西部地域でも深刻化しつつある労働力不足現象

カテゴリー:雇用・失業問題地域雇用

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  • 国別労働トピック:2005年6月

5月18日の新聞報道によると、重慶市で労働者就職フェアが開催され、繊維産業を中心とした大中小規模の各企業が労働者を募集したにもかかわらず、労働者が集まらない現象が起き、生産活動への影響が深刻化している。

ここ数年、東南を中心とした沿海部の玩具、アパレルなどの労働集約型産業では、労働者が集まらない現象がおき、労働力不足から生産活動が停止するなど支障が発生し問題となっている。低賃金や長時間労働など労働条件の低さが不人気の原因とされ、厳しい国際競争にさらされる企業経営の中にあって各方面からの見直しが進められている。

そういったなか、重慶でも、農民工の考え方が変化してきていることで、労働契約の締結を拒否する労働者が多くなり、労働者不足による西部地域の工業発展への影響が懸念され始めている。

重慶のシャピンバ区では530以上の紡績企業が何十年にもわたり操業を続けている。主要生産は低価格の白木綿布。全国各地で需要がある。企業は現在も大量の労働者を必要としている。以前、この町では数人を雇用する小規模企業から400人以上を雇用する大企業までが存在し、2万人以上の労働者が雇用されていた。彼らは、四川、広安、南充、など周辺から来る農民工であった。毎年春節(中国の正月)が過ぎると求人広告をみて工場の前で職を待つ労働者の姿があった。しかし、今年はそういった労働者の姿はほとんどない。織布工が確保できず機械を停止したままの企業がほとんどであり、稼動している工場では雇用された労働者が残業を重ね生産に携わっている。労働力不足がはなはだしいのは織布工で、現在でも1500人以上不足しており、その他の職種も含めるとこの地域全体で2000人以上の労働力が不足しているとフイロンバ鎮副鎮長はいう。織布工の月給は800元以上で労働力不足の減少が現れてから、企業は高い給与を出すようになり、月給1200元から1500元という企業もある。

また、重慶銅梁県の管理委員会副主任は、同地区では今年末までに102企業が操業を開始するため、1.8万から2万人の労働力需要が発生し、半年から1年で農民を産業労働者に転換させなければならないが、労働者への訓練が企業の発展に追いつかない状況にあり、銅梁県でも今年労働力不足が発生することが予想されると懸念を示している。

一方、重慶壁山県は皮革革靴産業が盛んだが、2000社に及ぶ各企業は福利厚生を充実して5万人の労働者需要のための争奪戦を繰り広げている。

重慶市紡績業管理事務所長は、西部地域の工業が発展し、農民が地元でも仕事を確保できるようになったことから地元志向が高まり、外地での仕事を希望しなくなっていることに労働者不足の原因があるのではないかと見ている。さらに同氏は、「いずれにしろ、労働者不足は、都市化、工業化、現代化の急速な進展が生んだ新しい社会現象であり、原因はひとつではなく複雑に絡むものであるため、関係する社会の各方面、社会経済の発展の視点から分析する必要がある」と強調している。

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