(香港特別行政区)主要企業2001年賃上げ予測、3%未満

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年2月

香港では引き続き景気の回復と労働市場の改善傾向が続く中で、来年度の主要企業の賃上げ傾向は控え目であることが幾つかの調査で明らかになった。

人口統計局が11月20日に発表した2000年8月・10月期の失業率は4.8%で、前期と同 じであり、失業者数は16万5000人で、前期比で2800人減少だった。不完全失業率は2.6%で、やはり前期と同じであり、不完全失業者数は8万7000人で、前期比で2600人減少した。また、2000年第3四半期の国内総生産(GDP)の成長率は10.4%(前年同期比)で、第1四半期の14.2%、第2四半期の10.9%を受け、引き続き2桁台の高い数字を記録した。これにより、政府は年間の経済成長を、8月の予測値8.5%から10%に上方修正した。

これに対して、11月2日に明らかになった香港人材管理研究所の調査結果では、2001年の主要企業の賃上げはかなり控え目である。同研究所は毎年主要企業を対象として調査を行うが、2000年は114企業(雇用者13万3000人)を対象とし、このうち64企業が2001年1月に賃金調整を行うと回答し、33企業が賃上げ、1企業が凍結、30企業が賃上げ、凍結のいずれか未決定と回答した。すでに決定が明らかになった34企業(従業員2万2251人)についての賃上げ動向は以下の通りである(グラフ参照)。

  1. 25企業(全体の73.5%)が賃上げ幅2%~4%と回答。
  2. 6企業(同17.6%)が賃上げ2%未満と回答。
  3. 2企業(同5.9%)が賃上げ4%を超えると回答。
  4. 1企業(同2.9%)が賃金凍結と回答。

同研究所の調査委員会委員長パトリック・モール氏は、この調査結果から、全体的には 2001年度の主要企業の賃上げは3%未満になると予測している。同氏はさらに、調査対象の諸企業は、賃上げを業績と結びつけ、それにより業績を評価された従業員のみが賃上げ を獲得することはほぼ確実だとし、この結果、業績を評価されない多くの従業員は来年度も賃金凍結に甘んじることになるだろうとしている。

さらに、調査結果からは、業績評価によるボーナスの導入が一般化してきており、また 契約ベースとパートタイムの従業員がますます増加していることが明らかになった。同研究所によると、これらの賃金・雇用形態を取り入れている企業は、1999年度は全体の30%だったが、2000年度は47%に増えている。

さらに、11月初めに明らかになった、工連会(FTU)が組合員1607人を対象として行っ た調査によると、組合員全体の73%が来年度も賃金凍結を受けることになった。FTU 加盟の主要労組、香港建設業従業員総連合のチョイ・チュ・ワ委員長は、建設業界ではまだ多くの失業者がいるので、賃金凍結は受け入れなければならないとしている。FTU の調査では、この時期の建設業界の失業率は16.9%だった。

このように香港では景気・労働市場の回復・改善とともに、一部業界の失業の高さが併行しており、政府統計の改善のわりには企業の賃上げも控え目である。一部専門筋は、アジア経済危機を契機とする約2年間の景気後退の後、景気回復にもまだ業種間の格差があ り、全体的経済状況に対する自信の回復がいまだ定着していないことも一因であろうとしている。

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