私営企業の労働組合設立問題

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

私営企業数の急増に対して、現在、労働組合を設立した私営企業は全国でわずか11万7469社であり、組合設立率は7.8%に止まっている。労働組合員数も244万人しかなく、私営企業全雇用者の12.1%となっている。このように、私営企業における労働組合の設立は、明らかに遅滞している。それは、行政、私営企業主、労働者のいずれも、従来の国有企業型労働組合の発想に縛られ、市場経済における真の労使関係に対する認識を欠いているからである。まず、私営企業経営者の中には、組合が設立されると、労働者が対抗的になり、企業経営が難しくなる、あるいは、組合経費は企業のコストを上昇させる、さらに組合活動は、企業生産に支障を来すのではないかという考えにより、労働組合の設立に反感を持つ人が多い。従業員も決して労働組合の設立に熱心ではなく、特に農村地域や中小都市の小規模な私営企業では、農民出身の労働者が労働組合に対する認識が薄く、組合費も納めたがらない傾向がある。

行政部門が、国有企業の労働組合とまったく同じ発想で、私営企業の労働組合の設立に取り組んでいることも大きな問題となっている。例えば、多くの場合、私営企業の管理に携わる行政部門は、まず経営者と相談して、経営者の同意を得てから労働組合を設立させている。こういう場合、労働組合の責任者となるのは経営者の親族であるか、若しくは国有企業に倣って、経営陣のナンバーツウ、ナンバースリーに組合長を兼任させている。

従来、国有企業の場合、企業の行政主管部門と地域の労働組合組織は、いずれも各地域の行政に機能を集中させており、行政、企業経営側、労働組合は必ずしもお互いに独立していない。このような役割上の混乱が、私営企業の扱いにも現われている。各地域の工商管理部門は、私営企業に対する行政管理、私営企業経営者の協会組織、そして私営企業労働組合のまとめ役のいずれも担当しているのが現状である。

私営企業の労使関係の現状に対する憂慮を踏まえて、総工会の機関紙である『工人日報』は、私営企業の労働組合も、すべて総工会管轄下に入れるべきだと主張している。しかし、国有企業では、労働組合委員長が企業経営者の中でナンバーツウの地位に相当するように扱われているのが普通であり、私営企業も国有企業の型を取り入れがちである。このような状況に対して、私営企業の発展が盛んな浙江省の共産党書記長は、私営企業の経営者と労働者は、お互いに雇用関係にあるため、経営陣に属する者は、労働者の利益を代弁できないとして、私営企業の労働組合長について、私営企業経営者の親族、あるいは国有企業のように、経営管理者に属する者が労働組合責任者となることを禁止するコメントを発表し、私営企業の労使関係に対して、共産党として初めて、国有企業労働組合の前例を踏襲してはならないとの見解を示した。

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