国有企業における年俸制とストック・オプション制度の導入

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年2月

最近、中国では、経営者の新たな報酬制度として、年俸制やストック・オプションが注目されている。現在、全国で経営者年俸制を実施している企業は全体の17.5%を占め、そのうち、国有企業が15.2%を占めている。年俸制は、1992年に上海英雄金筆工場などの国有企業3社に初めて導入され、当時、年俸は1~2万元(1元=約14円)と定められていた。その後、深圳市、遼寧省、江蘇省、四川省などの地域でも相ついで年俸制を導入したが、地域によってその内容は異なっている。深圳市の場合、経営者は、企業の規模などに応じて3段階に分けられ、それぞれ3万6000元、4万8000元、6万元の基本年俸が支給され、他に企業の経営実績にしたがって、業績年俸が支給されている。大連市の場合、経営者の年俸は、基本年俸とリスク年俸に分けられ、基本年俸は、市の平均賃金と当該企業の従業員平均賃金の平均値に、企業の利益や規模などの変数をかけて算出されているが、リスク年俸は、企業の資産目標や利益指標の実現状況をみて決定されている。経営者は、5000元から2万元前後をリスク保障のために拠出するとともに、年俸の30%がリスク基金に回されている。意思決定の失敗や経営の不手際などによる企業の損失は、このリスク基金から補填される。大連市では、経営者の年俸賃金は、労働者の平均収入の3~5倍に達しており、業績の優れた経営者は、約10万元の年収を手に入れている。四川省などの地域では、経営者に対しては、基本年俸+株式取得、つまり基本年俸以外に有償・無償の持株制度を導入している。例えば、大手テレビ・メーカーの長虹グループでは、総経理(社長)は、最初に会社の7900株を取得し、以後年々増加して、現在はすでに6万5227株を取得している。

年俸制には、現在、企業規模や経営状況にかかわらず、従業員平均賃金の3倍を超えてはならないという規制がある。インセンティブとしての機能を果たすためには、今後、これらの規制がいかに撤廃されるかが課題である。

年俸制と関連して、ストック・オプション制度も国有企業では除々に浸透している。ストック・オプションは、もともと、アメリカのベンチャー企業に生まれたもので、いわば 企業の株を社員に低い価格で分け与える制度であり、人材確保や企業成長に大きな役割を果たしているため注目を浴びている。中国では、上海と深圳の2都市が、最も早くストッ ク・オプションを経営者のインセンティブ・メカニズムとして導入した。上海儀電持株会社は、中国で初めて1997年からストック・オプションを導入し、経営者には通常の賃金以外に、特殊奨励として株式を支給している。上海市政府は、1999年から、ストック・オプ ション制度を市のすべての国有企業経営者に広げることを決定した。現在は、董事長(会長)と総経理(社長)には株式の取得を認めている。深圳市の場合、まず、中小国有株式企業にストック・オプションを試行した。株式取得の対象は上海市よりさらに経営陣全体に拡大している。経営者は、数回払いもしくは1回払いで自社株式が購入できる。ストッ ク・オプション制度は、経営者と企業所有者の立場の乖離を克服し、経営者の意欲を高め、人材の流出に歯止めをかける手段として期待されており、マスコミは、今後2~3年間で、さらに多くの地域に広く普及するものと予測している。

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