労働政策研究報告書No.128
仕事特性・個人特性と労働時間

平成23年3月4日

概要

研究の目的と方法

本報告書はDP10-02「仕事特性と個人特性から見たホワイトカラーの労働時間」で今後の課題とした下記3点について、新たに労働者個人に対するアンケート調査を実施し、分析したものである。

  1. 「仕事特性」について、顧客や社内の他部門、協力会社などとの関係性の強弱と労働時間の関係を検証すること
  2. 仕事余暇志向以外の「個人特性」と労働時間の関係を検証すること
  3. 管理職の仕事の性質についてより精緻に検討すること

主な事実発見

(1).「仕事特性」に関する主な事実発見
  1. 他社・他者との関係性の強さが労働時間を長くする
  2. 自らの業務目標の明確さや進め方の裁量度の高さが労働時間を短くする
  3. 上司が残業を当然と考えていると労働時間が長くなる
  4. 上司が個々の部下の業務負担等を考慮していないと労働時間が長くなる
(2).「個人特性」に関する主な事実発見
  1. 自らの仕事や役割に対する目標設定の高さ(まじめさ)が労働時間を長くする
  2. 自らの仕事の出来に関して自己評価が高いと労働時間が長い
  3. 仕事志向が強いほど労働時間が長い
(3).「管理職特性」に関する主な事実発見
  1. 出退勤時間の表面的な柔軟性は労働時間の長さに影響しない
  2. プレーの度合いが高いほど労働時間が長い
  3. 部下の人数が多いほど労働時間が長い
  4. 指導が必要な部下が多いほど労働時間が長い
(4).長時間労働対策

「ノー残業デー」「長時間労働の者やその上司への注意・助言」「退勤時刻の際の終業の呼びかけ・強制消灯」が労働時間を短くする(「IDカード等による労働時間の管理・把握」「自分の労働時間が簡単にわかる仕組み」「定期健診以外での長時間労働やストレスに関するカウンセリング」は影響しなかった)。つまり、長時間労働対策の中でも真に有効な対策は、長時間労働そのものに直接的に働きかける方法である。

政策的含意

以上の事実発見から、長時間労働対策として重要なこととして次の5点を指摘しておきたい。

(1).業務目標・役割の明確化

業務目標・役割が明確化されることによって、「仕事の終わり」が見えやすくなることを意味する。「仕事の終わり」="ゴール"が見えていれば、「いつまでやっても終わらない」という泥沼の長時間労働を回避し得る。

(2).会議や打ち合わせの簡素化と裁量度の強化

会議が不要であるという意味ではなく、他者との関係性を必要最小限に留めるということである。真に必要な会議や打ち合わせに限定し、また内容を精査してムダを省き、同時に業務遂行の裁量度を高めることができれば、長時間労働を是正し得る。

(3).管理職の本来業務であるマネジメント業務の重視

管理職がプレーヤーとしてではなく、マネジャーとしての機能を十分に果たし、部下たちの業務負担や配分等を管理することができれば、部・課内の長時間労働を是正することができるという意味である。

(4).まじめな労働者に対するケアと心身の健康管理

まじめな労働者であっても「働きすぎ」による健康被害に気づかせること、日常の生活習慣に気をつけること、及び「仕事への衝動」が強い労働者を把握する必要性を意味する。また、仕事の区切りの良い時期に一定期間の休暇を設ける仕組みも有効であろう。

(5).有効な長時間労働対策の実施

すでに多くの企業・職場で実践されている対策が、実際に有効な対策であることを啓発し、より多くの企業・職場への導入を促進することで、全体の長時間労働が是正されることを意味する。

本文

研究期間

平成22年度

執筆担当者

小倉一哉
労働政策研究・研修機構主任研究員
藤本隆史
労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.39)。

入手方法等

入手方法

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お問合せ先

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研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263 

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