調査シリーズNo.222
働く人の仕事と健康、
管理職の職場マネジメントに関する調査結果

2022年3月31日

概要

研究の目的

労働時間を軸に、働く人々の就業状態や健康、管理職による職場マネジメントの実態等を明らかにすることを通じて、労働時間や職場マネジメントの在り方、過重労働の予防や働く人々の健康確保に資する方策を分析すべく実施したもの。

研究の方法

調査方法
調査会社が保有する個人登録モニターに対するWeb調査であり、回答者には、PC等のブラウザを通じて回答を求めた。
調査対象
回答時に日本国内で収入を得る仕事を有する自営業者等を除く20~65歳で、週所定労働時間が35時間以上の者。回収目標は10,000サンプル。
本調査では管理職者のサンプルを収集する必要性から、賃金構造基本統計調査に基づき、男女別で20歳代から60歳代ごとに、管理職×大卒、管理職×大卒以外、管理職以外×大卒、管理職以外×大卒以外の4種を割付けた。したがって、割り付けたセルは計40。実査の過程で目標サイズに不足するセルが生じた場合は、年齢や学歴が近似する別のセルに再割り当てを行った。なお、賃金構造基本統計調査に基づく限り、業種・職種による割付けは不能であるため、大卒か大卒以外かの最終学歴により業種・職種は分散されうると推定した。
調査項目
概略、フェース項目、職場の状況、職場のマネジメント、労働時間、就業や生活に関する意識、健康状態 等。
調査実施期間
令和2年11月下旬から同年12月上旬の約2週間。
有効回答サンプル
10,998。

主な事実発見

「労働時間をめぐる動向」(第2章)では、労働時間の動向として、属性別に労働時間の長さの違いなどについて検討している。性別・年代別では、男性、30~40歳代で実労働時間が長く、また、残業が多い。職種別では、 建設職で実労働時間が長く、管理職や専門職で残業が多い。業種別では、建設、運輸、専門サービスの各業種で実労働時間が長い傾向にある。適用される勤務時間制度別では、役職者でも、通常の労働時間制度やフレックスタイム制の適用割合が高くなっている。出退勤管理方法について見ると、建設と公務、小規模企業、上級役職者では、出退勤管理が適切に行われているとは言い難い状況にある。実労働時間の長さと残業の頻度については、みなし労働時間制の適用者や管理監督者で実労働時間が長い傾向にあり、また、残業が多くなっている(図表2-2-9, 2-2-10)。なお、企業が行っている働き方改革と実労働時間の関係については、特段明確な傾向は観察されない。

「新型コロナウイルス感染症の影響と在宅勤務の状況」(第2章補論)では、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う仕事や生活への影響などについて検討している。新型コロナウイルス感染症拡大の仕事全般への影響としては、労働時間や収入の減少が見られる。業種別では、飲食・宿泊・娯楽、製造業で影響が大きい。在宅勤務の実施については、職種、業種、企業規模、地域による差がある。例えば、従業員規模の大きな在首都圏の情報通信業での実施割合が高いと推察される。在宅勤務の動向を見ると、1回目の緊急事態宣言後は実施割合が高かったが、同宣言解除後は揺り戻し、実施割合は減少している。在宅勤務による変化については、仕事の効率が「下がった」が約4割、家事等の時間が「増えた」が4割超などとなっている。また、ワーク・ライフ・バランスにとって良い効果がある傾向が窺われる。一方、労働時間や健康への影響は分かれるようである(図表2-補-3)。在宅勤務によって感じる不安としては、コミュニケーション、進捗共有、出社必須業務の遅滞、信頼関係の維持で懸念が見られる。

「働き方改革の状況」(第3章)では、企業における業務改善など働き方改革の取組みの状況や、働き方改革と労働時間の長さの関係について検討している。業種別では、金融・保険、公務、情報通信の各業種で取組み割合が高い(図表3-1-1, 3-1-8, 3-1-15)。従業員規模別では、規模が大きいほど取組みの割合が高い。職種別では、管理職、専門職で企業の取組みに対する認知の割合が高くなっている。職位別では、職位が上がるほど取組みに対する認知の割合が高い。勤務時間制度別では、管理監督者、裁量労働制適用者、フレックスタイム制適用者について取組みにかかる認知の割合が高くなっている。労働組合の有無別では、労働組合が「ない」場合よりも「ある」場合の方が、企業の取組み割合が高くなっている。企業の働き方改革の取組みと実労働時間との関係については、働き方改革の効果は依然明確にはなっていないと推察される。なお、労働組合が独自に推進する取組みは、実労働時間との関係では効果が見られるようであり、また、労働者自身が持つワーク・ライフ・バランス確保に対する意識は、実労働時間を抑制するようである。健康や睡眠との関係については、取り組む改革の内容によっては健康維持や睡眠の充足に貢献するようである。

「管理職の働き方と職場マネジメント」(第4章)では、管理職の働き方と労働時間の長さなどとの関係について検討している。管理職は自分自身が担当する仕事を持ちながら(プレイヤーの役割)、職場の管理を行っている(マネジャーの役割)が、マネジメント-プレイングの度合いから見ると、特にラインの課長職は全体的に時間が足りていない状況にある(図表4-1-3, 4-1-4)。そのように大きく二つの役割を持つ役職者は、一般に「管理監督者」として労働時間規制の適用を除外される法的地位にあるが、調査結果を見ると、部長以下の特にスタッフ管理職は、管理監督者該当性に疑いがある状況にある。職場マネジメントに関しては、役員未満は忙しく、職場管理について苦労が多い。月当たり実労働時間との関係では、ライン職の課長は実労働時間が長い傾向にあり、また、残業についても、比較的多い傾向が見られる。こうしたことは、職場マネジメントについて「積極的に取り組んでいる」ことと関係がある可能性が考えられる。年休取得状況の点からは、職位が高いほど取得しない(あるいは取得できない)傾向が見て取れる。

「仕事・働き方と健康状態」(第5章)では、属性や実労働時間の長さによる心身の健康状態や睡眠、また、それらの仕事や生活への影響、過重負荷に対する認識について検討している。身体的健康状態については、自覚症状を認識している者は3割弱ほどあり(腰等の痛み、頭痛等)、健康診断についても、受診者の約4割に異常が見られ(脂質、BMI、血圧等)これらは就業環境と関係している可能性も考えられる。メンタルヘルスについては、4割超に不調(K6スコア5点以上)が見られ、年齢、配偶者の有無、業種、職種、役職、実労働時間と関係している可能性がある(図表5-1-4)。睡眠状況に関しては、年齢や実労働時間による差があるようである。また、睡眠不足は、運輸等の業種でも見られ、業務との関連性も考えられる。睡眠不足の理由は、私的理由が多いが、残業の頻度や長さ、あるいは通勤時間の長さとの関連がありそうである。こうした健康状態や睡眠状況は、業務や家庭生活上の問題とも関連があると見られるが、表出する問題の認識としては、不注意による仕事のミスとして現れ、また、ワーク・ライフ・バランスの阻害の認識としては、若年層や長時間労働の層で割合が高くなっている。過重労働の認識としては、仕事の質・量の変化、パワハラを受けたこと、役割・地位が変化したこと、長時間労働を行ったこと等が原因となっているようである。ただ、こうしたことは、年齢、業種、職種、役職によって相違が見られる状況にある。

政策的インプリケーション

労働時間の長さが仕事と生活の様々な面に影響を与えることを考慮に入れた上で、政策や実務の在り方を考えていく必要がある。

政策への貢献

政策を検討する際の基礎的資料とされうる。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「働き方改革の中の労働者と企業の行動戦略に関する研究」
サブテーマ「労働時間・賃金等の人事管理に関する調査研究」

研究期間

令和2~3年度

執筆者

池添 弘邦
労働政策研究・研修機構  副統括研究員
小倉 一哉
早稲田大学商学学術院 教授
高見 具広
労働政策研究・研修機構  副主任研究員
藤本 隆史
労働政策研究・研修機構 リサーチアソシエイト

関連の研究成果

入手方法等

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