(香港特別行政区)貧富の格差、労組が政府に対策を要望
最近香港では、景気回復と雇用市場の改善と平行して、貧富の格差が広がっていることが論議されてきたが(本誌2000年10月号2参照)、研究機関等の調査に止まらず、有力労組が人口統計局の統計を踏まえて、政府に対策を要望するに至っている。
職工会連盟(CTU)のリー・チュク・ヤン氏は2000年9月25日、香港労働者の6人に1人が貧困ラインである月収2500ドル(1ドル=13.96円)以下で生活していることは驚くべきことで、もはや放置できないと述べた。同氏は、政府は貧困ラインを設定していないが、経済協力開発機構(OECD)の標準では、社会の平均賃金の半分以下の賃金で生活している者は貧困者と見なされるべきで、1999年の香港労働者の平均賃金は政府統計では月収5000ドルだったので、月収2500ドル以下の生活者は貧困者と見なすべきだと述べている。
リー氏の指摘によると、貧困者層は1990年の110万人から12%増加し、1999年には124万人に達している。また、最低所得層64万人の平均月収は、1990年の1680ドルから99年には1400ドルに減少した。また、同じ期間に、最高所得層に属する10%の人々の平均月収は、45%増加して2万6900ドルになった。
リー氏は、また、若年層の貧困についても懸念を表明し、現在香港では15歳以下の若年者33万人以上が貧困の下にあり、構造的な貧困を継承することで、自己開発の機会を失い、成長しても生活水準を高めて貧困から脱出できない可能性があるとしている。さらに同氏は、65歳以上の高齢者の4人に1人が貧困層に属していることも指摘し、懸念を表明している。
政府が9月18日に発表した雇用統計によると、6月・8月期の失業率は前期と同じ4.9%で、失業者数も17万2400人(前期比で400人減少)で、最近の安定傾向が続いているが、リー氏は、貧困層が直面している最大の問題は失業ではなく、低賃金であり、失業率の低下によって香港の貧困問題は何ら解決されていないとしている。同氏は、董建華長官の貧困問題に対する取り組み不足を厳しく批判し、平均賃金の3分の2以下の賃金水準の労働者で、6万ドル以下の貯蓄しかない者に、補償金制度を導入すべきだと提言している。同氏は、この制度は、失業手当よりも労働意欲を刺激し、社会的体面が害されないことからも、推奨されるべきだとしている。
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