「企業年金新法」を公布
人力資源・社会保障部と財政部は2月1日に「企業年金弁法」(以下、「新法」)を公布した。2004年施行の「企業年金試行弁法」(以下、「旧法」)は廃止された。弁法は、企業による拠出金及び企業と従業員の拠出金の合計額の上限引き下げ、経営不振時の拠出の暫定停止(従業員との協議で了承を得る必要あり)、などを定めている。
新法の内容
中国の年金(養老保険)制度は、(1)強制加入の基本年金、(2)任意加入の補充年金(企業年金)、(3)個人貯蓄年金、の3階建ての構造になっている。人力資源・社会保障部によると、2017年末時点の基本年金の加入者数は9億人を超えた。一方、企業年金を設立した企業は約8万社で、加入従業員数は2300万人程度であり、2013年末時点の約6万社、約2000万人から伸び悩んでいる。
企業年金は、基本年金の上乗せを図るために設けられ、企業と従業員が資金を拠出して運用される。新法は企業に対して企業年金の創設を奨励すると明記。企業側の拠出額の上限を「従業員の賃金総額の8%を超えない」、企業側と従業員個人側の拠出額の合計の上限を「従業員の賃金総額の12%を超えない」額にすると規定した。旧法のそれぞれの上限(企業側:「12分の1(約8.3%)を超えない」、企業側と従業員側の合計:「6分の1(約16.7%)を超えない」)をやや引き下げている。
また、企業が経営損失、組織再編、合併等で資金を継続して拠出できなくなった場合に、従業員との協議のうえで拠出を停止し、その後は実情に応じて再開・追納できることも定めた。
導入促進を目指す
中国社会科学院社会保障研究所「中国年金発展報告2016」によると、企業年金の拠出額の4分の3を国有企業が占め、民営企業は少ない。企業年金を設立しているのは、主に資源、電力、運輸、金融など寡占的な大企業がある産業である。地域別に見ると、北京、上海、広州など東部・南部の都市に集中しており、西部にはわずかしかない。
人力資源・社会保障部などは2014年1月に「企業年金・職業年金の個人所得税に関する通知(以下、通知)」を公布し、(1)企業拠出分を個人口座計上時に非課税とする、(2)個人拠出分を賃金の4%まで所得税から控除する、(3)運用益を非課税とする、などの税制優遇措置を導入した。しかし、その後も導入は政府の思うように進んでいない。政府は拠出額の上限引き下げや経営不振時の措置などを明確化した新法公布により、企業年金の導入を促進し、急速に進展する少子高齢化社会において、社会保障の一翼を担うように普及させたい考えだ。
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