「10年間で100万人の組織化を」
―AFL-CIO大会でシューラー会長
AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)は6月12~15日、ペンシルベニア州フィラデルフィアで定期大会を開いた。エリザベス(リズ)・シューラー会長、フレッド・レドモンド財務担当書記らの執行部をあらためて選出。労働者の組織化に優先して取り組む決議などを採択した。シューラー会長は「今後10年間で100万人の労働者を組織化する」との目標を発表している。
「トラムカ氏後継」の執行部を信任
大会は4年に1度開かれるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期されていた。この間、2021年8月にトラムカ前会長が死去。ナンバー2のポストである財政担当書記を務めていたシューラー氏が、加盟労組の代表者らで構成する執行評議会により、今回の定期大会までを任期とする新会長に選出されていた(注1)。大会で対立候補はなく、シューラー氏が「再選」した。トラムカ体制を引き継ぐ執行部が、加盟労組によりあらためて信任を得た形だ。
「10年間で100万人組織化」を表明
大会は「組織化のペースと規模を拡大するための労働者の力の構築」に関する決議を採択した(注2)。決議書は労働者をとりまく環境について「働く者たちの闘う力が高まり、ストライキが増え、新しい産業の労働者が組織化され、ファストフードからハイテクに至る労働者が抗議活動を行っている。パンデミックと人種的正義をめぐる経験は、多くのアメリカ人が感じている信頼の欠如を明らかにし、組織化の復活をお膳立てした」と指摘する。
こうした情勢に対応するための戦略として、以下の方針を掲げた。
- 組織化のペースと規模を拡大するために、各労組のリーダーによる会合を継続する。
- すべての活動において、労働者の組織化の取り組みを優先する。
- 特に若年者、女性、黒人および先住民、有色人種、南部、再生可能エネルギーやハイテク産業を含む新興セクターの労働者らの行動を支援する。
- 地域(コミュニティ)や環境、移民の権利、人種的正義、女性、LGBTQ +(性的少数者)、労働者の権利、宗教などの支援団体とのパートナーシップを築き、働く人々の正義を推進するという共通の目標の達成をめざす。
- より多くの労働者を積極的な組織化キャンペーンに参加させ、団結権保護法(Protecting the Right to Organize Act、PRO法)や公共部門交渉自由化法(Public Service Freedom to Negotiate Act)の制定を求める(注3)。
- 労組の結成やストライキを行う労働者を支援するための基金の維持を奨励する。
- アマゾン社を含む最近の組織化キャンペーンを踏まえ、複数の労組の協力によるすべての労働運動を奨励する。
- 組織化や団体交渉等を行う労働者が、法律事務所やコンサルタント(ユニオンバスター)への対策に力を費やさなくてもすむよう、その努力を支援する。
シューラー氏は大会で「今後10年間で100万人の労働者を新たに組織化する」との目標を発表した(注4)。その実現のため、「組織化変革センター(Center for Transformational Organizing、CTO)」を立ち上げ、優秀なオルグなどの人材を集めることや、前例のないキャンペーン活動の展開を訴えている。
注
- 労働政策研究・研修機構(2021)「トラムカ氏の死去と初の女性会長選出―AFL-CIO (PDF:880KB)」『Business Labor Trend 2021.10』参照(本文へ)
- アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)ウェブサイト参照(本文へ)
- PRO法は、労働政策研究・研修機構ウェブサイト・海外労働情報「「団結権保護法」制定に向けた政権対応」2021年11月)」参照。
「公共部門交渉自由化法案」は、公共サービスに従事する労働者の団体交渉権の全国最低基準の制定などを盛り込んでいる。2018年6月の連邦最高裁判所によるJanus v. AFSCME判決で弱まった公共部門の労組の交渉力回復などを目的とする。
この裁判で原告の州政府職員は「排他的交渉代表制(交渉単位で、ある労組が従業員投票で過半数の支持を獲得するなどして交渉権を得れば、その交渉単位に属するすべての労働者の交渉権をその労組が代表するもの)」のもとで支払う組合費を政治活動に使われるのは言論の自由などを侵害し、合衆国憲法に違反するものだと主張し、その返済を求めた。判決は原告の主張を認め、労組が交渉で得た労働条件等を、組合費を払わなくても享受できる、いわゆる「フリーライド」を容認した。AFL-CIOなどは、同判決が公共部門の労組の財政力、交渉力の低下を招いたと批判している(米国州・郡・市職員同盟(American Federation of State, County and Municipal Employees、 AFSCME)ウェブサイト)、及び労働政策研究・研修機構ウェブサイト・海外労働情報「労働組合のフリーライドを認める―連邦最高裁」2019年2月)参照)。(本文へ) - アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)ウェブサイト参照(本文へ)
参考資料
- ブルームバーグ、ニューヨークタイムズ、AFL-CIO、各ウェブサイト
2022年7月 アメリカの記事一覧
- アップルストアで労組結成へ
- 「10年間で100万人の組織化を」 ―AFL-CIO大会でシューラー会長
- 首都やサンフランシスコなどで最低賃金を引き上げ
関連情報
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