「2004年度労働と社会保障の発展に関する統計公報」発表される

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  • 国別労働トピック:2005年6月

2005年5月18日労働社会保障部と国家統計局は、2004年1年間の労働および社会保障の各事業動向を発表した。同報告によると、就職状況、社会保険のカバー状況とも昨年に引き続き拡大し、社会保障制度構築は安定的に構築が進んでいる。今回の報告に伴い、同日中央メディアが座談会を開催したが、席上、将来的発展のためには都市における就業問題への対応が重要課題であることが各担当官僚により確認されている。国家発展改革委員会就業収入配分局副局長は、世界貿易機構(WTO)加盟後、国際分業に積極的に参加し、雇用機会を積極的に拡大していく、特に、第三次産業、中小企業、労働集約型産業等での就業機会創出に力を入れ、就業機会創出が難しい地区、行政、グループへの就業、再就職支援や農村労働力の都市での就業支援に力を入れていくことの必要性を強調。また、最低生活保障の問題については、民生部最低生活保障局副局長が社会保険の完全支給(「応保尽保」)の管理体制が完成しつつある中、農民の生活保障と生活困難者の認定も拡大していく方向を明らかにしつつ、農村での医療体制の充実、都市での救急医療体制を試験的に開始したことを紹介した。そういった行政の動きへの財政措置について、政府は市場との関係をにらみながら、財税優遇政策に取り組み、就職・再就職支援を促進している方向を明らかにしている。すなわち、全体的な社会保障計画の都市での発展要求に対応しつつ、農村での社会保障事業を支援していくための社会保障予算を積極的に組んでいることを報告した。

2004年の労働と社会保障動向報告の具体的内容は、以下のとおりである。

就業

全国の都市・農村の就業者は合わせて7億5200万人で、前年と比較し768万人増加している。このうち第一次産業の就業者は3億5269万人で全国の都市・農村の就業者数の46.9%を占めている。一方、第二次産業は、16,920万人で22.5%、第三次産業が22,011万人で30.6%であった。就業者数は都市部に限ると26,476万人で、国有企業(「単位」)での就業者が1億1099万人で前年と比較して129万人の増加、私営企業及び個人事業主は5515万人で、こちらは前年より593万人増加している。都市部の国有企業所属者のうち、実際に在職中の従業員数は1億0576万人で前年より84万人増加している。

都市部の新規就業者は、当初目標を80万人上回る980万人の増加であった。国有企業をリストラされた再就職者は510万人で40代女性、50代男性の「4050」人員で最就職を果たしたものは140万人であった。

都市部登録失業率は、4.2%で失業者数は、827万人であった。国有企業のリストラ労働者は153万人で前年に比べ107万人減少している。このうち92万人は現在再就職サービスセンターに入り、最低生活保障を受けている。

労働市場は情報ネットワークの一部が完成し、117都市で四半期ごとの需給分析報告の発表を実現している。全国に職業斡旋機構は3万3890カ所存在するが、そのうち公共職業斡旋機関は23,347カ所で、職業斡旋の成就率は前年比で15.6%上昇している。

職業訓練については、技工学校が全国合計2884校存在し、在校生は234万人で、前年末より41万人増加している。また、就職訓練センターは3323カ所、職業訓練機関が2万1425カ所存在している。また、全国530万人の失業者と国有企業のリストラ従業員は再就職訓練に参加したが、このうち31万人が創業研修に参加している。また、都市部の進学のできない中学、高校卒業生189万人が労働予備制訓練に参加した。

職業資格については、職業技能審査機関が全国で9,458機関あり、機関数は1年間で30.4%増加した。また、前年より26%増加した736万人が等級に応じた職業資格証書を取得することができた。1年間で12万人の技師が新たに誕生したが、当初目標より2万人を上回る数字であった。

社会保険(注1)

基本養老保険の加入者は、1億6353万人で、前年より152万人増えた。加入者のうち就業者は1億2250万人で、離職退職者は4103万人で、前年により就業者が604万人、離職退職者が243万人とそれぞれ増えている。また、企業における基本養老保険加入者は、1億4679万人で、前年より797万人増加している。

企業退職者に対する保険の支払いは、いわゆる「社会化管理」(注2) により3430万人を対象に実施された。全国の企業退職者社会化管理率は93.2%におよび、前年より8.7%上昇している。ちなみに、2004年にコミュニティ管理に組み入れられた企業退職者は2166万人で企業退職数の58.9%を占めている。

農村養老保険加入者は全国で、5378万人で1年間に205万人が養老保険を受け取った。

失業保険については、加入者は全国で1億584万人、前年より211万人増加している。受給者数は全国で419万人、前年比で4万人増加している。

医療保険については、基本医療保険加入者数は1億2404万人に達し、前年比較で1502万人増加した。加入者のうち就業者は、9045万人、退職者は3359万人で、前年よりそれぞれ1070万人、432万人増加している。

労災保険は、全国の統一計画地域においてスタートしたが、2004年末時点で加入者数は6845万人となり、前年より2270万人増加している。また、労災保険の適用となったものは。前年より19万人多い年間52万人であった。

出産保険については、加入者数は4384万人で、前年より729万人増加している。受給者は前年より10万人多い46万人であった。

社会保険の適正な執行のため、全国26省では社会保障監督委員会が設けれ、社会保険基金監督管理方法が制定された。これに基づき、大部分の省、直轄市において社会保険業務の監査がおこなわれたが、一部地域で基金の流用など規則違反の実態が摘発され取締りが強化された。また、基本養老年金を補完するため、近年法制化され普及が期待される企業年金制度について、制度構築がさらに推進され、「企業年金試行弁法」および「基金管理試行弁法」の各法規が整えられた。

吉林省と黒龍江省の2省では、2004年5月に都市部社会保障体系のモデルケースが採用され、99万人の国有企業リストラ従業員が基本的生活保障と失業保険両方の受給をうけた。

賃金配分

都市部の就業者の毎月平均賃金は1万6024元で、前年より14.1%上昇した。特に国有企業従業員の平均賃金は1万6729元、都市部集団企業は9814元、その他企業は1万6259元であった。

全国30の省、自治区、直轄市で賃金指導ガイドライン制度が完成し、140の大中都市が労働力市場賃金指導基準を発表、13の大中都市が業種別人件費情報を発表、29万社が賃金集団協議制度を導入した。

労働関係

2004年を通じ、労働争議仲裁委員会が立件し、受理した労働争議案件は26万件で、前年より15.2%増加していた。関係する労働者は76万人。集団労働争議案件は、1.9万件で前年比72.7%もの増加であった。各級レベルでの労働争議仲裁委員会での年間終結案件は25.9万件で終結率は93.2%と比較的短期に解決した。

その他の動き

2004年の法制の動きは、大きなところでは、11月に国務院が「労働保障監察条例」を公布したほか、労働社会保障部が「集団契約規定」「最低賃金規定」を改正し、さらに「労働保障監察条例実施に関する若干の規定」を公布している。労働保障監察機構は、2004年末時点で全国3277カ所設けられた。

社会保障情報を全国コンピューターネットワークに接続することを目的とする社会保障プロジェクトである「金保プロジェクト」の第一期建設プロジェクトが始動し、中央レベルでのプロジェクト立ち上げと各地のフィージビリティ報告作成が完了した。部と新疆生産建設兵団を含む32の省とのネットワーク接続が実現した。データの登録作業が開始され、部と省との間のビデオ会議システムも正式に開通するなどインフラ整備が急速に進展した。

町内会レベルで社会保障業務機構が構築されたのは、全国で6037カ所に及び、全町内会組織の98%を占める。郷鎮レベルでは2万6663箇所設置され、73%の組織率であった。一方、スタッフを雇用して労働保障サービスを実施するコミュニティも全国に5万5336カ所設けられ、コミュニティ総数の89%でサービスが展開された。

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