シェアリングエコノミーの拡大と法律上の問題、労働者保護上の課題

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フランスでもインターネットやスマートフォン等のアプリケーション上にデジタル・プラットフォームを構築して、顧客とサービス提供者をつなぐビジネスモデルが広がりを見せている。配車サービスのUberが先駆的な企業であることからUber化(Ubérisation)とも言われる。配車サービスだけでなく、食事の配達サービスへの展開のほか、家事労働者、家政婦などの家事代行サービスや簡単な日曜大工手伝い、引越しなどを請け負う個人向けサービス業にも広がっている。遊休の資産を活用することによる新規雇用創出の効果が認められるが、既存の法律では規制できない分野を多く含んでおり、労働者保護の観点から課題も指摘されている。

無資格者が請け負う個人向けサービスの問題点

デジタル・プラットフォームを活用した個人向けサービスは、インターネットサイト上に家事などの業務を請け負う求人を書き込み、それを閲覧して応募した労働者に請負で仕事を依頼するかたちで仲介が行われる。フランスではJemepropose、YoupiJob、Helpling、Instacart、Handyといった企業がこうしたサービスを提供している。報酬はインターネットサイト上で支払われることもある。インターネットサイト業者は、仲介手数料として賃金の一定額を徴収するかたちだ(注1)。サービス提供者の資格は原則として問われることがない。専門的な職業訓練を受けた経験のない労働者が仕事を請け負う。

フランスでは、近年、家事労働者、家政婦などの家事代行サービスや簡単な日曜大工手伝い、引越しなどを請け負う個人向けサービス業が拡大している。個人が家事労働者と契約して対価を現金で支払うため、非公式な雇用とされる場合が多い。雇用労働者であるならば手にすることができる保障の対象外となることや、生活保護の不正受給などの問題が指摘されている。

こうした問題に対応するため、「対人サービス振興および社会的団結の諸施策に関する2005年7月26日法」が制定された。家事労働者を正規化して雇用労働者とするための措置である。

仲介がインターネット上という直接対面しないで行われる仲介であるため、発注者と請負労働者の双方に当事者意識を薄くさせているという指摘もある(注2)(注3)

デリバリーサイトの配達員の違法性

食事の配送サービスの担い手を仲介するデジタル・プラットフォームとして、Deliveroo、Foodora、Nestor、UberEatsといった企業が事業を展開している。UberEats は2015年10月にパリ市内で事業を開始した。配車仲介サービス部門が提携する飲食店の料理の注文を受けて、ドライバーが10分以内に配達する。同様のサービスはクリーニングの回収・配達サービスにも見られる。配達にはスクーターが活用される場合が多い。その配達方法が交通法典に抵触する。

交通法典は、商材(販売される物財)のモーター付の車輌(自動車やバイク、スクーターなど)による輸送を厳しく規制し、1999年8月30日の政令は、運送能力証明書の所持と運輸事業従事者としての登録を義務づけている。その取得には、15日間ほどの職業訓練を受ける必要がある。この訓練には、900ユーロから2500ユーロの費用がかかる(注4)

だが、配達員の多くは運送能力証明書を所持しないまま業務に従事している。多くの企業は証明書の保持を義務づけていない。

これに対して、宅配業に従事する労働者を組織する小規模輸送全国労働組合(syndicat national du transport léger)は、実態の把握をしていない企業の姿勢が問題であるとする(注4参照)。

この状況に行政が指導に乗り出す動きは見えない。このため、法規則を遵守している企業が割りを食っている格好だ(注5)

不安定な雇用条件の改善を求める動き

デジタル・プラットフォームを活用したビジネスを展開する企業が引き起こす問題の解決に取り組む団体も活動するようになっている。そうした組織の一つである「Observatoire de l'ubérisation」は、労働者の就労環境の不安定さを次のように問題視する(注6)

勤務時間の柔軟性が増して、学生や失業者などの就業機会が高まる反面、雇用労働者であれば享受できる様々な保障はない。例えば、デリバリー注文サイトの運営会社は、配達員への社会保険料を一切払っていない。配達員は個人事業主とされ、その法規制に従った社会保険と自動車賠償責任保険の納付が義務付けられる。休業時の補償はない。

この状況の改善を求めてドライバーは、雇用労働者に準じる地位を求める運動を起こしている(注6参照)。しかし、時間管理の柔軟性の高さから、雇用関係ではないとの考え方が大勢を占めている(TokTokTok.comの弁護士のコメント)。

プラットフォーム・ビジネス企業の一つ「Take Eat Easy (TEE)」が、2016年7月26日、会社更生法の適用を申請し(注6参照)、仕事の斡旋を受けていた多くの労働者が職を失った。彼らは失業者としての保護を受けるため労働者性の確認を求めてパリ労働裁判所に提訴した。しかし、その労働者性は認められなかった(注7)

タクシー規制との関係で問題が複雑な配車サービス業界

タクシー業界へのプラットフォーム・ビジネスの参入が始まっている。その代表格はUberであるが、既存の業界の反対も根強い。既得権益が多く免許取得が困難なタクシー、比較的免許取得が容易なハイヤー・ドライバーと顧客を仲介する配車サービスのデジタル・プラットフォームを運営する企業、そして配車を請け負う無資格のドライバーの四者の利害が対立する構図となっている。

Uberは、比較的障壁の低いハイヤー業界に2011年に参入して、2014年に「UberPop」というサービスを開始した。

フランスでハイヤー業界は、タクシー不足とタクシー営業許可証の発行数の制限という事情の中で発達した。タクシーの営業許可証は、自治体の首長(パリの場合は警視庁)が発行しているが、既得権益を持つタクシー・ドライバーが競争の激化を懸念して、新規参入業者に対して激しく反発するため、交付数を増やすことは容易ではない。

タクシー不足深刻化の対策として、2009年7月、タクシーに代わる「ドライバー付き観光車両」(Voitures de tourisme avec chauffeur (VTC)に関する規則が定められた(観光サービスの発展および近代化に関する2009年7月22日法))。これがハイヤーに位置づけられる。当初は「観光」に限定されていたが、「タクシー及びドライバー付き運送自動車(Voitures de transport avec chauffeur)に関する2014年10月1日法」が制定され、タクシーのサービスが提供できるようになった。

これに基づいてUberが事業に参入した当初、60人程度だった登録ドライバーの数は、2015年夏時点で4000人(パリ、リヨン、ニース、リールの4都市の合計)までに成長していった(注8)

ドライバーの資格認定の違い

旅客業を担うドライバーになるためには、公的な資格が必要である。VTCドライバーになるためには「permis B」が求められる。これには3年以上の運転経験、身体能力適合証明の取得、外国語の習得を含む250時間以上の講習などを要する。タクシー・ドライバーになるためには「permis B」に加えて、重大な交通違反の経歴がなく、簡単な救助に関する講習の受講、県の指定する医師による適性認定、県が実施する試験の合格といった資格要件が必要だ。試験では交通法規や安全運転に関する知識、運転実技能力のみならず、経営やフランス語能力が問われる。

UberPopサービス開始とタクシー・ドライバーの反発、行政の対応

Uber Franceは、2014年2月に「UberPop」のサービスを開始した。これは、Uberのデジタル・プラットフォーム上で自家用車を利用して旅客輸送を手配するサービスである。UberPopのドライバーには、21歳以上で普通乗用車の免許を取得後1年以上、無犯罪証明書を提出しさえすればいいというものであった。つまり、VTCドライバーの資格なしで、有償・営利で旅客を輸送サービスするというものであり、無資格者による輸送であるとして違法性が指摘された。タクシー・ドライバーからは激しい抗議活動が起きた。

UberPopは2014年3月に違法な労働斡旋の疑いがあるとして経済省下の機関によって摘発された。2014年10月16日には、パリの軽罪裁判所(Tribunal correctionnel de Paris、刑事事件を扱う裁判所)は、UberPopは相乗り(covoiturage)(注9)と考えることはできなく、有償での個人による旅客運送業務であると認定した。Uber Franceに対して10万ユーロの罰金を科すとともに、同社のインターネットサイトに今回の有罪判決を掲載した上で、UberPopの利用者が刑事罰を受ける可能性があることを明記することを命じた(注10)(注11)Uberはこの判決を不服として控訴した。その控訴審を審理したパリ控訴院(Cour d'appel de Paris)は、2015年12月7日、地裁判決を支持して、UberPopを不当商行為であると認定、15万ユーロの罰金刑を科した(注12)

また、法人だけでなく、経営幹部のうち3人に対して虚偽の情報を流した行為について有罪の判決を受けた(注13)

2014年6月には、社会党の国民議会のトーマ・テヴヌー議員などが中心となってタクシーやVTCの定義を明確にするための法案が提出された。法案は国会での審議を経て、タクシー・ハイヤー業の規制に関する法律(LOI n°2014-1104 du 1er octobre 2014 relative aux taxis et aux voitures de transport avec chauffeur(通称テブヌー法))が成立、同年10月1日、施行された。このテブヌー法は、タクシー業やVTCに関する法規則を再定義するとともに、その適切な運用を目的とするものである(注14)UberPopのような新技術を用いた「相乗り」サービスを禁止した。

一方、Uberはテブヌー法が違憲であるとして提訴した。これに提訴に関して、憲法裁判所(Conseil constitutionnel)は、2015年9月22日、合憲との判断を下した。

司法がデジタル・プラットフォームに基づく旅客業に厳しい姿勢を見せるようになるなか、既存のタクシーのドライバーも2014年12月に道路を封鎖するなど対決姿勢を強めた。

2015年3月にはパリ高裁がUberの訴えを認めて、当局が行っている「UberPop」サービスの即時禁止が不当であるとの判断を下した。Uberは司法の場で最終的に違法判断が出されるまでサービス提供を続ける姿勢を貫いていたことから、不満を持つタクシーなどのドライバーが抗議行動を激化した。2015年6月には、地方都市でのUberPopのサービス展開を期に、マルセイユ、ナント、ストラスブールでタクシー業者が抗議行動を起こし、70台の車両が壊され10人が逮捕される事態になった(注15)Uberは、自社のドライバーに対する危険を回避するために、2015年7月に自主的にサービス提供を中止せざるを得なくなった。

既存のタクシー・ドライバーはUberPopを違法なタクシー斡旋業であるとして告訴した。虚偽の商行為の実行だけでなく、違法なタクシー営業の共犯や電子情報の違法な取り扱い及び収集、個人情報の違法収集(例えば、ドライバーの無罪証明書の収集など)などの罪で、法人と経営幹部の2人が起訴されていたのである。2016年6月9日、パリの軽罪裁判所はこの訴えに関して有罪とし、法人に対して80万ユーロ(半額分に関しては執行猶予付き)、フランス法人の社長ティボー・サンファル氏及び、西ヨーロッパの責任者であったピエール=ディミトリー・ゴール・コティー氏に対しても、それぞれ3万ユーロ(半額分に関しては執行猶予付き)、2万ユーロ(同)の罰金を科した 。判決理由では、違反が繰り返され、また長期に渡ったことを指摘し、同時に、UberPopのサービスを中断したのも、経営陣が勾留された後であったことも強調された(注16)(注17)。同社はこの判決を不服として控訴することを決定した(注18)

フランス法人の社長ティボー・サンファル氏及び、西ヨーロッパの責任者であったピエール=ディミトリー・ゴール・コティー氏は、2015年6月29日、パリ司法警察に勾留された。その4日後の同年7月3日、UberUberPopのサービスの提供を停止した。

雇用契約の有無

ハイヤーであるVCTドライバーと仲介業者との間に「雇用関係があるか」という問題もある。

Uberは15年10月9日、VCT料金の値下げを行った。これに対してVCTドライバーは、一方的な決定に反発した。Uberは低料金化で顧客が増えることで、ドライバーの取り分は変化しないとした。一方、ドライバー側は、従来よりも一層長い距離を走行する必要や、運転時間の延長、経費負担の増加などの懸念から批判の声を上げた。特に、Uberが雇用関係を持たず、リスクを取らないにもかかわらず、報酬の水準の決定を専有していることが批判の対象となった。2015年10月13日にはUber France本社前での約100人のドライバーによる激しい抗議行動が起こり、VTCドライバーの労働組合を結成するに至った(注19)

雇用労働者の地位を求める訴訟

この抗議行動の直後、VCTドライバーが雇用労働者としての地位の確認を求めて裁判を引き起こすことになった(2015年10月19日、パリの労働審判所に提訴)(注20)。原告代理人弁護士は「ドライバーには、アプリを起動・接続しておく義務や打診された旅客運送の9割を引き受ける義務、高い顧客の満足度の維持といった義務が課されている。これは伝統的な労使関係そのものである」として、雇用関係を主張した。これに対して、Uberはドライバーへの兼職の許可や時間管理をしないなどを主たる理由として、雇用関係がないことを主張した。2016年12月、Uberとドライバーが従属的な関係にあるかであり、同社による独占的(排他的)な契約関係が存在することをもって、裁判所は両者に雇用関係があるとした(注21)

Uberと同様にアプリを利用してドライバーと顧客を仲介するルカブ社(LeCab)を通じてVTCドライバーをしていた者が、パリの労働裁判所に対して雇用労働者としての地位の確認を求めた裁判では、2016年12月に判決が出され、このドライバーが同社との間で雇用関係がある認定した。裁判所は、このドライバーが個人事業主(auto-entrepreneur)として就労していたが、その身分が雇用労働者でないことを証明することにはならないと指摘した。その理由として、まず他社と取引をすることもできなかったこと、同業他社(他のインターネットサイトやアプリ)に登録して乗客を運ぶことが不可能であったことを挙げている。さらに、ドライバー自身が顧客を獲得すること、ドライバー自身が見つけた顧客を乗せる自由が認められていなかったため、このドライバーが独立していたとは言えないと結論付けた(注22)。すなわち、専属契約条項が、このドライバーとLeCabの間に主従関係にあると見なされたのである。この労働裁判所の決定を受け、LeCabは、専属契約条項を削除した(注23)

この二つの裁判の判決は、当該のドライバーに関して独占的(排他的)な契約関係があったことに基づいて下されたものであって、一般的なVTCのドライバーが雇用労働者と見なされる訳ではない。

社会保険料の対象か否か

雇用労働者であるかどうかは、社会保険料の納付にも関係してくる。社会保険徴収機関URSSAF(Union de recouvrement des cotisations de sécurité sociale et d'allocations familiales)のパリ首都圏支部は、2016年5月に社会保障問題裁判所に対して、Uberのドライバーを雇用労働者として処遇し、相応の社会保険料を納付するよう訴えた(注24)

2015年9月、パリ首都圏を管轄する社会保障及び家族手当に関する保険料徴収連盟(Urssaf d'Ile-de-France)は、Uberに対して、所属しているドライバーを賃金労働者と見なして、社会保険料の納付を求める手続きを開始した。URSSAFは、2016年5月 、2012年1月1日から2013年6月30日の期間の社会保険料として、およそ5億ユーロの納付をUberに求めた(注25)

2017年3月に下された判断では、雇用関係にはないということになっている。このように司法判断は統一されたものとなっていない(注26)

これに対して、Uberは、その無効を求めて、パリの社会保障問題審判所(Tribunal des affaires de sécurité sociale (TASS) de Paris)に訴えた。同審判所は、2016年12月(決定内容が判明したのは3か月後の2017年3月)、社会保険料納付を求めるURSSAFの手続きに過誤(問題)があり、URSSAFがUberの権利を尊重していなかったと判断し、5億ユーロに及ぶ社会保険料の納付をURSSAFが求めたことを無効とした。審判所は、「URSSAFの監査官によって実施された聴取の対象となった(Uberの)ドライバーの人数やその素性(身元)、その聴取の報告書などが一切開示されていない」と指摘し、Uber側の防御権(反論のための材料)が奪われていたと判断した(注27)

したがって、形式(手続き)に関する過誤を理由に、社会保険料の納付請求を無効としたのであって、Uberのドライバーを賃金労働者ではないと判断した訳ではない。ただ、URSSAFは控訴する意向で、判断の確定までは数年かかると考えられている(注28)

Uberドライバーの手数料引上げに対する抗議行動

デジタル・プラットフォームで就労する独立自営業者には、最低限の保障を会社側が措置する解決策が模索されている。

しかしドライバーと企業との対立は激しさを増している。2016年12月、Uberが手数料を20%から25%に引き上げる決定を一方的に行ったことに対して、ドライバーから反発、パリの空港周辺で抗議行動を行った(注29)

政府が仲介役となって交渉する場も設定されている。その労使間会合が2016年12月20日に行われたが、VTC労組側が手数料率の引き上げ凍結することを要求したのに対して、会社側はその要求を拒否した上で、困難に直面するドライバーの支援を目的に200万ユーロの基金の設立を提案した。しかし、組合側はこれを不服として交渉は決裂し、組合は23日にパリでの抗議行動を再開することを決めた(注30)Uberのドライバーによる抗議行動は2016年末にいったん中断されたが、2017年に入って再開され、1月中旬まで断続的に行われることとなった(注31)

政府指名による調停:ドライバーの最低収入保障の措置という解決策

労使間で対立が続くなか、政府は紛争解決のための調停人を指名し、2017年2月1日にその調停人から妥協案が発表された。その内容は、Uberをはじめとする配車仲介業者に対して、困難に直面しているドライバーに対する財政的な支援を実施するよう勧告するものであった。この措置が実行されない場合には、法令によりドライバーの最低収入保障を導入するよう政府に進言することになる。Uberはこの勧告を踏まえて、ドライバー支援のための金銭面、技術面、人材面での大規模な支援措置を導入すると約束した。

労組側は、ドライバーがUberに事実上従属しているとして、関係を雇用契約と認定するよう求めたが、政府の調停人は同調しなかった(注32)

勧告後、Uberはドライバーとの関係改善努力を見せている。例えば、週50時間勤務の運転手に対する月額4200ユーロの売上高保障(注33)や就労条件の改善、収入増に配慮する措置などを提示した(注34)(注35)。政府も失業保険を独立自営業者に拡大する改革を検討中である(注36)

(ウェブサイト最終閲覧日:2018年1月23日)

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