JILPTリサーチアイ 第73回
「透明かつ予見可能な労働条件指令」とドイツ労働法─EU指令の国内法化をめぐる一断面

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労働法・労使関係部門 主任研究員(労働法専攻) 山本 陽大

2022年6月29日(水曜)掲載

Ⅰ.はじめに

近時、いわゆる「シフト制労働」が、労働政策の分野においてもにわかに注目を集めている。シフト制労働とは、労働日や労働時間が、労働契約の締結時点においては確定的に定められておらず、使用者のその都度の労働需要に応じて(例えば、1ヶ月や1週間ごとに作成される勤務シフト上で「シフトを入れる」ことによって)初めて確定する労働形態を指す。このようなシフト制労働が抱える問題性は、とりわけコロナ禍においては、店舗の休業や時短営業を理由に労働者が「シフトを入れられない」という事態が、雇用調整助成金などの支給要件としての「休業」に当たるかという形で顕在化したが、コロナ禍以前から既に、シフトの削減の適法性をめぐって法的紛争がいくつか生起していた[注1]。そのため、厚生労働省も、2022年1月7日には、「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(以下、留意事項)[注2]をとりまとめ、公表するといった政策的対応を行っている。もっとも、かかる留意事項はシフト制労働について新たな立法措置を講じるものではなく、また日本では、シフト制労働をめぐり労働法学上もほとんど議論がみられない状況にある。一方、海外に目を向けると、特に欧州諸国においては、上記の意味でのシフト制労働に相当ないし類似する労働形態であるオンコールワーク(呼出労働)やゼロ時間契約を対象として、労働法上の規制や議論がみられるところとなっている。

このような現状を踏まえ、労働政策研究・研修機構(JILPT)では、諸外国(EU、ドイツ、フランス、イギリス)における上記の労働形態をめぐる法規制について調査研究を実施し、その成果を2021年11月に刊行された労働法律旬報1996号の誌面を借り、濱口桂一郎=山本陽大=石川茉莉=滝原啓允「[特集]諸外国における『シフト制』労働をめぐる法規制の展開」として公表した。なかでも、同特集所収の濱口論文[注3]では、EUの「透明かつ予見可能な労働条件指令」(以下、労働条件指令)[注4]について、主に上記の意味でのシフト制労働に相当する労働形態に対する(手続的・実体的)規制という観点から詳細な分析がなされている。もっとも、同指令の21条は国内法転換期限を2022年8月1日と定めていたところ、EU加盟国であるドイツ・フランスにおいては、2021年11月時点では国内法化の動きはいまだみられなかったことから、この点については上記特集へ反映できていなかった。

しかし、その後の2022年1月以降、ドイツでは、労働条件指令を国内法化するための法案[注5]が公表されるに至っている。詳細については後述する通り、かかる法案は労働条件指令の内容を国内法の形へ転換するために、ドイツにおける複数の労働関係法令の改正案を示すものとなっている。そこで、本稿では、上記特集公表後のフォローアップを兼ねて、(シフト制労働に関するもの以外も含め)今回の法案について検討することにより、ドイツにおけるEU指令の国内法化プロセスの一断面を覗いてみることとしたい。

Ⅱ.法案の概要

上記法案の正式名称は、「市民法の領域における透明かつ予見可能な労働条件に関するEU指令の国内法化に関する法律草案(Gesetzes zur Umsetzung der Richtlinie (EU) 2019/1152 über transparente und vorhersehbare Arbeitsbedingungen in der Europäischen Union im Bereich des Zivilrechts)」であり、2022年1月に連邦労働社会省(BMAS)による参事官草案(Referentenentwurf)が公表され、続く4月には政府草案(Regierungsentwurf)が公表されている。いずれもいわゆる条項法(Artikelgesetz)であり、ドイツにおける複数の労働関係法令の改正が一括して規定されているが、本稿ではこれらのうち政府草案(以下、政府草案を指して本法案という)についてとり上げる。

本法案は、ドイツにおける証明書法、職業訓練法、手工業法(Handwerksordnung)、労働者派遣法、船員法、営業法、パートタイム・有期法、麻酔及び手術助手法、非常時救護員法、調剤助手法(PTA-Berufsgesetz)および労働者送出法の改正を内容としているが、このうち(シフト制労働に関する規制を含め)本法案の主要な柱となっているのは、証明書法およびパートタイム・有期法の改正である。そこで、以下では、本法案に付されている理由書(Begründung:以下、法案理由書)も参照しながら、まずはこれら二法に関する改正内容についてみてみることとしよう。

Ⅲ.証明書法の改正

ドイツにおける証明書法(NachwG)[注6]は、1991年10月14日のEU(当時はEC)におけるいわゆる雇用条件通知指令[注7]を国内法化したものであり、使用者に対し労働契約上の基本的な諸条件を記した書面(以下、証明書)を労働者に手交すべき義務(労働条件明示義務)を課すことを主たる内容としているが、本法案は以下の点での改正を提案している。

まず第一に、適用範囲の拡大である。従来の証明書法1条1項は、最大1ヶ月までの臨時的要員として雇い入れられた労働者を、同法の適用対象から除外していたが、労働条件指令1条はこのような短期の雇用についての適用除外を認めていないことから、本法案による新たな証明書法1条1項では、上記の適用除外部分は削除され、(シフト制労働の場合を含め)すべての労働者に対して同法が適用されることとなった。一方、労働条件指令1条3項は、連続する4週間の労働時間が週平均で3時間以下の労働者については適用除外とすることを加盟国に認めているが、本法案ではこのようなオプションは利用されていない。

第二に、明示すべき労働条件の拡充である。すなわち、本法案は、証明書法2条に基づいて使用者が証明書に記載しなければならない労働条件として、同条の1項2文において従来から列挙されていたものに加え、新たに①有期労働契約が締結される場合には、その終了日(新3号)、②労働者が労働の場所を自由に選択できる場合には、その旨(新4号)、③試用期間が合意されている場合には、その長さ(新6号)、④超過勤務に対する報酬および(かかる報酬を含めた)労働賃金の支払方法(新7号)、⑤休憩および休息時間、並びに交代制勤務の場合には交代制の内容(例えば三交代制)および勤務割変更の際の要件(新8号)、⑥呼出労働の場合には、労働者が(使用者の)労働需要に応じて労働給付を行う旨の合意、報酬が支払われる最低時間数、労働給付の履行が求められる時間的範囲(参照日時)、使用者が労働時間の配置を通知する際に遵守すべき予告期間(新9号)、⑦超過勤務について合意がある場合には、それが命じられうる旨およびその要件(新10号)、⑧使用者が提供する継続的職業訓練(Fortbildung)に関する請求権が存在する場合には、その旨(新12号)、⑨事業所老齢年金制度が年金保険機関(Versorgungsträger)によって運営されている場合、その名称および所在地(新13号)、⑩労働関係の解約告知の際に、使用者および労働者が遵守すべき手続、解約告知期間、解雇制限訴訟の出訴期間[注8](新14号)、⑪使用者が教会である場合に、教会法に基づいて労働条件を決定する対等構成委員会による規制(新15号)が、それぞれ証明書への記載対象として追加された[注9]。これらはいずれも、労働条件指令4条2項各号に対応するものであるが、法案理由書によれば、上記のうち④(特に超過勤務に対する報酬)および⑦については、従来の証明書法のもとでも解釈によって証明書への記載対象とされており、本法案はそれを明文化したにとどまるのに対し、①、②、③、⑤、⑥、⑧、⑨および⑩については、完全に新設されたものである。このうち、冒頭で述べたシフト制労働との関係で重要であるのは⑥にかかる改正であるが、この点についてはで改めてとり上げる。

第三に、本法案では、使用者が労働者に対して証明書を手交すべき期限が従来よりも大幅に短縮されている。すなわち、従来は証明書法2条1項1文により、かかる期限は、当該労働関係の始期として合意された時点から1ヶ月以内に設定されていた。これに対し、本法案では、上記規定が改正されるとともに新たに4文が新設され、2文において列挙されている労働条件のうち、1号(契約当事者の氏名・名称および住所)、新7号(賃金関係)および新8号(労働時間関係)については、遅くとも労働給付の初日において、また2号(労働関係の始期)から新6号(試用期間関係)まで、新9号(呼出労働関係)および新10号(超過勤務関係)については、当該労働関係の始期として合意された時点から遅くとも7暦日以内に、証明書へ記載のうえ労働者に手交されなければならないこととされている[注10]。これは基本的には労働条件指令5条1項を受けてのものであるが、同指令では労働条件通知の期限について、短いものでも労働の初日から7暦日以内に設定されているのに対し、本法案では上記の通り賃金や労働時間といった重要な労働条件については、より短い期限が設定されている点が注目されよう[注11]

第四に、過料規定の新設である。すなわち、本法案は、証明書法の新4条として、使用者が同法2条の規定に反し、証明書を労働者に手交しなかった場合、不正確な形で手交した場合、不完全な形で手交した場合、定められた方法により手交しなかった場合、または適時に手交しなかった場合を、それぞれ秩序違反(Ordnungswidrig)とし(1項1号)、これに対する制裁として2,000ユーロを上限とする過料が科されうる旨(2項)を規定している[注12]。これは、労働条件指令を転換した国内法への違反に対して罰則を定めることを各加盟国に求める同指令19条を受けてのものといえる。従来の証明書法は、過料による強制を規定しておらず、その違反に対しては私法上の救済のみが予定されていたが[注13]、労働条件指令を契機とした本法案によって、今後その性格には大きな変更が生じることも予想されよう[注14]

Ⅳ.パートタイム・有期法の改正

続いて、本法案のうち、パートタイム・有期法(TzBfG)[注15]にかかる改正部分についてみておきたい。同法は、ドイツにおけるパートタイム労働および有期労働契約について規律するものであるが、本法案は主に以下の三点について改正を提案している。

まず第一は、労働者が呼出労働に従事する場合における予見可能性の向上である。「呼出労働(Arbeit auf Abruf)」とは、労働者による労働給付が労働需要の発生に応じた使用者からの呼出しに従って行われる労働形態を指し、具体的な労働日や労働時間帯(これらを併せて「労働時間の配置」という)が労働契約締結時点では定められていない点で、冒頭でみたシフト制労働に相当するものである。そして、ドイツのパートタイム・有期法は従来から、かかる呼出労働をパートタイム労働の一種と位置付け、その12条において規制を行ってきた[注16]。これを前提に、本法案は、同条に新3項を創設し、使用者はその間に当該使用者からの要請に基づいて労働が行われうる時間的範囲(「参照日時〔Referenzstunden und Referenztage〕」という)を定める義務を負う旨(1文)、および労働者は、使用者が当該労働者に対しその都度の労働時間の配置を少なくとも4日前にあらかじめ通知し、かつ労働給付が第1文により定められた参照日時のなかで行われる場合にのみ、労働義務を負う旨(2文)を規定するものとなっている。

この点、従来のパートタイム・有期法12条は、労働者と使用者が呼出労働の合意を行う場面について、週および一日の労働時間の長さを定めるべきことを求めつつ(1項2文)、週労働時間が定められていない場合には、週20時間の労働時間が定められたものとみなし(同3文)、また一日の労働時間が定められていない場合には、使用者は呼出しの都度、最低でも連続した3時間について労働給付を利用しなければならない旨(同4文)を定めるともに、具体的な労働時間の配置については最低でも4日前に通知しなければならないとする(事前予告期間:旧3項)などの形で、呼出労働に従事する労働者の予見可能性を確保しようとしてきた。しかし、従来の規制のもとでは、何月何日の何時から何時までの間に使用者からの呼出しが行われうるのかについては予見可能性を欠いていたことから、本法案は、上記の通りの規制を新たに導入することで、かかる予見可能性を担保しようとするものとなっている。これは、労働条件指令10条を受けたものであるが、法案理由書によれば、上記の参照日時がそもそも定められていない場合や、参照日時以外の時間帯に使用者からの呼出しがあった場合には、労働者は労働給付の履行を拒絶できると解されている。

また、上記の諸規制はいずれも実体的な規制であるが、これによる予見可能性は、本法案が提案する証明書法の改正によって、手続的にも補完されている。すなわち、でみた通り、本法案によれば、労働者が呼出労働に従事する場合について、使用者は証明書法に基づいて手交すべき証明書のなかで、呼出労働の合意のほか、参照日時および事前予告期間についても記載すべきこととされている(2条1項2文新9号)[注17]。また、これらに加え、本法案は、報酬が支払われる最低時間数についても新たに証明書への記載事項としており(同)、これによって、呼出労働に従事する労働者の収入面における予見可能性をも高めようとしているといえよう。このように、ドイツにおいて呼出労働をめぐり複数の角度から労働者の予見可能性を担保しようとする法政策が進められていることは、でみたように、シフト制労働に関して留意事項の公表などの政策的動向がみられる日本にとっても参考とすべきところが大きいように思われる。

第二に、安定的な雇用への移行に関する使用者の説明義務の導入である。この点、従来のパートタイム・有期法7条3項は、労働者が労働時間の長さに関する希望を使用者へ通知していた場合において、相応の労働ポストについて情報提供すべき義務を、また同法18条は、有期雇用労働者に対して、期間の定めのない相応の労働ポストについて情報提供すべき義務を、それぞれ使用者に課していた。これを前提に、本法案は、勤続年数6ヶ月以上の労働者が使用者に対し、労働時間の長さについてあるいは無期労働契約を締結することについての希望を文面形式(Textform[注18]により通知していた場合には、使用者はかかる通知の到達から1ヶ月以内に、理由を付したうえで文面形式による回答を行わなければならない旨を規定している(7条新3項1文、18条新2項1文)[注19]。これは、労働条件指令12条を受けたものであるが、典型的にはパートタイム労働者がフルタイムでの雇用への移行を希望している場面、あるいは有期雇用労働者が無期雇用への移行を希望している場面において、使用者に説明義務を課すことで、より安定的な雇用への移行を促進する法政策として理解できよう。なお、法案理由書は、上記のパートタイム・有期法7条新3項1文の規定は、先ほどみた呼出労働に従事する労働者が、労働時間について予見可能性の高い雇用への移行を希望している場合にも適用があると解している。

第三に、有期労働契約にかかる試用期間の制限である。すなわち、本法案は、労働条件指令8条2項を受けて、パートタイム・有期法の15条に新3項を追加し、そこにおいて、期間の定めのある労働関係について試用期間を定める場合には、その長さは予定された契約期間と職務の性質からみて比例的なものとなるようにしなければならない旨を規定している。法案理由書によれば、このような意味で比例性を欠く長さの試用期間が定められた場合には、かかる定めは無効となる。

Ⅴ.その他の改正

以上でみたほか、で前述した通り、本法案は労働者派遣法や労働者送出法などといった重要法令についても改正を提案しているのであるが、紙幅の関係上割愛し、最後に営業法の改正について簡単に触れておきたい。

ドイツにおける営業法(GewO)[注20]は、その第7章Ⅰ(105条~110条)において、労働契約に適用される基本原則を定めているのであるが、本法案は、営業法へ新たに111条を創設し、使用者が、法律、労働協約または事業所協定により、労働者に対し労働給付の履行に必要な継続的職業訓練を提供する義務を負っている場合には、その費用を労働者に負わせることがあってはならない旨(1項)、およびかかる第1項に基づく継続的職業訓練は、所定労働時間内に行われるべきであり(2項1文)、所定労働時間外に行わざるをえない場合には、その時間は労働時間とみなす旨(同項2文)を、それぞれ規定することを提案している。これらはいずれも労働条件指令13条を受けてのものであるが、日本と同様、職場へのAIの導入など雇用社会のデジタル化が進展するなかで労働者のReskillingが重要な政策課題[注21]となっているドイツにおいて、継続的職業訓練をめぐる法的規律が(部分的とはいえ)明文化されようとしていることの意義は少なくないといえよう。

脚注

注1 ホームケア事件・横浜地判令2.3.26労判1236号91頁、シルバーハート事件・東京地判令2.11.25労判1245号27頁。

注2 「厚生労働省|いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項新しいウィンドウ」から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年6月15日〕。

注3 濱口桂一郎「EUにおける『シフト制』労働に対する法規制」労働法律旬報1996号(2021年)7頁。.

注4 Directive (EU) 2019/1152 of the European Parliament and of the Council of 20 June 2019 on transparent and predictable working conditions in the European Union. 同指令については、前掲注3の濱口論文のほか、濱野恵「EUにおける透明で予測可能な労働条件に関する指令」外国の立法283号(2020年)31頁、濱口桂一郎『新・EUの労働法政策』(労働政策研究・研修機構、2022年)618頁以下にも詳しい。

注5 連邦労働社会省のHP(BMAS - Umsetzung der Arbeitsbedingungenrichtlinie im Zivilrechtneues Fenster)から閲覧が可能である〔最終アクセス日:2022年6月15日〕。

注6 証明書法については、その邦語訳も含め、山本陽大=井川志郎=植村新=榊原嘉明『現代ドイツ労働法令集』(労働政策研究・研修機構、2022年)17頁以下〔井川志郎〕を参照。

注7 Council Directive of 14 October 1991 on employer's obligation to inform employees of the condition applicable to the contract or employment relationship (91/533/EEC). 同指令については、濱口・前掲注4 書618頁以下を参照。

注8 この点、ドイツにおいては、解雇制限法4条1文により解雇(制限)訴訟の出訴期間が解雇通知の到達から3週間に制限されており、かかる期間内に提訴がなされなかった場合には、同法7条により当該解雇は遡及的に有効なものとみなされることとなっているが、法案理由書は、使用者が証明書法に従い出訴期間を明示しなかった場合であっても、解雇制限法7条自体は適用されると解している。

注9 またこのほか、本法案は、4週間以上ドイツ国外で就労する労働者(証明書法2条新2項)および労働者送出指令(1996/71/EC)に基づき外国で就労する労働者(同条新3項)については、証明書法2条1項2文各号において列挙されたものに追加して証明書に記載すべき労働条件を、新たに規定している。

注10 それ以外の労働条件については、従来通り、当該労働関係の始期として合意された時点から1ヶ月以内が期限となっている。

注11 これは、加盟国に対し、労働者にとってより有利な規定を置くことを認める労働条件指令20条2項に基づくものと解される。

注12 ただし、法案理由書は、かかる過料の算定(秩序違反法17条3項2文前段)に際しては、特に中小企業の場合、その経済状況が考慮されなければならないことを指摘している。

注13 Vgl. Müller-Glöge/Preis/Schmidt (Hrsg.), Erfurter Kommentar zum Arbeitsrecht, 21.Aufl., 2021, §2 NachwG Rn.36ff〔Preis〕.

注14 ドイツにおける労働関係法令は、労働関係に対して私法上の規制を行う労働契約法(Arbeitsvertragsrecht)と労働者を危険から保護する観点からその遵守について過料や刑罰による国家的監督・制裁を予定している労働保護法(Arbeitsschutzrecht)に大別されるのが一般的であるが(vgl. Waltermann, Arbeitsrecht, 19.Aufl., 2018, S.10f)、代表的な労働関係法令集であるC.H.BECK社のArbeitsgesetzeでは、証明書法は従来、労働契約法の領域に分類されている。

注15 パートタイム・有期法については、その邦語訳も含め、山本ほか・前掲注6 書283頁以下〔山本陽大〕を参照。

注16 詳細については、山本陽大「ドイツにおける呼出労働をめぐる法規制の現状」労働法律旬報1996号(2021年)14頁を参照。

注17 この点、従来は、呼出労働の場面においては、証明書法2条1項2文(旧)7号に基づき、週または一日の労働時間が定められた場合に、それらが証明書への記載対象となるにとどまっていた。

注18 かかる「文面形式」については、民法典126b条において要件が規定されているが、具体的にはEメールなどがこれに該当する。

注19 ただし、使用者側の負担軽減を図る観点から、使用者が理由を付して回答を行ってから12ヶ月以内に労働者が再度希望を通知した場合には、労働時間の長さにかかる希望については使用者は口頭で回答すれば足り、また無期雇用への移行にかかる希望については、使用者の説明義務は適用されないこととなっている(パートタイム・有期法7条新3項2文、18条新2項2文)。これらもまた、労働条件指令12条を受けてのものである。

注20 営業法については、その邦語訳も含め、山本ほか・前掲注6 書13頁以下〔山本陽大〕を参照。

注21 この点の詳細については、山本陽大『第四次産業革命と労働法政策─“労働4.0”をめぐるドイツ法の動向からみた日本法の課題』第4期プロジェクト研究シリーズNo.3(労働政策研究・研修機構、2022年)19頁以下を参照。