(香港特別行政区)公務員志願者、大幅に減少

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年2月

香港における公務員志願者が、過去数年間で最も減少していることが最近明らかになった。2000年の志願者は1万5000人で、1995年以来最低の数字であり、1998年の2万9900人のほぼ半数に減少した。香港の中国への返還前の志願者数が1万8300人から2万1700人の範囲だったことから考えても、かなりの減少である。

このような大幅な減少の原因として、最近の公務員制度改革の不人気と景気回復による民間部門の採用枠の拡大があげられている。

公務員制度改革の中でも不人気なのは、初任給の削減である。2000年4月には、公務員の初任給は職種に応じて6%~31%の範囲で削減され、今後3~4年毎に基準となる改定 がなされると決定された(本誌2000年8月号参照)。改革の主な内容を幾つか挙げると、 管理職候補者の初任給が月収3万5285ドル(1ドル=14.96円)から2万8075ドルに削減され、新採用者には年金が支給されず、終身雇用となるためには今までより長期の勤務を要求される等である。

中華公務員連盟のピーター・ウォン副会長は、このような志願者の減少に現れた不人気は、制度改革の及ぼす損失を示す最初の兆候で、公務員という職種は魅力に欠けるものになり、政府のために働く名誉や威信も低下してしまったとしている。同氏はまた、最近活発な一般市民やメディアからの圧力も、公務員を志願する意欲に消極的に作用したとして いる。

また、香港人材管理研究所は、1997年の景気後退の時期には民間企業の採用枠が大幅に減少したが、最近の景気回復とともに、特に今年に入って企業の採用枠が拡大し、これによって民間の雇用市場が改善したことも、公務員志願者の減少に影響しているとしている。

このような公務員志願者数の大幅な減少の中で、政府公務員局は11月後半、2001年度も初任給を凍結することを決定した。これは、政府諮問機関である「公務員給与ならびに勤務条件に関する常任委員会」の民間企業調査報告に基づく決定である。

同委員会は、毎年民間企業の賃金水準を調査して公務員局に報告し、これをもとにして公務員給与が決定されるが、1999年9月2日から2000年9月1日までの民間企業133社の調査では、賃金は凍結若しくは賃上げ1%未満という調査結果が得られた。これが10 月に公務員局に報告され、これに基づいて今年も公務員の初任給の凍結が決定された。人材管理研究所のマク・ピン・オン所長は、民間部門でも初任給がほぼ凍結されている以上、公務員の初任給の凍結も当然だとしている。

香港では現在公務員制度の改革が進んでいるが、初任給の凍結も含めた改革の不人気と志願者数の減少がどのように関連するか、今後も注目される。

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