女性の地位向上とジェンダー平等の進展
―国家統計局による最新モニタリング報告
国家統計局が今年1月に発表した「中国婦女発展綱要(2021–2030年)」に対する最新のモニタリング報告(注1)では、2023年の中国における女性の健康、教育、経済活動、意思決定・管理分野への参画、社会保障、家庭づくり、環境、法制度の8つの分野が対象とされている。それによると、多くの分野で、女性の地位向上やジェンダー平等に関する顕著な成果が確認された。以下にその概要を紹介する。
2021年から毎年、政策の進捗を評価
中国政府は2021年、「中国女性発展綱要(2021–2030年)」を施行し、女性の地位向上とジェンダー平等の実現を国家戦略の一環として正式に打ち出した。この綱要は、女性の健康、教育、経済活動、社会保障、政治参画、意思決定への関与、家庭と環境、法制度など、8つの分野を包括しており、女性の地位向上とジェンダー平等を推進するための重要な政策文書である。
この政策の進捗について、中国国家統計局は毎年、関係機関のデータ及び統計モニタリング指標に基づいて評価を行っている。
教育の現場から進む男女平等
義務教育における男女差は、ほぼ解消された。2023年の小学校就学率は男女ともに99.9%を記録し、高校でも女子の在校生は2,141万人を超え、前年比で23.7万人増加し、全体の46.6%に達した。普通高校(普通型高級中等学校の略称で、日本の普通科高校に相当)では49.5%を占め、男女比はほぼ均等となった。
高等教育(注2)では、高等教育機関に在籍する女子学生が2,948.9万人に達し、前年(2022年)から45.7万人増加した。全学生に占める女子の割合が49.9%となり、大学院では女性が過半数(50.6%)を占めるまでになった。
職業教育への女性の参加も着実に拡大している。中等職業教育では女子が42.2%、高等職業教育では47.4%を占めた。
科学的素養(注3)の差も年々縮小しており、2023年の男女差はわずか3.13%で、前年から0.66ポイント縮小した。女性が「学ぶ」力においても前に出る時代が到来している。
女性たちの経済活動
就業の場面でも、女性の数と影響力は確実に増している。中国全体の女性就業者数は3億2,000万人で、全体の43.3%を占める。特に都市部の非私営企業(国有企業、集団企業、共同経営、株式制企業、外資系企業、香港・マカオ・台湾投資企業などを含む)では、女性就業者は6,700万人を突破した。企業による「女性従業員労働保護特別規定(注4)」の実施率も73.5%に達し、職場における女性の健康と安全は以前よりも手厚く守られている。
政治参画の女性たち
政治的意思決定の場への女性の参画も着実に進んでいる。2023年の全国人民代表大会では女性代表の割合が26.5%に上昇した。地方政府の幹部にも、女性が着実に登用されており、省、市、県レベルのトップチームにはそれぞれ57.4%、59.3%、55.0%の女性幹部が含まれている。また、社会組織のリーダーのうち26.3%を女性が占めており、公益活動においても女性の力は欠かせない存在となっている。
企業の内部でも同様の変化が見られる。董事(取締役に相当)に占める女性の割合は37.7%で、前年より0.6ポイント増加した。監事(監査役に相当)に占める女性比率も41.9%となり、2022年から1.1ポイント上昇した。さらに、従業員代表大会(注5)における女性の割合は31.2%に達し、前年を0.9ポイント上回った。董事や監事、従業員代表大会の構成員に占める女性の割合は年々増加しており、経営や意思決定の現場における女性の存在感が一層高まっている。
女性の保障強化が進む
女性の社会保障制度への加入が広がっている。2023年末時点で、基本医療保険に加入している女性は6億5,000万人にのぼる。基本養老保険の女性加入者も5億2,000万人に達し、前年比で1,340.3万人増加した。さらに、出産・失業・労災などの社会保険への加入も拡大しつつある。2023年末には、女性の出産保険加入者(注6)は1億900万人(前年比130.1万人増)、失業保険は1億400万人(前年比404.7万人増)、労災保険は1億1,600万人(前年比384.7万人増)となっている。女性が労働市場で直面するリスクに対する備えが一層強化されている。
また、困難を抱える女性に対する保障政策も、より実効性を高めている。2023年の最低生活保護基準は、都市部で月額785.9元(約15,771円)、農村部で621.3元(約12,468円)(注7)となり、それぞれ前年から4.5%、6.7%引き上げられた。最低生活保護や特別困難支援の対象者は全国4,536万人、そのうち女性は1,976万人で、全体の43.6%を占めている。困窮する女性への支援体制は、着実に強化されつつある。
国家統計局は以上を踏まえて、中国では女性の活躍が広がり、ジェンダー平等が着実に進んでおり、女性の能力を発揮できる社会が整いつつある、と評価している。
注
- 2023年《中国妇女发展纲要(2021―2030年)》统计监测报告
(本文へ)
- 中国の高等教育は大きく三つの種類に分類される。まず「普通高等教育」は、日本の短期大学や大学、大学院に相当し、主に全日制の課程で構成されている。次に「成人高等教育」は、主に社会人や在職者、中等職業教育を修了した人、何らかの事情で通常の大学進学が難しい人々を対象に設けられている。最後に「軍事高等教育」は、人民解放軍や警察機関などが管理する高等教育であり、これらは国家からの財政的支援を受けている。(本文へ)
- 科学的素養(中国語:科学素質)「統計モニタリング」の注釈より:
科学的素養の男女差とは、18歳から69歳までの男性と女性それぞれで、科学的な知識や考え方を持っている人の割合の差のことである。ここでいう科学的素養とは、科学を大切にし、科学的な考え方を身につけ、基本的な科学の方法や必要な知識を理解し、それを用いて物事を分析したり判断したりして、問題を解決する力を有することを指す。(本文へ) - 女职工劳动保护特别规定
(本文へ)
- 従業員代表大会は、国有企業の経営に労働者が民主的に参画する「民主的管理」を実現するものとして、憲法や条例(1986年制定の全人民所有制工業企業従業員代表大会条例)で規定されていたものだが、民間企業にも適用される労働法、会社法、労働組合法、労働契約法にその機能や役割などが記された。たとえば、労働法は「労働者は法律の規定に従い、従業員大会、従業員代表大会或いはその他の形式を通じて、民主的管理に参加し、或いは労働者の合法的な権益の保護について、使用者と平等的に協議する」(第8条)ことを定めている。詳細は国別労働トピック:中国(2015年11月)を参照されたい。(本文へ)
- 中国語では「生育保険」。(本文へ)
- 1元=20.07円。(本文へ)
参考文献
- 中国政府網ほか
参考レート
- 1中国人民元(CNY)=20.03円(2025年6月6日現在 みずほ銀行ウェブサイト
)
2025年6月 中国の記事一覧
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