22年上半期の協約賃金
 ―物価高騰で実質マイナスに

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2022年11月

ハンスベックラー財団経済社会研究所(WSI)によると、2022年上半期(1月~6月)の協約賃上げ率は、名目で平均2.9%だった。しかし、同時期の物価上昇率を考慮すると、実質で3.6%減少した。分析担当者は、実質賃金の低下が続けば、民間需要を弱め、ドイツ経済の発展に打撃を与える危険性があると警告する。

物価高騰に追いつかない賃金上昇率

図表1は、22年上半期の協約賃金上昇率(速報値)である。

22年より前に締結して現在も有効な「公共部門」や「小売産業」などの協約賃金の平均賃上げ率は2.5%で、妥結当時は、今日のような急激な物価の上昇は想定されていなかった。これらの協約対象となる労働者は約1,100万人である。

他方、ウクライナ戦争の影響でインフレが加速しつつあった22年上半期に締結された協約賃金は平均で4.5%上昇した。これらの労働協約の影響を受ける労働者総数は300万人強と比較的少ないため、旧来の労働協約と合わせると、全体平均で2.9%の協約賃金の上昇率となる。

図表1:22年上半期における協約賃金の平均上昇率 (前年比、速報値)
画像:図表1

出所:WSI-Tarifarchiv (2022).

協約賃金の推移と今後の行方

協約賃金の分析担当者であるWSIのトルステン・シュルテン氏は、「労使の協約賃金は2010年代に比較的順調に上昇した後、コロナ危機とウクライナ危機により、21年、22年と2年連続で実質賃金が大きく低下した」と説明する(図表2)。

図表2:協約賃金上昇率の推移 2010年~2022年 (前年比、%)
画像:図表2

出所:WSI-Tarifarchiv (2022).

注:2022年は上半期

しかし、こうした産業全体の傾向とは別に、ホテル・飲食業、ビル清掃業、派遣業など、低賃金労働者が多い特定産業に限ると、22年上半期の実質賃金はプラスになる。これらの産業では、過去数カ月の交渉の結果、特に低賃金層の賃金が大幅に引き上げられた。その理由について、シュルテン氏は、「技能労働者を含む人材不足が深刻化する中、これらの産業は例外的に高い賃上げで対応した。連邦政府が主導した10月1日からの最低賃金時給12ユーロへの引き上げの影響を受けて、同産業ではその水準以上の賃金体系が再構築されている。つまり、法定最低賃金の引上げは、団体交渉における労使関係を強化する重要な手段にもなっている」と説明する。

このほか22年上半期は、その期間中に労使合意にいたらなかった産業(例:港湾)がある一方で、秋に交渉を継続するために22年春に意図的に労使交渉を中断した産業(例:化学)も含まれている。

今後は、金属・電気産業の交渉、23年初頭に始まる公共部門の団体交渉等、大型の交渉が控えているが、トルステン・シュルテン氏によれば、ここ数十年、これほど厳しい経済情勢下で行われた団体交渉は殆どなかったという。その上で、「ウクライ戦争が与える経済的影響の大きさと不透明さを考慮すると、団体交渉の結果だけでは、多くの産業の労働者が購買力を失う恐れがあり、国による追加の救済措置が必要な可能性がある」と指摘している。

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