(香港特別行政区)2002会計年度前半5カ月、財政赤字最大560億ドル

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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政府が9月30日発表した統計によると、2002会計年度前半5カ月(4月~8月)の財政赤字は過去最大の560億ドルに達し(政府収入434億ドル、政府支出994億ドル、前年同期比で70億ドル増大)、基本法(香港憲法)に定める財政均衡の原則による政府の財政赤字削減努力がさらに強く求められ、公務員給与のカット、公務員給与決定システムの抜本的見直し、公務員の自主退職、社会保障を含む他の歳出削減、増税問題等、香港経済が現在抱える構造的問題がさらにクーズアップされてきている。

香港では、長引く景気低迷と失業者の増大で、所得税や営業税等の税収の減少と歳出の増大等により、財政赤字が悪化し続けており、2001~02年度の財政赤字は過去最大の632億ドルに達した。これは基本法の財政均衡の要請に著しく反しており、アントニー・リョン財務長官も3月の処女財政演説で、2006~07年度までに財政均衡を達成する目標を掲げた(本誌2002年7月号I参照)。しかし、その一環として掲げた公務員給与の一律4.75%削減による60億ドルの歳出削減目標が、今年度は民間の賃金動向調査と連動して給与を決定する従来の方式を踏襲したことから、削減幅は1.58%から4.42%に止まり、削減目標を30億ドル下回ることになり、赤字削減の他の方策が算段されることになっていた(本誌2002年9月号I参照)。

このような中で、さらに2002会計年度前半5カ月の財政赤字が過去最大を記録して、今年度の財政赤字目標額452億ドルの達成が危ぶまれるようになってきたが、厳しい経済状況下での増税は困難視されているので、政府は赤字削減の方策として主に歳出の削減に目標をおいている。

まず政府は9月に、今年度の公務員給与の削減が目標額に30億ドル達しなかったことに対して、これを補なうために、来会計年度は1.8%、額にして37億8000万ドルの経常支出の削減を行うことを決定した。この決定に対しては早速公務員関係労組から、給与削減の代わりに公務員のリストラが行われるのではないかとの懸念の声が上がったが、ジョセフ・ウォン公務員担当長官はリストラの可能性を打ち消している。

これに対して、同長官は10月になり、第2次の公務員の自主退職募集の条件を厳しくすることを示唆している。公務員数の減少によるコスト削減のために、政府は既に昨年10月に第1次の自主退職を募集しており、補償条件の上限は、公務員の退職年令に支払われるべき一括年払いと6カ月分の給与の合計額とされ、既に9774人がこの条件での早期退職を認定され、このうち8169人が既に退職している。同長官は、第1次募集の条件は民間の類似の制度を参照して決定されたが、民間の条件が悪くなっているので、第2次募集の条件もそれに応じて悪くなるだろう述べている。

また政府は9月に、来会計年度に包括的社会保障支援(CSSA)の支給額を10%減額して、歳出を16億ドル削減するとしている。個人に対するCSSAの支給は2003年3月まで凍結されているが、それでも社会保障関係の支出は今年度は160億ドル増大する。政府当局者は、香港のデフレとの関係で、受給者は12.4%ほど超過払を受けており、来年度の支給減額でこれが減殺され、また現在のCSSAの条件は受給者の労働意欲を減殺するから、もっと条件を厳しくせねばならないとしている。

このように、厳しい経済状況下での財政赤字の削減という基本法の要請のために、歳出の削減に重点がおかれ、新たな公共投資や増税は優先順位が低くなるが、増税に関しては、物価の安い隣接する広東省の深(土川)等で買い物や食事をする香港市民が増加していることもあり、生活を直撃しない出境税について、リョン財務長官等によって取り沙汰されている。

ちなみに、従来から公務員給与が高額過ぎるとの批判があり、給与システムの抜本的改正について諮問されており、9月後半にその中間報告がなされ、中期的展望としては業績給や弾力的な給与帯の導入が提案されたが、これに対しては公務員関係労組の多くが強く反対している。

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