(香港特別行政区)貧富の差拡大

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

最近の統計上の景気の回復と雇用市場の好転にもかかわらず(1参照)、香港では10人に1人が月収4500ドル未満(1ドル=13.75円)のフルタイム労働者で、従来にも増して貧富の差が拡大していることが、2000年7月3日に発表された慈善団体「オックスファム香港」の委嘱による城市大学の労働実態調査の結果から明らかになった。6月にも類似の調査で、貧困層の増大、年長者の生活水準の低下、若年層の失業増大等と景気回復のアンバランスが指摘されたが、このところ貧富の格差と長時間労働が雇用市場の回復と並行して進んでいるので、今回の調査結果も注目されている。

今回の調査は、1996年から99年までの人口統計局の統計に依拠したが、失業者、パートタイマー、月収4500ドル未満のフルタイム労働者からなるいわゆる底辺労働者数は、96年の45万人から99年には64万人に増え、42%増加している。このうち32万人は、フルタイム労働で月収4500ドル未満であり、さらにこのうち7万人は月収3000ドル未満だった(香港の平均月収は1万ドル)。しかもこのうち18万人は週50時間以上の長時間労働に従事している。この調査には約20万人の外国人家政婦も含まれているが、通常の労働者と異なり、家政婦には移民局によって月収3670ドルの最低賃金が定められている。

城市大学のウォン・フン博士は、低賃金はアジア経済危機以来の、短期契約、パートタイム雇用、臨時雇用に由来するとし、失業者はやむなく雇用を求めるが、就業できる職種が低賃金、長時間労働になるという悪循環が域内に生じているとしている。同博士は、この無視されている底辺労働者のために、政府が最長労働時間制限と最低賃金制を導入すべきであるとしている。またチョン・チャン・ヤウ・オックスファム事務局長は、香港でこれほど貧富の差が拡大したことはなく、このような格差が存在する以上、景気が回復したと単純には言えないとしている。またリベラル派のフレッド・リイ民主党選出立法会議員は、ほとんどの東南アジア諸国が最長労働時間制限と最低賃金制による保護を定めているのに、香港でこれを定めない理由はないと述べている。

他方、政府関係筋は、政府は労働者の権利の改善に努め、再教育計画も推進しており、景気回復がさらに強まって雇用市場も好転すると、楽観的な見通しを示している。

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