中国総工会、外資系企業における労働組合運動を強化

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

総工会は、外資系企業の進出増加に対処するため、外資系企業での工会の組織化と組合活動のあり方について検討し、下部組織に対する指導を強化している。

その主な内容をレポートする。

1 外資系企業の経営の特徴

外資系企業は、国内の企業とは経営方式、労務管理において相違点が多い。総工会から見た、重大な相違点は、(1)指導体制、経営管理において、工会が、直接的に参加する割合が低い。短期間に、高収益を上げようとする経営者に対し、労働者に長期的に有効な利益をもたらす労働運動を展開するのは、非常に難しい。(2)多くの場合、外国人の経営者や労働者と中国人の労働者間には、非常に大きい階級的格差がある、の2つである。

2 活動方針

総工会が強化した、外資系企業における重要活動方針は、以下の4項目である

  1. 組織化の促進
    外資系企業の労働者は、年齢・経歴・出身において、国内の企業とは相違する部分が多い。国有企業と比較し、建国以来の工会の伝統的特質が非常に少なく、労働組合の組織力、団結心も低い。このため、最初に工会の組織化に努力する必要がある。
  2. 労働法の遵守と労働の質の向上
    総工会は、労働組合運動を通じて、企業の経営者が労働法を遵守し、労働者の経済的利益と民主的権利を保障するよう要求する。一方、労働者にも、職務に忠実で、企業の規則と制度を遵守し、労働生産性を高め、企業の経営目標の実現に貢献するよう教育する。
    また、各工会は、多種の形式の労働競争、合理化・技術革新提案などの活動を積極的に繰り広げ、企業の発展に自主的に協力すべきである。
  3. 団体交渉制度と労働協約制度の確立
    総工会は、工会を通じて、経営者側には、団体交渉制度と労働協約制度の確立・整備を促す。これが、最重要課題である。雇用形態の安定、賃金、各種手当て、社会保障、安全管理に関し、労働協約という形で成文化した取り決めを実施する必要がある。
  4. 経営参加への要求
    総工会は、労働者が企業管理に民主的に参加することを推進する。
    中国の労働法は、外資企業の労働者が企業管理に参加する権利を明確に規定している。しかし、外資企業では労使間の格差が大きく、労働者の経営参加は困難で、工会が、実情に合わせて適切な形式をとり、労働者を組織し、企業の経営管理に参加できるよう努力する必要がある。
    長年の経験をまとめると、次のような方式が非常に有効的である。
  1. 従業員代表大会制度
    従業員代表大会は、労働者が民主的に管理に参加する機構であり、その権利の内容は、企業の活動報告を聴取し、討議し、企業の重大な経営決定に提案することであり、企業の重要な規則制度と労働者の生活福祉に関わる重大な事項について、審議・議決する権利をさす。
    この形式は、中国側が管理する中外合弁企業、合資企業に広く用いられている。
  2. 工会代表の取締役会への参加
    企業の取締役会が企業の長期発展計画、大規模の経営改革などの重大な事項を討議する時、工会は、労働者を代表して会議に列席し、労働者の意見と要求を反映させる必要がある。工会は、企業が賃金、諸手当、社会保障など労働者の生活に直接影響を及ぼす問題を討議、決定する時には、工会の意見を聴取するよう主張するべきである。
  3. 企業労働関係委員会あるいは労使協議会の設立 企業労働関係委員会あるいは労使協議会の設立は、労働組合及び労働者代表が労働者の賃金、諸手当、安全基準、社会保障、労使紛争などの事項について使用者側と定期あるいは不定期の協議を行い、労使間の意識の疎通し、矛盾を解決する上で有効的である。

3 活動方式

外資系企業の工会が、労働組合運動を展開する時は、企業の実情をよく把握し、柔軟性のある計画を作成し、小規模で散発的な運動を展開すべきである。

  1. 小型の多様で柔軟な活動方式を採用
    外資系企業の工会は、大規模で、企業に破滅的な影響を与えるような労働運動は控えたほうが良い。多くの活動は、班・組を主として展開すべきである。活動時間は、作業前後を主とすべきで、大勢の労働者を集めずに、散発的に展開すべきである。
  2. 対立より協調
    企業の業績を伸ばし、発展させるという点では、労使は一致している。外資系企業は、グローバリゼーションの中、多の多国籍企業と熾烈な競争をしている場合が多い。そのため、外国投資企業の生産経営活動のリズムが速く、フル稼動の状態にある場合が多い。企業の中で、組合と労働者の行為が、経営の発展に寄与するものであれば経営者側の支持を得やすい。一方、この反対ならば、対立する。 労働市場が供給過剰の現状では、組合活動が、企業利益に著しく反するものであると、外国人経営者、あるいは中央・地方政府の支持を得ることは難しい。あまりに強行に労働者の権益を擁護または要求することは、結果的には、労働者の経済的保証にさえ影響を与えかねないことに注意する必要がある。
    総合的に見て、工会は、労使関係の調整、または協調に寄与する役割を果たすことの方が、現状では重要である。
  3. 交流活動の多用
    外国人経営者・労働者と中国人労働者との文化・体育的交流活動は、非常に重要である。それにより、中国・外国の両労働者がお互いの理解を深め、心の通った交流をする必要がある。このため、企業の工会幹部は、あらゆる機会を通じて交流活動を提案するべきである。

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