派遣先が派遣労働者を直接雇用する義務が生じる。
  1. 派遣対象業務以外の業務(一時許可業務を除く)に派遣労働者を使用した場合、
  2. 絶対禁止業務に派遣労働者を使用した場合、
  3. 派遣対象業務で2年を超えて継続的に派遣労働者を使用した場合、
  4. 出産・疾病等による欠員の解消に必要な期間を超えて派遣労働者を使用した場合、
  5. 一時的・断続的事由の派遣で、6カ月を超えて派遣労働者を使用した場合、
  6. 不許可または重要事項変更の届出をせずに派遣労働者を使用した場合。

労働者派遣事業の現状(2011年上半期)

派遣労働者数:
9万2,371人(派遣対象業務 7万291人、一時的・断続的事由に基づく業務 2万2,080人)
主な職種:
事務支援従事者38.8%、
顧客関連事務従事者13.8%、
自動車運転従事者6.8%、
集金および事務従事者5.3%、
飲食調理従事者4.4%
派遣期間:
1~2年未満 21.2%、
9カ月~1年未満 10.7%、
6カ月~9カ月未満 10.5%、
3カ月~6カ月 20.7%、
3カ月未満 36.8%

資料出所:労働政策研究・研修機構(2012)「諸外国の労働者派遣制度における派遣労働者の受入期間について

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2-3 失業保険制度

根拠法:
雇用保険法(1995年)
被保険者:
1人以上の労働者を使用する事業場は雇用保険に加入する義務がある(ただし、農林業等のうち法人資格を持たない、常時5人未満の事業等の適用除外事業あり)。
受給要件:
  • (1) 雇用保険適用事業場で離職日以前の18カ月間に180日以上勤務し、会社の経営事情等に関連して非自発的に離職した者であること。
  • (2) 労働意思と能力を持って積極的に求職活動を行っているが就業できない状態であること。
給付水準:
求職給付の支給金額(日額)は、退職直前の平均賃金の50%(最高4万ウォン、最低は最低賃金(時間給)の90%×1日の労働時間)。求職給付以外に傷病給付、訓練給付、個別延長給付などがある。
給付期間:
年齢や被保険者であった期間に応じて、30歳未満で被保険者期間1年未満の90日から50歳以上で被保険者期間10年以上の240日までとなっている。
財源:
雇用保険料率
失業給付事業:被用者0.55%、事業主0.55%、
雇用安定・職業能力開発事業:事業主0.25~0.85%
 
国庫負担
事業にかかる費用の一部を国庫負担。
管理運営機構:
  • 中央: 
    雇用労働部
  • 被保険者管理、雇用安定事業、職業能力開発事業、失業給付: 
    雇用支援センター
  • 適用・保険料徴収: 
    健康保険公団

資料出所:厚生労働省(2013)「2011-2012海外情勢報告」、金漢陽(2008)「韓国社会保険制度の実態と発展方案」(中央学院大学社会システム研究所紀要, 第9巻第1号)

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2-4 補足的な失業扶助制度

該当制度なし

2-5 困難な状況にある者に対する施策

若年者雇用施策

個人別総合就業支援サービス

若年者を教育水準、失業期間等の特性と能力によって細分化し、長期失業者等の配慮を要する若年者に対して、個人別総合就業支援サービスを提供する。 支援内容は、以下の3段階に区分される。

  • 1段階(3週間): 個別相談、個別就業支援計画立案、職業指導プログラム参加、
  • 2段階(最長1年): 職場体験、職業訓練等に参加、
  • 3段階(3カ月): 集中的な職業紹介サービス

中小企業におけるインターンシップの拡充

中小企業がインターンシップにより15~29歳の若年者(学卒者または卒業前の学期休暇中の者)を雇用する場合、賃金の50%を6カ月間助成する(上限は80万ウォン)。インターンを正規雇用として採用する場合は、さらに6カ月間、1人月額65万ウォンを助成する。

資料出所:厚生労働省(2013)「2011-2012海外情勢報告」

高齢者雇用対策

雇用支援プログラム

50+新しい職場適応支援プログラムは、様々な雇用支援プログラムや職業訓練を終了後、3カ月以上就職できない50歳以上の求職者を対象に、中小企業での現場実習および再雇用の機会を提供する。対象者には月額40万ウォンを上限に1~3カ月間参加手当が支給される。

職業紹介サービス

雇用支援センターおよび高齢者人材バンクが、高齢者のための職業紹介サービスを実施している。高齢者人材バンクは、高齢者に無料で職業紹介を行うとともに、職業訓練、職場適応訓練を行っている。

高齢者基準雇用率および雇用延長

従業員300人以上規模の事業主は、基準雇用率(常用労働者数に対する55歳以上の高齢労働者の割合として、業種を考慮して設定したもの)以上の高齢者を雇用するよう努力しなければならない。基準雇用率に満たない場合、事業主は、雇用率履行計画書の提出を求められる。

基準雇用率を超えて、新たにまたは所定の割合以上の高齢者を雇う事業主に対しては、5年間にわたり四半期ごとに、所定の割合を超える労働者1人あたり18万ウォンが支給される。さらに3カ月以上失業登録していた50歳以上の者を雇用支援センターなどの斡旋を通じて雇用保険の被保険者として雇った事業主に対しては、12カ月間15~60万ウォンが支給される。また、57歳以上の定年年齢を設定している事業主が定年年齢に達した労働者を引き続き雇用(または3カ月以内に再雇用)する場合は6カ月間(被用者500人以下の製造業は12カ月間)、30万ウォンが支給される。

賃金ピーク制

韓国政府は、一定年齢を超えた場合、その生産性に応じて賃金を削減する代わりに定年保障や一定期間の雇用延長を行う賃金ピーク制の導入を奨励している。賃金ピーク制を導入した事業所を対象に、当該事業所において18カ月以上勤務した者であって10%以上賃金が削減された労働者に対し、1人あたり月額50万ウォンの賃金ピーク制補填手当を支給している。

資料出所:韓国雇用労働部ウェブサイト及び(2012) "2012 Employment and Labor Policy in Korea"、厚生労働省(2013)「2011-2012海外情勢報告」

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2-6 年齢に関する法制度(定年等関係)

根拠法令:
雇用上の年齢差別禁止および高齢者雇用促進に関する法律
施行年月:
2008年3月
定年制:
事業主には、定年年齢を60歳以上とするよう努力する義務が課されている。従業員300人以上規模の事業主は、定年年齢が著しく低い場合、定年延長計画の提出を求められたり、雇用労働部長官から定年延長を勧告されたりすることがある。
高齢者の解雇に対する特別な保護等:
「雇用上の年齢差別禁止および高齢者雇用促進に関する法律」に基づき、解雇をはじめ、募集・採用、賃金および賃金以外の金品支給、福利厚生、教育・訓練と配置、転勤、昇進、退職、解雇などあらゆる分野で年齢を理由とする差別が禁止されている。

資料出所:厚生労働省(2013)「2011-2012海外情勢報告」

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2-7 障害者雇用対策

根拠法:
障害者の雇用促進および職業再活法
雇用主への規制:
常時50人以上の労働者を雇用する民間企業は2.5%、国および地方自治体、公共機関は3%に相当する数の障害者を雇用することが義務づけられている(法定雇用率)。
手続き等:
負担金の徴収方法
常時100人以上を雇用する事業主が雇用義務を履行しない場合、法定雇用率に従って雇用しなければならない障害者数から毎月常時雇用している障害者数を引いた未達成人員数に負担基礎額を乗じた額を月単位で算定し、年間合計額を障害者雇用負担金として納付しなければならない。

助成方法
障害者雇用奨励金は、雇用する障害者数から義務雇用しなければならない障害者数を引いた数に対し、最低賃金法に定める最低賃金額の範囲で支給される。

資料出所:労働政策研究・研修機構(2012.9)「海外労働情報

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:韓国」