2000年度上半期の雇用および社会保障の状況

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

国有企業一時帰休労働者の状況

労働保障部は、2000年度上半期の雇用と社会保障の統計結果を発表した。それによると、まず、国有企業労働者の下崗問題(一時帰休あるいはリストラ)は、全体的に1999年よりは増加の勢いが弱まっている。年初の統計では、国有企業の下崗労働者は652万人であるが、上半期の新規増加は196万人と、前年同期より13万人減少している。同時期に再就職したのは129万人で、前年同期より73万人少ない。6月末までの全国国有企業の下崗労働者は677万人で、前年同期より10万人以上減少しており、そのうちの95%が再就職サービスセンターに転入している。基本生活費の支給を受けている下崗労働者は92%と、前年同期より2%増加した。

しかし、労働保障部が国有企業3148社に対してサンプル調査を行った結果、下崗労働者は全体の11.2%となっていることが判明した。全国国有企業雇用労働者が6236万人であり、この比率で推測すると下崗労働者は約699万人で、上記の定期統計を22万人超過しており、国有企業下崗労働者の一部は、労働保障部が把握する範囲外にある可能性がある。このような労働行政の把握外にあるリストラ労働者の数も、前年同期より150万人近く減少している。

2000年上半期では、下崗労働者は、1人当たり月に205人民元の基本生活費の支給を受けており、1999年同期(1元=約13円)より21.0%増額された。ただ、再就職センターに転入した下崗労働者の中で、約17万人は生活費の支給をうけておらず、33万人が全額は支給されていない。さらに、20万人が保障対象とされていない。その理由はさまざまで、企業と下崗の契約を結ばず、制度上では保障対象とされない者もいるし、企業外で安定した収入を手に入れ、再就職センターの援助が必要でない者もいるが、一部の地域や企業では、下崗労働者の生活保障金が集められないことも大きな理由となっている。

上半期の統計によれば、下崗労働者の基本生活費支給総額は、調達された資金総額を上回っている。2000年6月までに下崗労働者の基本生活費のため、109億6000万元(1元=約13円)が調達され、前年同期より23.8%増加した。そのうち、企業から調達されたのは30億元で全体の27.4%、社会から調達されたのは24億4000万元で22.2%、財政から援助を受けたのは55億2000万元で50.4%をそれぞれ占めている。それに対して、上半期下崗労働者への支給に使われた資金総額は117億4000万元で、前年同期より39.4%増加している。そのうち、基本生活費のための支出は74億3000万元で、支出総額の63.3%を占めており、社会保険金の納付に39億6000万元が使われ、支出総額の33.7%を占めている。

失業と雇用の状況

2000年の上半期における失業と雇用の状況をみると、全国都市部雇用者数は、前年同期より増加しているが、失業者や下崗労働者の再就職は依然として厳しい。国家統計局の発表によると、2000年6月末までの全国都市部雇用労働者は2億72万人で、1999年同期より340万人余り増加したが、1999年末よりは940万人減少している。そのうち、国有企業の雇用労働者数は8463万人で、前年同期より450万人減少している。集団所有制企業の雇用労働者数は1465万人で、前年同期より248万人減少している。逆に、その他の非国有セクターの雇用労働者数は1790万人で、前年同期より138万人増加した。国有企業と集団所有制企業の雇用労働者数は引き続き減少しているが、減少幅はいずれも前年同期より狭まっている。

マクロ経済の好転にしたがって、労働力需要は、1990年代後半以来最も高い水準に達しているが、雇用の実状は決して楽観できない。2000年6月末における都市部登録失業者は565万人で、1999年末より10万人減少した。全国の登録失業率は約3%と、1999年末よりやや低下した。全国の都市部失業者および下崗労働者を合わせれば1528万人に達するが、10都市の上半期の下崗労働者に対するサンプル調査結果は、35%の下崗労働者はすでに安定した仕事についていることを示している。この35%を除いても、6月末までにまだ仕事についていない都市部下崗労働者と失業者を合わせれば1120万人となり、失業者と下崗労働者の再就職は、依然として厳しい状況にある。

全国の賃金状況

2000年上半期の賃金状況をみると、都市部労働者の賃金水準は安定的に増加しているものの、収入格差も拡大されつつある。国家統計局のサンプル調査によると、上半期都市部住民の実質収入は前年同期より7.7%増、消費支出は同8.3%増加している。その背後には、労働者平均賃金の大幅な増加がある。国家統計局の発表によると、上半期、都市部企業の雇用労働者の平均賃金は4177人民元で、前年同期より15.9%増加した。そのうち、国有企業では4296元で、前年同期より16.6%増加した。非国有セクターでは4904元で、同11.0%増加した。平均賃金の上昇は、昨年の公務員などに対する賃上げによる他の企業への波及効果によると見られている。

しかし、賃金は増加しているものの、賃金格差も拡大している。2000年上半期では、行政機関の賃金上昇率が21.4%であるのに対して、国有企業の賃金上昇率は13.3%である。行政機関の賃上げ率は企業より著しく高い。

また、地域間と業種間の賃金格差もさらに拡大している。上半期では、3分の1近くの地域で、正規労働者の平均賃金が、全国の平均水準を上回っている。そのうち、上海(8486元)、北京(7307元)、広東省(6259元)の賃金水準は最も高い。逆に、山西省と河南省の賃金水準は3000元を下回って、それぞれ2864元と2934元である。賃金水準の最も高い地域と最も低い地域の間では、3倍近くの格差がある。業種間でみると、金触・保険業(5881元)、科学研究や技術サービス業(5844元)、電力・水・ガスの生産・供給(5796元)などの業種では賃金水準が高いが、逆に製造業の平均賃金は3829元で、業種間格差も引き続き拡大傾向にある。

養老、失業、医療などの社会保険基金の収支状況

2000年6月末まで、全国で基本養老保険に参加した在職労働者数は9854万人で、定年退職者は3057万人である。養老保険基金でも、収支ともに増加しているが、収入が支出を下回る問題が深刻である。上半期養老保険基金の全収入は940億3700万元で、前年同期より19.2%増加した。しかし、実質的な支出は953億6600万元で、支出が収入より13億3000万元も上回っており、養老保険基金の残高は、前年末よりさらに減少している。上半期、全国の養老金支給額は901億6000万元であったが、実質的に支給されたのは885億7600万元であり、累計で15億8400万元が不足している。その後、補填が行われたが、依然として13億4700万元の支給が滞っており、全体的に上半期の養老金定額支給率は98.2%に止まっている。

2000年6月末まで、全国の失業保険の加入者数は9929万2000人であり、前年度末より77万2000人増加した。統計によると、2000年1~6月の全国における失業保険基金の収入は63億5000万元で、前年同期より32.9%増加した。上半期の失業保険基金の支出は47億3000万元で、前年同期より41.3%増加した。現在、収支はほぼバランスが取れており、全国の失業基金の残高は16億2000万元となっているが、北京市、内モンゴルと重慶市では、支出が収入を上回っている。2000年6月に、全国では127万9000人が失業保険金の支給を受けたが、失業保険金の支給対象者は依然として増加傾向にある。

医療保険の改革も進められている。2000年6月までに、346の市やそれと同級の地域では医療の社会保険化に向けて、医療保険基金の共同運営と管理を導入した。143の市や地域では、すでに医療保険の共同運営を始動しており、加入者数は1396万人に達している。

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