資料シリーズ No.183
日本的雇用システムと法政策の歴史的変遷
―バブル崩壊以降の労働政策の変遷―

平成29年3月31日

概要

研究の目的

プロジェクト研究サブテーマ「雇用システムと法プロジェクト」においては、今後の労働政策の中長期的な方向付けに資するため、日本的雇用システムの変化を把握分析し、今後の変化を見通しつつ、政策上の課題を提示することを目的としている。本資料では、「日本の労働法政策の変化と課題を整理するための作業」の一環として、バブル崩壊後の1996年以降の時期を大きく3つに区切ったそれぞれの期間において、我が国で講じられてきた労働法政策のうち、日本的雇用システムに関わるものを中心に整理し、基礎資料としてとりまとめた。

研究の方法

文献調査

主な事実発見

[1996年~2006年]

1995年の第8次雇用対策基本計画では、雇用対策の基本的事項の第1に「雇用の創出と失業なき労働移動の実現」が挙げられるなど、雇用の安定を最重要視してきたこれまでの雇用政策理念に変化がみられたが、実際に雇用維持から「雇用の創出と失業なき労働移動の実現」に政策転換がみられたのは1999年11月の「経済新生対策」における雇用対策から、いわゆるITバブル崩壊期にかけての時期であった。

1993年からの「就職氷河期」と呼ばれる新規学卒者の就職が極めて厳しい状況は長期化し、若年者の失業率が急速に高まった。また、フリーターと呼ばれる若年非正規労働者が増加・滞留し、初めて学卒者以外の若年者雇用対策が政策課題となった。

職業紹介事業や労働者派遣事業のネガティブリスト化、労働基準法改正による労働時間や契約期間の規制緩和等が行われたほか、個別労働紛争解決のための行政・司法上の専門手続・サービスを整備する個別労働紛争解決促進法や労働審判法が制定された。

さらには、福祉増進の法から差別禁止法へと転換する男女雇用機会均等法の改正、育児・介護休業法の制定や、厚生労働省が誕生し厚生・労働行政が1本の法律で連携する次世代育成支援対策推進法の制定がなされた。

[2007年~2012年]

リーマンショックを含む世界同時不況期において、雇用対策は雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金による雇用維持支援に回帰した。また、「派遣切り」の発生等を受けて、非正規雇用等雇用保険で支えられない人に対する職業能力開発等の支援も開始された。さらに、これまで緩和する方向に改正されてきた労働者派遣を規制する方向での法改正や、短時間労働者、派遣労働者に対して雇用保険の適用が拡大されるなど、セーフティネットの拡充が進んだ。

2011年の東日本大震災や、円高、原油高による景気後退局面における雇用対策についても、雇用創出事業の増額・延長とともに、卒業後3年以内の既卒者等を正規雇用として雇い入れる事業主への奨励金、雇用調整助成金の要件緩和など長期雇用・雇用維持重視という点で日本的雇用と親和的なものであった。

[2013年以降]

社会保障の安定のため消費税率の段階的引上げが予定される中で景気拡大を持続させるため、政府は2014年春闘に先がけて労使に対し異例の賃上げ要請を行った。

2012年夏以降、雇用情勢は改善傾向から人手不足基調となり、雇用対策としては女性、若者の活躍促進等が挙げられるなど、全員参加型社会を目指すものとなっている。また、成長戦略の一環として、衰退部門から成長部門への人材移動を促すとされた中で、雇用政策は「過度な雇用維持型から失業なき労働移動推進型へ」の転換が進められている。

政策的インプリケーション・政策への貢献

今後の労働政策立案の参考資料となることが期待される。

本文

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研究の区分

研究期間

平成28年

担当者

永田 有
労働政策研究・研修機構 統括研究員

関連の研究成果

入手方法等

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