労働政策レポート No.9
女性労働政策の展開―「正義」「活用」「福祉」の視点から―

平成 23年 10月15日

概要

研究の目的と方法

男女間賃金格差の解消に向けた調査研究、女性の再就職に関する調査研究、出産育児期の就業継続に関する調査研究等、当機構が手掛けてきた女性労働関係の調査研究は数多い。特に労働者や企業を対象とするアンケート調査を用いた実証研究は数多く積み上げられて来ていると言っていいだろう。

一方、女性労働にかかる法政策そのものを対象とした研究は、当機構ではそれほど多くは行われてこなかった。その中で、当機構が2009年度から取り組んでいるワークライフバランス比較法研究の中間報告では、日本及び先進各国のワークライフバランス政策が、もともと男女平等あるいは性差別禁止といったことを法規範的契機としながら、様々な他の政策要請と融合する形で発展している状況を明らかにしている。

このことを踏まえると、我が国において現在、男女雇用機会均等法政策、育児・介護休業法政策、あるいはパートタイム労働法政策としてそれぞれの体系が構築されている法政策においても、法規範的契機や、発展過程で融合されてきた他の政策的要請等を丁寧にみていくことによって、残された課題や、本来追求するべき政策効果等を改めて明らかにできることが予想される。

この労働政策レポートは、そのような観点から、現在の法政策の淵源をたどる意味も含め、戦後の女性労働政策の発展過程を記述している。その際、「正義」「活用」「福祉」の3つの政策視点を試論として提示し、これを用いて個々の政策やその変遷を分析している。

主な事実発見

上記3視点からの分析の結果として、近年女性労働行政において「活用」の視点が弱まり、女性労働力活用に関する国民へのメッセージが希薄になっている点等幾つかの指摘を行っている。

政策的含意

今後は、男女雇用機会均等法政策、育児・介護休業法政策、パートタイム労働法政策等の各法政策を、それぞれ単独にではなくその相互関係を見極めながら推進することが、我が国の持続的発展に寄与し、労働者の幸福につながる女性労働政策として求められる。

政策への貢献

女性労働に係る法政策について、網羅的に、かつ時系列的に整理した資料は、少なくとも近年においては、あまり世の中に提供されていないので、国または地方公共団体において、女性労働関係政策の立案に当たる方々等の執務資料や研修資料として活用が期待される。

また、試論として提示した「正義」「活用」「福祉」の政策視点は、女性労働をめぐる法政策が、男女平等、ジェンダーバイアス解消といった単一の方向性のみで発展してきたものではなく、今後も様々な経済社会の課題を解決を担うべき政策課題として多角的に議論されるべき問題であることについての留意を促し、さらなる政策論議を喚起することを期待している。

本文

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執筆者

伊岐典子
独立行政法人 労働政策研究・研修機構主席統括研究員

研究期間

平成22~23年度

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