雇用労働部2025年度予算案を閣議決定

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  • 国別労働トピック:2024年9月

韓国政府は8月27日、2025年度(1~12月)の予算案を閣議決定した。歳出総額は24年度比3.2%増と、過去最低の増加率だった24年度(2.8%増)を上回ったものの、予想される経済成長率(4.5%)を下回り、2年連続の「緊縮財政」となった。

雇用労働部の予算は総支出額35兆3661億ウォンで、24年度に比べ5.0%(1兆6,836億ウォン)の増加となる。

前年度比5.0%増、財政健全化のもと重点項目に集中投入

雇用労働部は、政府の財政健全化枠組みに沿って、類似プロジェクトを整理して事業運営システムを刷新し、重点項目に投じる財源を準備した。

予算は、「仕事と家庭の両立支援(超低出生対策)」、「労働弱者保護」、「若年層の雇用支援強化」など、政府の最大の懸案事項に集中して投入する。主な増額ポイントは以下のとおり。

①超低出生の流れを反転させる鍵となる「仕事と家庭の両立支援」を画期的に拡充

働く親と雇用主への支援を格段に強化する。具体的には、育児休業給付金の上限を、現在の150万ウォンから最大250万ウォン(1~3カ月250万、4~6カ月200万、7カ月~160万)に引き上げる。事後支給方式を廃止し、配偶者出産休暇給付を現行の5日から20日に拡充する。代替人員支援金を引き上げる(80万ウォン→120万ウォン)。

②公正な労働市場づくりに向け「労働弱者保護」を強化

労働市場の二重構造を改善するため、「労働弱者支援事業」を新設し、本格的に開始する。個別対応支援を行う「つながりセンター(イウムセンター(注1))」を6カ所から10カ所に拡大し、法律、税務、心理カウンセリングなどの専門プログラムを提供する。

この他、休憩施設設置などの職場改善や、法的支援などの権利利益の保護、共済基金を通じた福祉の推進など、現場に必要な支援事業を全方位的に拡充する。また、賃金滞納などに対する権利救済強化を図る。倒産による賃金立替支給金や滞納清算支援融資を拡大し、賃金未払い労働者への支払い支援などを行う。

③若年層の就労を全サイクルにおいて支援強化

若年層が質の高い仕事に就いて所得向上を図れるよう、キャリア選択から求職、就職に至る全サイクルにおいて個別支援を強化する。

若年層支援の拠点である「大学雇用プラスセンター(注2)」において、未就労や失業中の卒業生のための専門プログラムを新設する。また在籍中の学生に特化した雇用サービスを拡大し、若者の雇用を全面的にサポートする「若年雇用オールケアプラットフォーム実証事業」(注3)の体制を整える。また、随時採用・中途採用などが増加し、就業経験を持つ人材の需要が高まっているため、「若年層の就業体験支援」を拡充する。(1万人を追加)。さらに、人手不足に悩む業界・企業と若年層のマッチングを支援するため、「若年雇用躍進奨励金」に新たに「人材不足業種コース」を設ける。人材不足職種・業界での若年の技術研修支援など、多様な支援事業を新設する。

④外国人労働者の訓練や管理の拡充

人材不足解消に向けた外国人労働者の導入拡大に伴い、外国人労働者に対する訓練、安全、雇用管理のための予算を拡充する。具体的には、選抜や入国支援及び就職教育などの外国人雇用管理事業やE-9(注4)特化訓練を強化する。

また、中小企業や労働災害における社会的弱者を保護するため、財政・技術支援を強めるとともに、「華城リチウム電池工場火災(注5)」のような事故の再発防止のため、化学火災等事故予防の強化や猛暑災害予防施設への支援の確立など、労働災害防止に向けた財政投資を拡充する。

この2025年度予算は、Ⅰ働きやすい職場づくり、Ⅱ積極的労働市場政策、の2本の柱で構成されており、主な編成項目は以下のとおり。今後、9月に国会に提出され、審議のうえ12月に確定する予定。

Ⅰ 働きやすい職場づくり

(単位:ウォン)

1 仕事と家庭の両立支援(超低出生対策)

●出産・育児時に利用する勤務時間短縮・休暇・求職支援の大幅拡大、給付金引き上げ

  • 母性保護子育て支援:4兆225億(+1兆5,256億)
    • 育児休業給付 3兆4,030億(+1兆4,161億)
    • 育児時短勤務手当 2,335億
    • 配偶者出産休暇給付 242億
  • 雇用保険未適用者出産給付:218億(+41億)

●育児休業代替人材支援等の拡大

  • 代替人員支援金(出産、育児時短、育児休業):1,194億(+1,050億)
  • 業務分担支援金:352億(+328億)

●支援要件緩和等、柔軟な勤務導入のための事業主支援拡大

  • 育児休業支援金:1,236億
  • 育児時短勤務支援金:554億

2 労働弱者支援(保護)、二重構造改善

●「労働弱者支援事業」を新設、職場改善や福祉・権益増進事業の推進

  • 参加・コミュニケーション活性化支援:44億
  • 「つながりセンター」を拡大(6カ所→10カ所)
  • 職場改善支援:21億
  • 不法・不当慣行改善支援:28億

●賃金未払い労働者や生計困難者等の権利救済強化

  • 倒産賃金立替支給金等:5,293億
  • 滞納清算支援融資:704億
  • 生活安定資金融資:915億
  • 労働者健康センター:230億

●職場の公正性向上に向けたコンサルティングや不当労働慣行改善支援

  • 職場革新、公正採用等へのコンサルティング業務統合:48億
  • 採用手続きの管理支援の新設:17億

●労働市場の二重構造(元請け・下請け、大・中小企業、大都市・地方)改善に向けた賃金・福祉・教育訓練などパッケージ支援

  • 地域主導の二重構造改善:61億
  • 共生福祉支援:66億
  • 勤労福祉基金支援:290億

3 労働安全衛生の強化

●中小規模事業場の労働安全管理能力の向上支援

  • 安全衛生管理体制構築コンサルティング:706億
  • 事故集中管理および民間技術支援:646億

●化学事故予防投資の新設・拡大

  • ビッグデータ・AIを活用した予防対策の新設:5億
  • 化学物質管理能力強化プログラムの新設:12億
  • 外国人労働者の安全サポートの新設:24億
  • 中小規模事業場火災爆発技術指導:10億

Ⅱ 積極的労働市場政策の推進

1 仕事と人をつなぐ雇用サービスの革新

●職業安定機関運営の統合・強化

  • 職業安定機関運営:551億 (「雇用統合ネットワーク」の追加等)
  • 就職困難層の就労促進:92億(就職能力・心理安定プログラム拡大強化)

●AI技術を活用したマッチング情報提供などデジタル強化

  • 雇用情報プラットフォームAI雇用サービス支援:75億
  • 雇用計算ネットワーク管理:392億
  • 雇用保険適用賦課情報システム構築:109億

●就職困難層等の雇用セーフティーネット機能の維持・強化

  • 求職給付:10兆9,171億、早期再就職手当:5,235億、社会保険死角地帯解消:8,851億、国民就職支援:8,457億

2 企業の求める現場型人材の迅速な供給

●最新技術人材育成インフラの強化

  • K-ハイテクトレーニング事業:4,781億
  • ポリテク半導体・新産業学科新設:195億

●中小企業労働者を対象とした個別教育訓練の新設

  • 中小企業労働者支援の新設:116億
  • 最新リモート訓練課程の新設:220億

●求人難地域や産業に対する雇用懸案対応支援

  • 産業転換共同訓練センター:140億
  • 産業構造変化対応の特化訓練:641億

3 対象に特化した個別支援の強化

(若年層)

●若年雇用を全方面から支援するオールケア体制

  • 在学生個別支援の強化(大学生:463億、高校生:91億)
  • 卒業未就職者に特化したプログラムの新設:200億
  • 職場適応支援の新設:46億
  • 若年挑戦支援:717億

●若年の職務体験支援拡大

  • 職務体験を通じた職業能力強化支援:2,187億

●地方の求人難業種へのマッチング支援事業

  • 若年雇用躍進奨励金:7,772億
  • 国民就職支援・求人難職種特化訓練の新設:228億
  • 若年技術研修の新設:72億

(中高年層)

●雇用継続と再就職の支援

  • 高齢者継続雇用奨励金:357億
  • 中高年インターン制の新設:36億、ポリテック新中年特化学科の改編:52億

(障害者)

●障害者雇用機会の拡大(過去最高水準の予算編成)

  • 障害者雇用奨励金:3,774億
  • 障害者就職成功パッケージ強化:265億

(外国人雇用)

●熟練労働者の養成

  • E-9特化訓練:216億
  • 外国人留学生学習並行支援:124億

●雇用管理強化:相談体系や自治体協力の拡充

  • 入国支援及び就職教育:92億
  • 地域定着支援:18億

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